卸売と観光の両立が魅力 大規模リニューアル控える「唐戸市場」|下関唐戸魚市場
下関唐戸魚市場(株)
代表取締役社長 阿部日佐夫 氏

次の四半世紀に向けて
市場機能の高度化を
──「唐戸市場」では現在、大規模なリニューアルが検討されています。
阿部 唐戸市場は地方卸売市場としてだけでなく、一般市民および観光客向けの小売市場・観光市場としての側面も有しており、プロの仲卸業者だけでなく、一般市民や観光客の方々でも直接買い物を楽しむことのできる、全国でも非常に珍しい卸売市場です。週末や祝日には“寿司バトル”などが人気の食のイベント「活きいき馬関街(ばかんがい)」を開催しており、今では年間約145万人もの観光客に訪れていただくほど、下関市を代表する観光スポットの1つとして数えられるまでになりました。
ただ、現在の唐戸市場の建物は2001年4月に新築移転したもので、今年でちょうど四半世紀―25年が経過しました。建物の躯体そのものは、高品質かつ高耐久なPCaPC(プレキャスト・プレストレストコンクリート)造であるため、まだ大丈夫ですが、電気系統や下水などの配管系統などの内部は、海に面している立地もあって塩害の影響が大きく、大規模な修繕が必要な時期にきています。
また、卸売市場がベースのため、当初想定していた営業時間は深夜から午前10時前後までで、夏場の昼間などの営業は考慮されておらず、熱気対策は喫緊の課題です。さらに、観光市場としての機能も不十分で、たとえば現在は市場でテイクアウトしたお寿司などを、外の海辺などで食べるスタイルが定着していますが、雨の日には食べる場所がありません。せっかく買っていただいたお客さまに、きちんとした食べる場所を提供できていないのは、我々も商売人として非常に心苦しい思いです。
そのため、現在検討している大規模リニューアルでは、市場内でもゆっくりと食を楽しめるスペースを設けたり、空調等の環境整備を強化したりしながら、観光客数を現在の年間145万人から年間200万人まで増やしていきます。なお、現状の建物躯体はそのまま活用しつつも、電気・給排水設備などの内部の大規模修繕を行い、市場機能の高度化を図っていく方針です。
──リニューアル工事の完了は、いつごろを予定されていますか。
阿部 今年度までに基本計画を固め、2031年度のリニューアル完成を目指したスケジュールでの検討を進めているところです。
先ほどもお話ししたように、市場建物の躯体自体の健全性は保たれていますし、現状でも観光客の入りは良く、営業自体は行えてはいます。場内の事業者の約半数からも、「今が良いから、別にリニューアルしなくてもいいんじゃないか」というような反対の声もあります。ですが、後々、今より老朽化が進んでお客さまが離れてしまってから、「どうしよう」と手を打とうとしても、それでは手遅れになってしまいます。今が良いからこそ、あえてこのタイミングでリニューアルに踏み切ることで、ここを目当てに訪れる観光客の方にも「リニューアルしてもっと良くなりそうだ」という期待感をもっていただけます。今の市場建物を50年使い続けるための、次の25年に向けた大規模リニューアルです。
周辺施設や対岸・門司との
連携強化で滞在時間延長へ
──商業施設「カモンワーフ」を運営するグループ会社・下関フィッシャーマンズワーフ(株)の代表も兼務されていますが、カモンワーフとの連携についてはいかがですか。
阿部 もともとカモンワーフは、唐戸市場の営業時間後でもこのエリアを楽しんでもらう受け皿としてつくった施設です。現在は主に飲食や軽食、土産物店などが入居し、唐戸市場や海響館に訪れた人がついでに立ち寄るスポットになっています。ただ残念ながら、カモンワーフ自体が強い目的地にはなり切れていません。
やはり下関ならではの食といったら、ふく(ふぐ)は欠かせません。旬である冬場には、本当に多くのお客さまがふくを食べに来られますし、このカモンワーフはロケーションも最高で、海を見ながら食べるということ自体が価値になります。今後は唐戸市場との連携を強化し、たとえば唐戸市場で購入した魚介類をカモンワーフの飲食店で調理してもらったり、バーベキューにしたりなど、そういった食体験の魅力を高めていくことで、ふくだけでなく季節ごとの魚や食べ方も含めて、「ここに来たら下関を味わえる」というような、このカモンワーフ自体が目的地となり得る施設にしていきたいです。
──そのほかの近隣施設との連携は。
阿部 下関市には歴史や文化、そしてすばらしい食があり、あるかぽーと・唐戸エリアでも、唐戸市場や水族館「海響館」、遊園地「はい!からっと横丁」など、観光コンテンツは豊富です。ただ、これまでは滞在時間が短く、“通過点”になってしまっていました。エリアとしても滞在時間の延長は喫緊の課題だったのですが、下関市が(株)星野リゾートとの連携協定を締結したうえで23年2月に「あるかぽーと・唐戸エリアマスタープラン」を策定し、昨年末には星野リゾートの新たなホテル「リゾナーレ下関」が開業しました。この新たなリゾナーレ下関や近隣の既存ホテル、そして唐戸市場とカモンワーフ、海響館などの集客施設が連携しながら、じっくりと滞在して下関市を堪能してもらえる仕組みづくりを進めていく計画です。
ただし、そのためには交通インフラの整備が急務です。とくに唐戸地区のボトルネックとなっている交通渋滞は深刻で、ゴールデンウィーク期間中などは下関ICから、かなりの時間を要することもあります。これではリピーターは生まれません。行政に対しての要望や提案も行いつつ、地域の交通混雑の解消とエリアの回遊性向上を図っていきたいと思います。
──関門海峡を挟んで対岸に位置する北九州・門司エリアとの連携については、いかがですか。
阿部 下関と北九州・門司とは、歴史的にも文化的にも非常に密接なつながりがあり、経済圏としても重なっています。海峡を隔ててはいるものの、私としては一体のエリアだという認識です。観光資源や食にしてもそれぞれの良さがあり、競合というよりも補完関係にあるものが多く、うまく連携することで良いシナジー効果を発揮し、関門エリア全体でさらに人を呼べるようになると思います。門司との連携は不可欠ですね。
気軽に利用してもらえる
「市民の台所」へ
──最後に、リニューアル後の唐戸市場を今後、どのような市場へとしていきたいですか。
阿部 近年は観光市場としても脚光を浴びていますが、ここはそもそも卸売市場ですし、一番は卸売を充実させていくことです。そして、もっと市民の皆さまに気軽に利用していただける市場にしていきたいと思います。
たとえばコロナ禍では観光客が来なくなり、飲食も厳しいなかで、唐戸市場で魚を買って支えてくれたのは市民の皆さまでした。そのとき、市民の皆さまに日ごろから利用していただける市場であることの大切さを痛感しました。観光は流動的ですが、地元の力は本当に大きいです。市民の皆さまに、「唐戸で魚を買って帰ろう」とか、「市外からの来客があるから、唐戸で美味しい魚を食べよう」などと、日常的に利用していただける「市民の台所」として、さらに魅力的な市場を目指していきたいと思います。
【坂田憲治】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:阿部日佐夫
所在地:山口県下関市彦島西山町4-11-39
設 立:1950年9月
資本金:1億円
URL:http://www.karato.jp/

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