ゴリラが暴れて野党が再編される

政治経済学者 植草一秀

 中道、立民、公明の三党合流が進展しない。衆議院の立民と公明は2月衆院総選挙の際に合流し「中道改革連合」を創設した。

 高市首相が突然の衆院解散を強行。小選挙区中心の選挙では対抗勢力が連帯しなければ議席を獲得できない。昨年10月の高市内閣発足時に連立の組み換えがあった。自民党の新党首に選出された高市早苗氏が「政治とカネ」問題にゼロ回答であることを受けて公明が連立離脱を表明。政権樹立が困難になった高市氏は維新に助けを求めた。

 自公に代わり自維による政権が樹立された。自維は「政治とカネ」問題を放り投げて「定数削減」に話をすり替えた。その自維と選挙を戦うことになった野党。窮余の一策として野党合流が実行された。しかし、重大な問題があった。第一は政策のすり合わせが不十分だったこと。これが最大の問題だ。急遽創作された「綱領」と「基本政策」は公明が提示したもの。「公明の政策」丸呑みで新党が発足した。

 第二の問題はあまりにも旧態依然の「党の顔」。新党創設の記念写真に納まったのは
野田佳彦
斉藤鉄夫
安住淳
西田実仁
馬淵澄夫
の5名。

 「5G」が前面に立って国民支持を得られるわけがない。政策について「暫定的な対応」が取られたことに理解の余地はある。時間が切迫しており、基本政策の集約ができないのは当然のことだからだ。結局、新党は衆院選で惨敗。公明は旧勢力よりも議席を増やしたが、立民は議席の9割を失った。壊滅的敗北になった。

 選挙後に真っ先に取り組むべき問題は「綱領」と「基本政策」の見直し。選挙前のとりまとめは「公明案の丸呑み」だった。選挙に立候補した候補者の多くは自分自身の政策公約は、綱領や基本政策と異なると明言していた。したがって、選挙後に「基本政策」と「綱領」を再検討するべきことは当然だった。ところが、新党首に就任した小川淳也氏は基本政策と綱領の見直しをまったく行わなかった。

 小川氏が代表に選出されたのは野田佳彦氏と公明の「談合」の結果と見られる。野田氏と公明が結託して野田氏と公明がコントロールできる新代表を選出したに過ぎない。公明は代表選結果を決定する票数を有していた。露骨に公明支配が見えないように票の配分を行って小川氏を代表に選出したと見られる。

 最重要のテーマが三つある。
1.護憲か壊憲か
安保法制を容認するか廃止を求めるか。
2.原発廃止か推進か
3.消費税増税容認か消費税減税・廃止か

 公明の基本スタンスは
1.壊憲
2.原発推進
3.消費税増税容認
である。

 自民と基本的に変わらない。問題は旧立民内部に、この基本方針に賛同しない勢力が存在すること。だから三党合流は不可能なのだ。

 この問題を顕在化させたのが「ゴリラ」。夏休みが明けて野党再編がいよいよ本格化する。自維政治に対峙する大きなかたまりを創出することが必要。最重要であるのは「政策基軸」。相反する基本政策が一つの政党内に同居することはあり得ない。これが民主党時代から延々と続く最大の矛盾。「壊憲・原発推進・消費税増税容認」の勢力と「護憲・原発廃止・消費税減税及び廃止」の勢力
が一つの政党のなかに同居してきた。邪道だ。

 前者は「対米隷属」であり後者は「対米自立」。「真逆」の立場。日本の支配者である米国は、日本から後者を消し去ろうとしている。「護憲・原発廃止・消費税減税及び廃止」の勢力は邪魔なのだ。

 三党合流の主目的はここにある。「護憲・原発廃止・消費税減税及び廃止」=「対米自立」の勢力を日本から消し去ることを彼らは目指す。米国の指令に基づいて野田佳彦氏が動いてきた。この流れに立ち向かって立ち上がったのが「ゴリラ」。川内博史氏、阿部知子氏、平岡秀夫氏が立ち上がった。この3名を含む16名が「ゴリラ」への参加意思を示している。

 つまり、中道・立民・公明グループは二つに分割されなければならないということ。「壊憲・原発推進・消費税増税容認」の勢力は自維とほとんど同じ。自維側に合流すればよい。国民民主と同じだから、ここに合流するのが一番わかりやすい。

 他方、「護憲・原発廃止・消費税減税及び廃止」=「対米自立」の政治勢力が存在する。共産・社民・いのちである。共産は他党との合流に現時点では賛同しないだろう。しかし、社民といのちとゴリラは基本政策を共有できる。一つの政党にまとまることは十分に検討に値する。

 「いのち=旧れいわ」は基本政策を共有する他の野党との連帯に消極的だった。あくまでも「我が道をゆく」スタイルだった。だが、山本太郎氏が代表職から外れたため、この頑なな路線を柔軟にできる。柔軟にするべきだ。

 「小異を残して大同につく」柔軟性がなければ、現行選挙制度の下での政権交代実現は難しい。共産党は政党として他党との合流には賛同しないと考えられるが、野党共闘には積極的である。「護憲・原発廃止・消費税減税及び廃止」=「対米自立」勢力の結集が何よりも求められている。その連帯構築を牽引することが「ゴリラ」の役割だ。

 「ゴリラ」は「護憲リベラル共生」。「ガーベラの風」の提案を文字通り体現する新しい政治改革の動きである。日本の植民地支配を永続させようと考える米国にとって、「護憲・原発廃止・消費税減税及び廃止」=「対米自立」勢力の結集は「悪夢」である。この勢力の殲滅(せんめつ)を目指してこれまで工作活動を続けてきた。その流れが破壊されかねないのだ。

 中道・立民・公明の三党合流は白紙に戻し、この勢力を二分割することが喫緊の課題だ。


<プロフィール>
植草一秀
(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。経済金融情勢分析情報誌刊行の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門第1位。2002年度第23回石橋湛山賞(『現代日本経済政策論』岩波書店)受賞。著書多数。
HP:https://uekusa-tri.co.jp
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