韓国経済ウォッチ~なぜフィンテックに注目が集まるのか(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
最近、私たちは「フィンテック」という用語を頻繁に目にするようになった。雑誌をはじめ新聞などで、フィンテックに関する記事がめっきり増えているからだ。
それでは、なぜフィンテックに注目が集まっているのか。今回はその背景と、現在進行していること、それからフィンテックの将来について取り上げてみよう。ご存知のように、フィンテックとは、金融(Finance)と技術(Technology)という2つの単語を組み合わせてつくられた造語である。今までの金融に、新しくIT技術を融合させ、金融の新しいサービスを開発することによって、金融産業の新しい付加価値を生み出そうとする試みである。
フィンテックに、これだけ注目が集まるようになった根底には、急激に進んでいるIT技術の発達があることを見逃してはならない。まずスマホの普及で、誰でもコンピュータを手に持って歩くようになっている。また、ビッグデータ分析技術の登場で、今までは活用できなかった情報が有効に活用できるようになっている。さらに、人工知能という技術の発達で、コンピュータがデータを元にいろいろな推論や判断ができるようになった。このようなことが、技術的な背景としてある。実は、フィンテックがスタートしたのはアメリカである。フィンテックが生まれるようになったきっかけは、2008年に起こったリーマン・ショックだと言われている。米国では2000年の初めには、ITバブルの崩壊があり、08年にはサブプライムローン問題が発生した。これらによって、米国の金融産業が大打撃を受けたのはもちろんのこと、投資家にも被害をおよぼし、かなり信頼を失うことになった。その結果、アメリカ経済の4割を占めている金融産業に、規制の導入と人材流出が起こった。
このときに職を失った金融部門の人材は、IT部門に移り、ITの技術を駆使して、もっと付加価値のある新しい金融サービスを開発できないかと夢見るようになる。このようなかたちで、フィンテックはアメリカで先行し、すでに5、6年の歳月が流れている。
それに、ITをリードする最新技術を生み出しているのもアメリカなので、そこでこのような試みがあるのは当然かもしれない。
なお、アメリカだけでなく、イギリスでもフィンテックにかなり力を入れているし、日本でも最近金融機関とIT企業を中心にフィンテックに関心を寄せている。韓国はITが発達しているため、これを武器にすれば大きなチャンスがある。韓国政府もそう思って、やっと重い腰を上げてきた。韓国では今まで、「輸出立国」という目標を掲げて輸出中心の成長を追い求め、製造業の育成に力を入れてきた。だが、世界の工場としての中国の追い上げに、戦略の転換が求められている。それに一般的に先進国になればなるほど、どうしても金融産業の比重は高くなる。その理由は、金融資産の増加スピードは、生産の増加スピードより速くなるからだ。これは世界的な趨勢であるので、これにうまく乗れないと、韓国の未来もない。
(つづく)
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