「脊振の自然に魅せられて」沢登りの魅力
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脊振山系の福岡県側は急峻な斜面になっており、大小の沢が沢山あります。この沢は魅力的な沢登り(シャワークライミング)のポイントとなります。
沢登りのことを大人の水遊びという人もいますが、実はそうなのです。
福岡市早良区には車谷、小爪谷、坊主が滝上部(金山沢)、野河内渓谷など、魅力的な沢があります。
百道にある自宅から、入渓ポイントまで30分。手軽な弁当持参で、ワンゲル仲間や脊振の自然を愛する会のメンバーたちと沢に入ります。
沢登り(遡行)には、ある程度の装備と技術が必要です。熟練者と同行するのがベストです。登山靴ではなく「渓流シューズ(ウェーディングシューズ)」を履きますが、これにはフェルト製やゴム底のものがあります。一昔前は草鞋(わらじ)でした。草鞋は渓谷の濡れた岩場にしっかり食い込み、滑らないので重宝していました。しかし耐久性はないので、一度履いたら使い捨てとなるのが難点です。槍ヶ岳を開いたことで知られる播隆上人が初めて槍ヶ岳を望見したのは、文政6年(1823)6月のことです。播隆上人や山伏たちも、草鞋で厳しい岩場や山道を歩いていたのです。
明治になるとヨーロッパから登山靴が日本に入ってきたため、草履の時代は終わりました。ザックの中は、水に濡れないようにビニール袋で補強しています。他の装備として、ヘルメット、膝用のパッド、沢用ソックス、速乾性のウェアーが必要です。あわせて防水カメラもあれば記録も残せます、通常のデジカメをビニールで包んで持参したこともありますが、水滴がカメラに染み込んで修理する羽目に。
真夏が最高ですが、5月から10月まで、水は冷たいですが沢登りができます。
なぜ沢に入るかというと、沢の源流まで登り詰め、藪漕ぎをして登山道に出る。地図読みと五感を働かせて、どの石や岩に足を置き、手を掛けるかの判断を連続して行う沢登りは、アドレナリンが身体中に溢れ出る気分になります。そして滝から浴びるマイナスイオンが活力となります。
これが、一度沢を味わうと病みつきになる理由です。
私は20年ほど前から、脊振の沢に単独で入っていましたが、加齢と共に単独行はやめ、数年前から仲間と行くようにしています。6年前の夏場になりますが、ワンゲル仲間の先輩、後輩と3人で坊主が滝上部(金山沢)に入りました。梅雨明けで水量も多く、水の透明度は最高で神秘的、かつ魅力的な沢登りを味わったものです。時には泳ぐ場所もありましたが、ひざ下や腰まで水に浸かりながらルートを極めました。
坊主が滝上部には10mの滑り台滝、その上部に30mの二段滝があり、さらに上部は姉妹滝となって左右に別れています。雄大な渓谷ですが、比較的安全に沢登りを楽しめる場所です。ザイルを使ってやって来るパーティもいますが、私たちは、危険な滝は巻いて山際を歩くようにしています。休憩ポイントでホットコーヒーや紅茶で一息いれる時が、至福の時です。大自然の中で時間がゆっくり流れて行きました。仲間っていいな、60歳を超えて元気でいられるのは最高だと思える瞬間です。この時だけですが、ヒキガエルが水底のあちこちにいました。恋の季節なのか、理由はわかりませんが、ヒキガエルを水底に沢山見かけたのは、この時だけでした。捕まえても逃げようとしません。水に戻すと実に軽やかにスイスイと泳いで行きました、まるでオリンピックの水泳選手の平泳ぎのようでした。
雨上がりの晴天には、縦走路から有明海、雲仙、多良岳、筑後川などがくっきりと眺望できます。入道雲と真っ青な夏空、それらの背景が見事なコントラストを作り上げ、絶好のシャッターチャンスに遭遇する事もあります。
こんな身近の山で、最高の時間を味わえるのも脊振山系の魅力でもあります。時々は若い後輩や仲間を誘って、入渓することもあります。若人と集うのもアンチエイジングの一つなのです。
脊振の自然を手軽に楽しめる、最高の場所です。
2017年9月4日記
脊振の自然を愛する会代表 池田友行関連キーワード
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