栗木工務店さん、道義的責任を感じませんか?
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協同組合建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏
福岡県久留米市の新生マンション花畑西(鉄骨鉄筋コンクリート造15階建て、平成 8年1月竣工)という分譲マンションの欠陥を巡る裁判は大詰めを迎えている。
私は、このマンションの問題に関して、5年近く、区分所有者に対する技術支援を続 けてきた。裁判を通じて、設計における構造計算の偽装と、施工における手抜き工事な どの瑕疵が明らかになった。今後の裁判の行方が、区分所有者や近隣住民の安全を確保できる結果となることを願うばかりである。写真は、栗木工務店の施工の瑕疵の一例。このマンションの実際の施工を担当したのは、鹿島建設の下請け業者であった地場建設会社の栗木工務店(福岡県久留米市国分町 1636-2、永松雅代代表取締役)である。マンションの工事契約は建築主と鹿島建設との間で締結されているので、施工に関して法的な責任を負うのは元請け業者である鹿島建設であることは間違いない。
裁判の被告は、設計の瑕疵の責任を問われる設計事務所2社(木村建築研究所、U&A設計 事務所)と、施工の瑕疵を問われる鹿島建設の三者であり、下請け工事業者の栗木工務店は被告に含まれていない。
一義的な工事契約者が鹿島建設なので、今回の裁判の被告に栗木工務店が含まれてい ないのであるが、マンションの区分所有者に苦痛を与えた事実に対する道義的責任を、栗木工務店は感じていないのであろうか。
栗木工務店は、昭和35年創業の久留米市内 でも屈指の老舗ゼネコンである。公共工事も含め、これまで施工に関わった物件の数は 相当な数に上る。現在裁判となっている新生マンション花畑西のずさんな施工に見られ るような、非常にレベルの低い施工技術しか持ち合わせていないのであれば、このマン ション以外の工事においても、ずさんな工事が行われてきたことは容易に想像できる。 会社としての歴史が長いだけに、施工の欠陥を抱えた建物が相当な数存在しているとい え、大地震が発生した場合、これらの建物内部の人や近隣の住民の安全を確保できるのか、甚だ疑問である。
本件マンションの施工においては、鹿島建設から一括して栗木工務店に下請け発注さ れており、当然、鹿島建設の社員が現場監督を務めていたはずであるが、管理が不十分 であったか、あるいは、鹿島建設の社員が現場に常駐できなかったなどの事情があったと 思われる。
鹿島建設による下請け業者の管理が不十分であったことは間違いないが、栗木工務店 の施工技術が、ここまで低レベルであるとは、鹿島建設も想像もできなかったであろう。 この点においては、鹿島建設も気の毒な面もある。久留米市の老舗ゼネコンが素人以下 のずさんな工事を行うなどとは想像できるはずもなく、鹿島建設に一義的な責任がある ものの、下請けとして起用した栗木工務店が、異常なほど低い施工能力しか有していな かったことは、鹿島建設にとって不運だったといえなくもない。
栗木工務店は、現在も平然と建築工事の受注を続け、公共工事も手掛けている。 20 年前に行ったずさんな工事に関して、栗木工務店は、区分所有者に対して償いをする 気持ちは持ち合わせていないのであろうか。
区分所有者たちが味わった苦痛に対する怒りは、栗木工務店に向かっている。また、多くの久留米市民が、栗木工務店の施工能力について疑問を抱いており、現に、私にも、栗木工務店の施工能力に関する問い合わせが数多く寄せられている。このような問い合わせを受ける度に、「なぜ、栗木工務店は、 マンション住民に謝罪せず、知らぬ顔を決め込んでいるのだろう。良心を持ち合わせて いないのか?」と疑問を抱いてきた。
栗木工務店が、今後も、久留米の地で営業を続けるのであれば、本件マンションの区分所有者に対し、何らかのけじめを付けたうえで、適切な施工を行える体制を確立し、今後の建築工事に真摯に取り組むことを宣言すべきであるが、現在のところ、そのような 動きは一切ない。栗木工務店に関する問い合わせは日増しに増えていることから、市民の関心の高まりを実感している。
栗木工務店さん、もう逃げることはできませんよ!
このマンションにおいては、施工の瑕疵とともに、設計の瑕疵についても、損害賠償 の対象となっている。設計を担当した2社のうち、U&A設計は、裁判を欠席しており、 当然、反論もない。木村建築研究所は、法テラスを利用し、弁護士から書面が提出され ているものの、その主張は、「図面や販売用パンフレットの会社の名前があるが、設計を していない」、「建築確認申請書や工事契約書に、会社名、建築士名(木村社長)や社印が押印されているが、社員が勝手に押印したので社長である私は知らない」などと、あきれるものである。図面・販売用パンフレット・建築確認申請書・工事契約書などに設計者として名前が記入され押印までされていれば、第三者は客観的に、記名された者が設計者と判断する。ましてや、建築確認申請書や図面への記名押印の責任は非常に重いのである。木村建築研究所は、上記のような非常識な主張をしているものの、技術的な点は一切反論していないので、消極的ながら設計の瑕疵を認めたことになり、裁判所も、そう判断するであろう。木村建築研究所に十分な賠償能力があるとは思えないが、 木村社長夫妻は自社ビルと土地を所有している。本件マンション区分所有者に対する謝罪の気持ちが少しでもあるなら、木村社長夫妻が所有している不動産を差し出すべきである。
いずれにせよ、栗木工務店も、木村建築研究所も、責任を認め、償いをしなければ、 世間の厳しい目から逃げることは不可能なのである。
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