築地市場移転、小池都知事の「アウフヘーベン」の害悪(2)
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アンケートでは9割近くが否定的
築地で働く女性たちが結成した「築地女将さん会」は、築地市場の水産・仲卸業者 全535店舗を対象にアンケートを実施。4月11日、都庁で記者会見を開いて結果を発表した。同会のホームページで公表されているアンケート結果によると、有効回答数は261。「豊洲新市場には数多くの問題点が指摘されてきましたが、これらについて解決したと思いますか?」という質問に対する回答は、「ほとんど解決していない」が112(42.9%)、「まったく解決していない」が120(46.0%)、「おおよそ解決した」が13(5.0%)、「解決した」が2(0.8%)。実に88.9%が否定的な見方を示した。
また、「築地移転をどうするべき」との質問には、「今からでも中止にするべき」が82(31.4%)、「もう一度凍結して話し合うべき」が101(38.7%)、「移転はするべきだが仕切り直すべき」が38(14.6%)、「このまま進めて良い」は12(4.6%)と、計84.7%が10月11日の移転に否定的。
「築地と豊洲、どちらで商売をしたいですか?」という質問には、「当然、築地」が158(60.5%)、「できれば築地」が84(32.2%)であるのに対し、「当然、豊洲」が5(1.9%)、「できれば豊洲」が6(2.3%)と、市場の場所として築地が圧倒的に支持されている結果となった。以上の結果から、多くの市場関係者が、東京都が推し進める市場移転に疑問を抱いているということがいえるだろう。
ハシゴを外された万葉俱楽部
二転三転する小池都知事の言動も不信感を強めている。「築地は守る、豊洲を生かす!」という小池都知事は、移転した後の築地市場跡地に「食のテーマパーク」をつくると打ち上げた。これに驚いたのは、豊洲市場横に集客拠点となる「千客万来施設」の実施事業者に手をあげていた(株)万葉俱楽部だ。寿司チェーン店「すしざんまい」を全国展開する(株)喜代村と大和ハウス工業(株)のグループが14年当初に決定していたが、条件面で東京都と折り合いがつかず、15年4月に両社が辞退。困っていたところを万葉俱楽部が引き受けたという経緯があった。
万葉俱楽部は、全国に本格的な温泉施設「万葉の湯」を展開。現代表取締役会長の高橋弘氏は、事業承継時の本業であったDPE(写真現像)から見事に事業転換をはたした敏腕経営者だ。社会貢献の志も高く、名古屋市長・河村たかし氏の後援者でもある。交通アクセスが悪い埋め立て地に新たな観光拠点をつくるという難事業。その引き受け先探しで困り果てた東京都。見るに見かねて手をあげた高橋会長。その心中には社会起業家としての矜持があったのではないだろうか。
計画は、年間来場者数を約200万人と想定し、江戸のまちなみを再現した地下2F・地上3階建ての商業施設と地下2F・地上11F(高さ44.8m)のホテルを建設。施設内には、公衆浴場、物販店舗、飲食店、駐車場、託児所、集会場などが設置されるという内容だった。
しかし、小池都知事がハシゴを外した。集客機能を築地に残すとなれば、「千客万来施設」の存在意義はなくなり、造ったとしてもかなりの苦戦が予想される。まず、雑然とした昔ながらの風情が残る築地市場に比べて、新たな豊洲市場は無機質で風情の欠片もない。加えて、一連の移転騒動で、温浴施設には致命的ともいえる「土壌汚染地帯」のレッテルが貼られ、広く周知されてしまった。最寄り駅「市場前駅」からゆりかもめ線で約10分の「テレコムセンター駅」から徒歩約2分で、温泉テーマパーク「東京お台場 大江戸温泉物語」もある。
同事業に10億円を投じたとされる万葉俱楽部。撤退した場合、その費用は補てんされないという。土地の賃料が半分ぐらいにならないと施設運営は厳しいと見ており、高橋会長は、東京都が提示した土地の賃料を1~2割安くするとした条件を拒絶した。東京都との協議は平行線をたどっている。
(つづく)
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