2024年12月23日( 月 )

激変するエネルギー業界で非エネルギー事業シフトを加速(後)

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西部ガス(株)

エネルギー分野の利幅は薄く

 非エネルギーシフトを進める同社の売上構成を見てみよう。内部取引を含むセグメント別の売上高は18年3月期で、ガスが1,236億円(58.7%)、LPG・その他エネルギーが285億円(13.6%)、不動産が299億円(14.2%)、その他が285億円(13.5%)である。16年3月期では非エネルギー部門の売上構成が約20%だったが、18年3月期では28%程度にまで増加していることがわかる。次いでセグメント別の利益を見てみる。18年3月期でガスが64億円、LPG・その他エネルギーが8.5億円、不動産が35億円、その他が6.4億円だ。ガスとLPG・その他エネルギーを合算したエネルギー分野の利益は72.5億円、不動産とその他を合算した利益は41.4億円となる。これを率に換算するとエネルギー分野が約64%、非エネルギー分野が約36%となる。つまり売上高では非エネルギー部門は28%程度だが、利益面ではすでに36%におよんでいるのだ。

 エネルギー分野の競合は今後、激化する一方であり、シェアを維持するための消耗戦が待ち構えている。利幅はさらに薄くなっていくことは明らかであり、非エネルギー分野へのシフトは当然の策だ。既存のエネルギー分野で50%、非エネルギー分野で50%の売上構成を成し遂げることができれば、必然的に利益率は向上することになる。中期的な同社の理想形が、そうした事業構成の企業グループだということだろう。

大企業体質との決別が必要

 西部ガスは、福岡七社会に名を連ねる地場を代表する企業である。電力供給の九電とならび、ガス供給という重要なインフラを担ってきた企業だ。既得権に守られ電力とガスが棲み分けを続けていた時代であれば、その地位も安泰だっただろう。ところが電力小売自由化、ガス小売自由化というエネルギー産業の変化を受けて、保たれてきたヒエラルキーが崩壊し始めている。売上高で10倍の規模を誇る九電とライバル関係になることは、西部ガスの存立基盤を揺るがしかねないものだ。

 今後、エネルギー業界は本格的な競争時代を迎える。当然ながら、合従連衡など業界再編は進んでいくだろう。社会インフラを担うビジネスであり、独自性が打ち出しにくい業種でもあるため、大が小を飲み込む構図に抗うことは容易ではない。地場を代表する企業であっても、業界内での立ち位置を考えれば弱者の戦略を採らざるをえないのだ。既存事業であるエネルギー分野から、新規事業である非エネルギー分野へのシフトは弱者の戦略にほかならない。ここに同社が抱える大きな問題がある。

 成り立ちを考えれば西部ガスは福岡を代表する大企業だ。だが業界内では弱者となれば、一刻も早く大企業的な社風から脱却しなければならない。取材過程で、同社のいかにも大企業的な体質も聞かれており、まだそうした意識の変化はあまり感じられない。一朝一夕に変革できるものではないが、時間的な余裕も今後は失われていくだろう。地場の有力企業として輝き続けるために、スピード感のある変革が同社には求められているのではないか。

(了)
【緒方 克美】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:酒見 俊夫
所在地:福岡市博多区千代1-17-1
設 立:1930年12月
資本金:206億2,979万円
売上高:(18/3連結)1,966億2,100万円

(中)

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