【パチンカー代の『釘読み』】私たちはなぜパチンコを辞められないのか(前)
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パチンコ・スロットが辞められない。900万人を超える遊技ファン全員が「依存症」とも思えない。根本的な理由はどこにあるのか。自他ともに認めるヘビーユーザーの2人が話し合った。
A:遊技ファン歴10年 B:遊技ファン歴20年
その1:過去の成功体験から抜け出せない
Aがパチンコホールに足を運ぶようになったきっかけは、仕事を通じてだった。
「取引先の担当者に誘われて付いて行き、何も分からぬまま1万円が消えました。何が楽しいのかさっぱり分からなかったのですが、顧客なので無下に扱うこともできず、次の誘いにも付いて行き…」
この2回目の来店でAは人気スロット台「GOD~神々の系譜」に着席。1万円分遊技し、最終的に3万円分の景品交換を行った。要は2万円勝ったのだ。
「この時初めて面白いと感じました。2時間程度で2万円増えたのですから、気持ちも高まります。また、景品交換の場所がパチンコホールから少し離れたラーメン屋の店内だったのも面白かったですね」(A)。
勝ったという事実と、初めての景品交換場所の特殊さも相まって、Aのなかで遊技は「面白い」ものとして定着していく。
Bは友人の誘いでパチンコ・スロットを打ち始めた。Bが遊技を始めたころはいわゆるスロット「4号機」全盛時代。パチンコホール内が熱気で満ちていた頃である。
「私が打ち始めた時流行していたのはスロット『大花火』でした。たとえば、1万円持って行き、2万円分の景品をもって帰るという風に、軍資金が2倍になるのは当然といった感覚で打ってましたね。友人はスロットで、金額にして月200万円分稼いでいましたよ。打ち方も1人で打つのではなく、打ち子(=雇われてパチンコ・スロットを打つ人)を引き連れて出そうな(=勝てそうな)台を占拠し、儲けを分配するといったやり方をしていました」(B)。
友人の影響もあり、Bのなかで遊技は「稼げる遊び」というイメージが固まっていく。
A、Bともにその後「オスイチ(=着席して一回転目で当たること)」や「一撃万枚(=スロットで大当たりが途切れることなく続き、獲得メダル枚数が一万枚を超えること)」、大負けからの「まくり勝ち(=負け分を取り戻したうえでさらに勝つこと)」といった経験を通じ、ますます遊技にのめり込んでいく。Aは最高、半日で約28万円分、Bは1日で約40万円分の景品交換を行ったことがあるという。
「打ち続けるうちに、最低でも2万円持っていないと勝負にならないなと感じるようになります。なので最低でも2万円は負ける可能性があるわけです。ですが、以前のスロットには天井といって、何回まで回せば必ず当たるといった救済措置が講じてあったんですよ。しかも、その救済措置というのが、大勝ちにつながるような太っ腹な内容のものが多かったので、2万円では収まらず、ついつい追加投資して天井まで回してしまうということは多々ありました。今は規制強化でこの天井の内容も大したことなくなったので、早々と見切りをつけることのほうが多いですが」(A)。
「私が20代だったころは、5万円突っ込んでも1時間あれば10万円取り返せるような仕様のスロットが主流でしたので、負け額よりは勝ち額の方に意識がもっていかれて、追加投資に関してはあまり気にしていなかったというのが実際ですね。勝った時のことばかり気にしているのは、今でも変わらないのかもしれないですが(笑)」(B)。
勝ちの経験=成功体験が尾を引き、遊技を辞められずにいるAとB。しかし、規制強化(2018年2月施行の改正風営法)により、2人ともパチンコホールに通う回数は着実に減っているという。
「頭ではわかってるんですけどね、もう昔のように勝つことはできないんだと。実際、規制強化前は毎週ホールに遊びに行ってましたが、規制強化後は月に2回行くか行かないかです」(A)
「昔は朝から並ぶこともありましたが、今じゃ朝からホールに人の列が出来ている光景を奇異の目で見てしまってる自分がいますね。もう以前ほどの熱はないですよ」(B)
両者ともにホールに通う回数は減っているが、止めるまでには至っていない。過去の成功体験からの脱却は、規制強化の“おかげ”で成功しそうだが、完全に遊技を辞められない理由はどこにあるのか。
次稿、私たちはなぜパチンコを辞められないのか(後)、「来世邂逅」。
(つづく)
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