2024年12月22日( 日 )

進興設備工業研究(3)~水面下には様々な隠し物がある(後)

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20年前からチャンスを待っていた

 2015年2月期は本当に頭を捻りまくった。完工高は前年対比では伸長していないのだが、粗利額は4,000万円も増えた。さらに経常利益では5,400万円も増益になっている。どうするか!!対策の知恵廻りはどうするか!!ここで対策を練ったのは有価証券売却損6,556万円の計上であった。それでようやく4,732万円の税引前利益のまで抑え込んだ。但しここで驚くことは有価証券金額が前年度4億37万円から3億9,080万円の1,000万円にしか減っていないことである。この1期内で買い足した証である。
 違和感を覚えたということを書き足したい。昭和50年代から60年代に同社は財テクで利益を挙げていた。利益総額(粗利)の1/3を稼いでいた。というか行き当たりばったりでなく確固たる収益戦略を展開していたのである。平成初頭のバブルが弾けて財テク収益戦略を中止した。長期保有に切り替えたのだ。大野社長に言わせると【20年来、いつかは償却しなければとチャンスをうかがっていた】そうだ。そこでここで思い切った有価証券売却損を強行した。

20150526_008 読者の方々にもよくよく考えていただきたい。確かに現在の局面においては有価証券の含み損は無い。だが20年以上抱えているそれにはかなりのプラスになるものもある。調査マンの勘でいえば【15年2月期の有価証券仕入れ値3億9,080万円の計上評価に対して現相場値でいえば5億円は下らない】ということだ。進興設備工業の蓄財ノウハウは不動産には頼らず株に頼ってきた。現在は長期保有に徹している。
 この会社の凄さは15年2月期計上されている有価証券3億9,080万円が相場暴落でゼロになっても経営には何ら支障が無いと断定できることだ(株がゼロになる事態は想定しにくい。銀行預金が封鎖されるという可能性と同じである)。仮に想定できない有価証券3億9,080万円がゼロになっても当社の場合は純資産が7億2,000万円に減るだけである。それでも自己資本率は他社を遥かに凌いでいる。

 大野社長の頭痛の種をこの調査マンである筆者が代弁すると【もう隠すものがありません。償却するのがなく節税対策をどうしましょう】である。設備業者というものはゼネコンに掌握されている存在と既成概念でみられているが、同社の場合はまさしく【経営は芸術なり】と評価されても過言でない。バランシートの影、水面下で税法上許される極限の範囲で含み資産を伏せるとはこれは芸術なりだ。

 どんな名経営企業と言われているところでも隠し負の資産は平然と計上している。福岡でトップにランクされる建設会社でも負の資産(不動産評価目減り)を隠し続けていた。完全償却できたのはこの2期前の決算だったという。これから激変経済が訪れる。進興設備工業の例は含みプラスの隠しを発見する楽しみ・妬みとなる。だが大半は負の資産隠しの摘発である。バランシートの水面下ではダイナミックな隠し操作がることをお忘れなく、見落とさずにね――。

 
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