2024年12月22日( 日 )

東京オリンピックに間に合うか?激化する新型コロナ・ワクチンの開発競争(中)

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2020年10月2日付の記事を紹介する。


 いずれにせよ、来年の東京オリンピックにはコロナ・ワクチンが欠かせない。そんな中、ロシアのプーチン大統領が世界に先駆けて新型コロナウィルス用のワクチン「スプートニクV」を完成させたと発表。8月11日のことである。実は、ロシアの感染者はアメリカ、インド、ブラジルについで世界で4番目に多く、100万人をはるかに超えている。プーチン大統領とすれば、国内的な不安感を払しょくしなければ、政権の維持にも暗雲が立ち込めるとの危機感にさいなまされていたに違いない。

 そうでなくとも、地方経済の落ち込みが深刻で、ロシアではこのところ反プーチン運動が加速する傾向を見せている。その反プーチン政治活動の中心人物ナワリヌイ氏がロシアの地方空港の待合で口にしたお茶に毒を盛られ、ドイツの病院で治療を受けているが、過去にも似たような毒殺や未遂事件が頻発してきたロシアである。オリンピックに関しても、ドーピング疑惑で出場停止となった選手は多い。そのため、国家としての参加を認められない状況に陥っているのが今のロシアである。実に不名誉なことと言わざるを得ない。

 国民の間に広がる反プーチンの動きをけん制するためにも、プーチン大統領とすれば「世界初のワクチンを希望者全員に提供する」との前向きなメッセージが必要だったのではないか。「毒殺」や「違法行為」という悪のイメージを打ち消すためにも、「世界初のワクチンの完成」というプラスのイメージを強化したいと考えたのであろう。

 とはいえ、各国のワクチン開発メーカーに資金を提供しているビル・ゲイツ氏でさえ「完成は早くて年末か年明け」と予測している状況であり、市場に出回るのは2022年との見方も出ている。そのため、プーチン大統領の発表には世界中が驚くとともに、「本当に大丈夫なのか」と半信半疑の声が出たのも当然であろう。

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 しかし、強面のプーチン大統領は「ロシアにはウイルス研究20年の歴史がある。治験者の数は少なくても大丈夫」と余裕しゃくしゃくである。国営の「ロシア直接投資ファンド」が5,400万ドルの開発費を投入し、その有効性は間違いないと盛んに宣伝している。ロシア保健省では「全世界に提供する用意がある」とまで大風呂敷を広げる有り様だ。実際、この記者会見の影響は大きく、世界20カ国以上からすでに10億回分を超える注文が殺到しているという。

(略)

 実は、アメリカ政府が後押しし、オックスフォード大学やビル・ゲイツ財団が資金を提供するモデルナ社のワクチンの場合は3万人が参加する臨床試験が最終段階に入っている。また、トランプ大統領が熱心に資金援助を続けているノババックスやファイザーも3万人から4万人の治験者を対象にした第3段階の実験が佳境を迎えているといわれる。

 これらは「オペレーション・ワープ・スピード」と呼ばれ、トランプ大統領とすれば、11月3日の大統領選挙の投票日の直前には成果を公表したい「最重要プロジェクト」に他ならない。アメリカでは連日4万人の感染と1,000人の死者が報告されているからだ。トランプ大統領は「感染のピークは過ぎた。心配要らない。感染の不安を煽っているのは民主党だ」と責任転嫁にせわしないが、被害が拡大していることは間違いない。

※続きは10月2日のメルマガ版「東京オリンピックに間に合うか?激化する新型コロナ・ワクチンの開発競争(中編)」で。


著者:浜田和幸
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