2024年11月24日( 日 )

日本暗黒化加速させる菅秘密警察政治

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を紹介する。今回は、「五輪を止めず、Go Toトラブル事業で感染拡大を推進するのは愚の骨頂。菅・小池の自分ファースト政治に終止符を打たねばならない」と訴えた12月3日付の記事を紹介する。


菅義偉氏と小池百合子氏の合言葉
「五輪を止めるな」
「Go Toを止めるな」。

2人とも思考方式が同一だ。
思考の基準は「自分の利益」。
「自分の利益」になるなら、他人にどのような迷惑がかかろうが、他人がどれほど不幸になろうが、そんなの関係ない。
ただ1つ、自分の利益だけがすべて。

コロナ感染が拡大している。
コロナを最上級の危険な感染症を位置づけるなら、感染の収束が優先されるべきだ。
コロナが収束すれば経済は自律的に回復する。

しかし、菅義偉氏はGo Toトラブル事業を全開にしている。
東京都の感染者数が急増し、医療体制に大きなリスクが顕在化しているが「Go Toを止めるな」なのだ。

Go Toを止めることは五輪を止めることに直結する。
五輪が中止になれば菅内閣は凋落する。
策謀をめぐらせてやっとつかんだ総理の椅子。
簡単には手放せない。

総理の椅子に座り続けるためには、何が何でも五輪開催が必要なのだ。
2021年9月の自民党総裁選。

何が何でも五輪を開催して、
「五輪開催を成し遂げた総理大臣」
として自民党総裁の続投を狙う。

小池百合子氏も人を踏み台にして歩んできた人生。
五輪の主催者として檜舞台に立つことを目指している。

両者に共通するのは自分の利益がすべてで、他人の迷惑、不幸、国民の迷惑、不幸、都民の迷惑、不幸にまったく関心がないこと。

コロナで助かる命が助からなくなる。
しかし、そんなの関係ない。

自分の利益が増大すれば何の問題もない。
五輪は何が何でも開催する。
できれば多数の観客を入れて。

それが無理で、たとえ無観客になっても、アスリートの参加者がどれだけ減っても。
とにかく五輪開催を強行する。

これが総理の椅子に座り続ける道だと決めている。
だから、東京都の感染者数が急増しているのに、これを無視している。

小池都知事もコロナに対する対応がくるくる変わる。

3月から5月にかけてはコロナ警戒論を吹聴していた。
ところが、東京都知事選が視界に入ると、突然、営業自粛要請の全面解除に豹変した。

Go Toでは、菅義偉氏との個人的な確執から国と意見対立を表面化させた。
ところが、今回、東京都の感染者数が急増して、東京もGo Toを中断しなければならない局面だが、「五輪を止めるな」を背景に、「Go Toを止めるな」で菅義偉氏と一致した。

これこそ、究極の政治私物化だ。
五輪開催までの時間を冷静に考えれば、何をすべきかは明白だ。

政府が「リスクが最高水準であると区分する」コロナ感染症が、いま拡大しているのだ。
感染拡大で外出自粛要請を発出した地域さえ、日本国内で発生している。

五輪延期で膨大な追加費用が発生する。
そんなお金があるなら、検査拡大、医療体制強化、国民生活支援に充てるべきだ。
五輪開催を断念して最速のコロナ収束を目指すべきである。

政治の道筋を踏み外している菅義偉氏には必ずその報いが襲ってくるだろう。
「天網恢恢疎にして漏らさず」の言葉を軽視すべきでない。

ここまで力を注いできたのだから五輪を何とか開催したいとの希望があるのは理解できる。
しかし、その五輪開催は純粋な動機によるものではない。

現在の五輪は平和の祭典、アマチュアスポーツの祭典ではなくなっている。
巨大利権事業と化している。
そもそも動機が不純なのだ。

それでも、五輪に向けて尽力してきた向きにとっては、五輪開催は悲願であるだろう。
しかし、五輪のために社会が存在しているのではない。
五輪のために政治が存在しているのではない。
この部分をはき違えるべきでない。

政府の最大の責務は国民の命と暮らしを守ること。
これがすべてだ。
「国民の命と暮らしを犠牲にしてでも五輪の開催を」は本末転倒。

まずは、コロナに適正に向き合うこと。
コロナの特徴は無症状の感染者が多数存在することにある。
無症状の感染者(陽性者)が感染拡大の原因になっている。

症状の深刻度では個人差が大きい。
若年層の健常者では重症化するリスクが極めて低い。
死亡することはほとんどない。

他方で、高齢者、とりわけ基礎疾患を有する人は重篤化しやすい。
基礎疾患を持つ人、高齢者を守らねばならない。
同時に、医療従事者、介護従事者の感染を防がねばならない。

安倍内閣はコロナ対応の出発点で完全なる過ちを犯した。
検査を最小限に絞り、感染者を行政検査で追跡する手法を採った。
これは検査を、検査利権ムラで独占するための方策だった。
感染研、衛生研がコロナ検査を行政検査として独占する手法を採り続けてきた。

しかし、いわゆるクラスター対策でコロナ感染を抑止すること、コロナ感染を捕捉することは不可能なのだ。
なぜなら、コロナ感染は無症状のウイルス保持者によって拡大されているからだ。

Go Toトラブル事業は無症状感染者の全国拡散を推進するもので、その結果として日本全国に感染が急拡大している。

重要なことは基礎疾患を持つ人、高齢者、医療従事者、介護従事者を守ること。
そのために必要な最重要の措置は、検査を徹底的に拡大することだ。
コロナ対策に巨大予算を投下している。

その予算があるなら、すべての国民のPCR検査を無償化、あるいは、最小費用負担に移行すべきだ。
感染が確認された者が高齢者や基礎疾患を持つ人に接触することを回避させる。
これが重要なのだ。

コロナの実情に合わせた合理的な対応を取ることが重要だ。
限られた財政資金を効率的に活用しなければ財政は破綻に向かってしまう。

Go Toトラブル事業で感染拡大を推進するのは愚の骨頂。
他方で、50代以下の健常者が重篤化するリスクが極めて低いことを周知させるべきだ。
「過剰な恐怖感」を煽ることが、経済活動の萎縮を推進している。

政府が取り組むべきことは、
検査の低料金での一般開放、
陽性者の行動抑止、
正確なコロナリスクの周知、
そして
すべての国民の生活保障だ。

Go Toトラブル事業に回す財政資金があるなら、国民の生活保障に充当するべきだ。
Go Toトラブル事業は特定の事業者への法外な利益供与政策になってしまっている。
その利益供与が政治屋にキックバックされる構図が自公政治の本質を表している。

為政者が自分の利益だけを追求するなら国は滅びる。
菅・小池の自分ファースト政治に終止符を打たねばならない。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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