2024年11月24日( 日 )

利権と不公平満載のGoToトラブル

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を紹介する。今回は、「利権まみれのGo Toトラブル事業の停止を求める国民世論の拡大が必要だ」と訴えた12月12日付の記事を紹介する。


人の移動拡大がコロナ感染を拡大させる。

この自明の事実を否定する者がいる。
御用キャスターの辛坊治郎氏もその1人。
菅内閣の応援団を懸命に演じている。

「7月末にGo Toが始まって、8月、9月の感染者数は激減している。Go Toが原因なら8月、9月増えなきゃおかしい」と主張する。
これを単眼思考という。

感染に影響を与える重要な2つのファクターがある。
人の移動と季節性。
複眼思考できないと辛坊氏のような間違いに陥る。

さらに重要な見落としがある。
それは、人の移動変化と新規陽性者数変化の間にタイムラグが存在すること。
人の移動変化と3週間後の新規陽性者数変化が連動する。

このタイムラグについて考えがおよばないのも、単眼思考のなせる業だ。
3週間前の人の移動指数推移と新規陽性者数推移を比較するとその連動性がよくわかる。

3月20日から5月5日にかけて、人の移動が急減少した。
これを受けて4月10日から5月26日にかけて新規陽性者数が急減した。
見事に、人の移動変化と新規陽性者数推移が連動している。

5月5日から7月中旬にかけて人の移動が急速に拡大して、これを受けるかたちで新規陽性者数が8月7日にかけて再拡大した。

この感染再拡大を受けて、8月初旬から8月末にかけて人の移動は再び減少した。
9月23日にかけての新規陽性者数減少は、この人の移動減少と季節性を背景にしたもの。
夏になると高温、多湿になり、部屋の換気状況も改善する。
この影響で新規陽性者数が減少した。

こうしたなかで、10月からは東京都もGo To事業に組み込まれて人の移動が再拡大した。
ここに季節性による感染拡大の影響が加わった。

3連休初日の11月21日に人の移動指数がピークをつけたが、これを3週間後追いして12月10日に新規陽性者数が過去最高を記録した。

Go Toトラベルが感染拡大の原因になっていることは明白だ。
無症状の感染者がウイルスを運ぶ風の役割をはたしている。

大都市を出発地とする住民がGo Toトラベルでウイルスを全国に拡散する。
大都市を目的地とする住民がGo Toトラベルで大都市からウイルスを地域に持ち帰る。

コロナ対策分科会はステージ3相当地域のGo Toトラベル事業の一時停止を提言している。
ところが、菅義偉氏がGo Toトラベルの継続を言い張っている。

頑迷宰相が国民生命を脅かしている。
Go To利権の大きさが浮き彫りになる。

全国各地の有名宿泊地の有力旅館は濡れ手に粟の巨大利益供与を享受している。
空前絶後の大活況だ。

Go Toトラベルによって巨大利益供与を受けている富裕層の多くが自公支持者である。
法外利益を享受する有力観光資本は、自公に対して「票とカネ」のキックバックを行う。
だから菅義偉氏はGo Toトラブルに執着する。

その一方で、Go Toトラブルからまったく利益を得ない人、Go Toトラブルによって巨大な不利益を蒙る人が多数存在する。
基礎疾患を持つ人、高齢者にとってGo Toトラブル事業はトラブルをまき散らす悪魔の事業でしかない。
コロナ対応に追われる医療従事者、介護従事者にとってもGo Toトラブル事業は迷惑以外の何者でもない。

菅義偉氏は利権でつながる巨大観光資本のことしか考えていない。
このような頑迷首相を早期に退場させないと日本全体が滅びてしまう。

週明け以降、寒波の到来が予想されている。
この季節性もコロナ感染拡大の原因になる。
人の移動指数は11月21日をピークに緩やかな減少を示している。
感染拡大に対する警戒感を反映するものだ。

Go Toトラブル事業を一時停止すれば、人の移動抑制はより鮮明になる。
感染抑制と経済活動維持はどちらも重要だが、「二兎を追う者は一兎をも得ず」の言葉を肝に銘じるべきだ。
まずは、感染抑止に軸足を置くべきだ。

各地で医療崩壊の危機が叫ばれている。
そもそも、菅内閣はコロナ感染症を第2類相当指定感染症に区分している。
最大の警戒を要する感染症であるとしているのだ。
この区分を維持しながらGo Toトラブル事業を推進することが自己矛盾である。

東アジア諸国でのコロナ感染症は、相対的に軽微な被害しかもたらしていない。
50代以下の健常者が重篤化するリスクは高くない。

コロナ感染症を第2類プラスαの指定区分にしているために、医療資源の有効配分が妨げられている疑いが強い。
菅義偉氏がコロナ感染症の実態が第2類相当区分に適合せず、過度の警戒不要と判断しているなら、そのことを丁寧に説明すべきだ。

その場合には、国民全員へのワクチン接種予算を計上する必要もなくなる。

政府が、最大級の警戒を要するものと区分する感染症の感染が急拡大している。
この現実を受けてコロナ対策分科会がステージ3相当地域のGo Toトラベル事業の一時停止を提言している。

菅義偉氏がすべてを独断で決めて分科会提言を無視するなら、分科会そのものを解散すべきだ。
分科会が存在しても実効性をもたないなら、存在そのものに意味がなくなる。

菅義偉氏は、すべてを自分1人で判断し、自分1人の責任において政策を遂行することを宣言すべきだ。
独断ですべてを決める代わりに、結果責任はすべて自分が負うことを明確にするべきだ。

東京都のGo Toトラベル事業を一時停止することを小池都知事も分科会の尾身会長も明言しない。
誰もがあいまいな言い方に終始する。
菅義偉氏が独断ですべてを決めて政策を強行するなら、そのことをはっきりとわかりやすく説明すべきである。

Go Toトラブルの最大の欠陥は、この施策が著しく公平性を欠く点にある。
政府の施策には公平性が必要不可欠だ。

法外な利益供与を受ける事業者が存在する一方で、生命のリスクに晒される者がいる。
コロナで困っているのは宿泊事業者だけでない。
職を失い、住居さえ失って路上生活者に転落する人まで現れている。

菅義偉氏は経済が悪化して自殺者が増えることを防がねばならないというが、自殺を迫られる市民の暮らしを支えていないことが問題なのだ。
経済が悪化しても1人ひとりの市民の暮らしがしっかり支えられているなら、死を選択する必要がなくなる。

すべての国民に対する「生活保障」の確立こそ必要な施策だ。

一律給付金には条件が付されなかった。
すべての国民が受給できる施策だった。

特定の事業者に法外な利益供与を行う施策より、条件なし一律給付金のほうがはるかに公平性を確保できる施策だ。
58兆円の補正予算を計上したのだから、条件なし一律10万円給付政策なら4回実施できる。
利権まみれ、不公平満載のGo Toトラブル事業より、10万円一律給付政策を繰り返す方がはるかに生活支援の効果は大きい。

感染拡大を抑止するには「検査と隔離」の基本を最重視すべきだ。
PCR検査が1回2,000円で可能なことが明らかになり、これまで暴利をむさぼっていた実態が明るみに出るだろう。
政府はPCR検査の広範な開放を実行すべきである。

利権まみれのGo Toトラブル事業の停止を求める国民世論の拡大が必要だ。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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