【再掲】2050年代を見据えた福岡のグランドデザイン構想(5)~新福岡空港建設を阻んだ諸問題(後)
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C&C21研究会 理事 下川 弘 氏
前回、新福岡空港の論議には大きく3つの波(タイミング)があったと述べたが、そのいずれも実現には至らなかった。空港建設という国家事業は国、地方行政、地元経済界、地元選出の国会議員などが一丸となって推進していく必要があるが、残念ながらそれぞれの立場でさまざまな問題を抱えていたからだ。2回に分けて諸問題について考察する。
(3)地元経済界の問題
地元経済界としては新空港建設を推進してきたのであるが、地元負担金の懸念もあって、次第に新空港推進派が減少。加えて、新空港が建設された場合の現空港の跡地活用については一切の提案がなかったため、土地組合や地元住民からの賛同も得られなかった。
そうこうしているうちに、最終判断を知事に委ねたことで、最終的に滑走路増設の方針に従わざるを得なかったのである。
(4)政治家の問題
当時の民主党の台頭が大きく影響し、地元選出の自民党国会議員をはじめ、県・市の政治家らは、自身の選挙が近づくと、“新空港推進の旗”を次々に降ろさざるを得なかった。
当時の麻生渡・福岡県知事も、空港問題は自身の県知事選においての集票に影響をおよぼすとの判断から、2003年と09年の2度にわたって、自ら新空港構想を取り下げ、そのチャンスを逸した。
さらに、福岡県知事と福岡市長が、それぞれ新空港をめぐって賛成と反対とで対立。記者会見場で口論が始まり、市長が席を立ってしまうという前代未聞の事案が起こるなど、最後まで地元がまとまっていないことを露呈した。
(つづく)
<プロフィール>
下川 弘(しもかわ・ひろし)
1961年生まれ、福岡県出身。熊本大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程を修了後、87年4月に(株)間組(現・(株)安藤・間)に入社。建築設計第一部や技術本部、総合企画本部企画部などを経て、99年1月には九州支店営業部に配属。その後、建築営業本部やベトナム現地法人、本社土木事業本部営業部長などを経て、2020年9月から九州支店建築営業部営業部長を務める。社外では99年9月からC&C21研究会事務局長(21年8月から理事)を務めるほか、体験活動協会FEA理事、(一社)日本プロジェクト産業協議会の国土・未来プロジェクト研究会幹事、(一社)防災教育指導協会顧問など数々の要職に就いている。関連キーワード
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