同居人いるのに孤独死、これってアリですか?(前)
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コロナ禍で孤独死が増えているという。主催する「サロン幸福亭ぐるり」のあるUR((独)都市再生機構)でも、男性の孤独死が起きた。おそらく60代だと推測する。
以前は、男性が朝夕にウオーキングするのをよく見かけていた。筆者も1日8,000歩を目標とするウオーカーのため、すれ違うことが多いが、挨拶を交わす仲ではなかった。その彼の姿が突然見えなくなった。やがて、孤独死したという噂が流れた。それも、長男がいたという。同居人がいるのに、なぜ孤独死が起きたのか。父の死に気づいてからも4カ月もの間、放置
NHKの「クローズアップ現代+」(2021年4月13日放送)の『“同居孤独死” 親と子の間に何が起きているのか』を見た。70代の父親が病死したことに、同居する40代の息子が気づかなかったという事例だ。息子は2カ月もの間、父親の死に気づかず、気づいてからも何と4カ月間も放置し続けた。父親が亡くなっていることになぜ気づかなかったのか。さらに、父の死に気づいてからも4カ月もの間、放置していたのか。
「自宅で死亡し、同居の家族がいるにもかかわらず4日以上発見されなかった『同居孤独死』が2018年の1年間で、東京23区と大阪で204人いたことが、各監察医事務所への取材でわかった」(ブログ/山田敏宏:国際ジャーナリスト)。この人数に目を剥く。山田氏は、「そうした死体が発見された場合、『異常死体』(変死体)として扱われ、警察によって処理されることになる」といい、犯罪死や事故死もここに含まれる。
拙著『親を棄てる子どもたち 新しい「姨捨て山」のかたちを求めて』(平凡社新書)にも「同居孤独死」の実例を紹介している。とある遺品整理屋が遺品の整理を依頼される。依頼主は父親の息子で、同じ集合住宅の4階に住むサラリーマン。3階に父親が住む。その父親が孤独死したが、1ヶ月もの間、気づかなかったことに遺品整理屋は疑問をもつ。
息子は、「自分は夜勤が多く、父親とはなかなか顔を合わせる機会が少ない。それで気づかなかった」と答えている。父親の遺品を整理後、息子から「引っ越したいので…」という依頼の電話。遺品整理屋は息子の部屋を見て愕然とする。息子の部屋は「マンションのゴミ部屋」で、夏場だったこともあり、異臭が立ちこめていた。この異臭のため、3階の父親の異変に気づかなかったのだ。
「クローズアップ現代+」の場合はどうだったのだろう。父親の職業は警備員(夜警)で、息子はドラッグストアの店長。この“生活時間帯のズレ”が基本的に親子の「すれ違い」を起こした。「1つ屋根の下」で生活をともにしていても、この“ズレ”が致命傷なのだ。
(つづく)
<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)
1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務の後、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ2人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(講談社)『親を棄てる子どもたち 新しい「姥捨山」のかたちを求めて』(平凡社新書)『「陸軍分列行進曲」とふたつの「君が代」』(同)など。関連キーワード
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