同居人いるのに孤独死、これってアリですか?(後)
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コロナ禍で孤独死が増えているという。主催する「サロン幸福亭ぐるり」のあるUR((独)都市再生機構)でも、男性の孤独死が起きた。おそらく60代だと推測する。
以前は、男性が朝夕にウオーキングするのをよく見かけていた。筆者も1日8,000歩を目標とするウオーカーのため、すれ違うことが多いが、挨拶を交わす仲ではなかった。その彼の姿が突然見えなくなった。やがて、孤独死したという噂が流れた。それも、長男がいたという。同居人がいるのに、なぜ孤独死が起きたのか。「同居孤独死」は家族関係の希薄さに起因
こういうことがあった。身内が見つかり、岩田氏が家族に電話をしたところ、家族は頑として遺骨の引き取りを拒否。岩田氏が「引き取り拒否なら、遺骨がどうなろうとよろしいんですか」と尋ねると、「市と契約している無縁墓地でいいですよ」という返事。
岩田氏が「あなたの場合、無縁じゃないでしょう。無縁墓地は無縁でなくては入れないんです」というと、家族は「生きている間にも苦労させられ、死んだ後にまで手間かけさせるな」と電話の向こうで激高。「身内でない私に文句をいわれましても…。それに私が埋葬するというのは如何なものかと…」というと、家族は「それをやるのがおまえら葬儀屋の仕事だろう」と取りつく島もない。「ところで、費用は…」と聞くと、「一銭もだす気はない。すべてお任せします」と一方的に電話は切られた。
岩田氏は、「無縁仏といいますが、親戚筋が判明しない仏さまを扱ったことはごく希です。大半は身内がいても引き取り拒否の場合が多いのです。引き取りを拒否される仏さまの大半は父親です。離婚した母親は父親との因果関係はありません。しかし、子どもは父親とのつながりがあり、無縁ではありません」といい、引き取り拒否の実態を話してくれた。死者本人が“わけあり”になってからは、もはや他人の関係。「行旅死亡人(行き倒れ)」として発見されても、もはや他人なのだ。
「同居孤独死」も、家族関係の希薄さに起因していることが多いと思う。「8050問題」がいわれて久しい。基本的に「80代の親が、ひきこもり状態などの問題を抱えた50代の子どものふたり暮らし」のことを指す。
親が先に死ぬと、生活力のない子どもは親の死を役所に届けない。年金受給が止められてしまうことを恐れるからだ。また、逆に、親を介護していた子どもが突然死去して、親は役所に連絡することもできずに餓死するケースもある。認知症の親の場合、親を看ていた子どもの突然の死を親は理解できない。遺体を放置すれば死体遺棄罪に問われ、子どもは刑事罰を受けることになる。
「近所の目」、つまり地域での相互扶助的な“見守り”が大切といわれて久しい。しかし、実際に町内会や自治会などを中心に見守りを実地しているのはほとんど皆無だ。行政をはじめとする関係機関の動きは鈍く、「個人情報保護法」などが逆に見守りの壁を高くしている。
「同居孤独死」の原因を、核家族化が進んでいるからという人もいるが、核家族化はあくまでも枝分かれした小さな家族をいう。今では、その小さな家族さえバラバラに細分化され、「Cell(細胞・個人)単位」として残されており、そのCellさえも消えようとしている。
そろそろ「家族」という単位で考えるのをやめるときがきたような気がする。「遠くの身内より、近くの他人」という、「気の合う仲間同士」のゆるいつながりこそが最後の砦のような気がしてならない。
(了)
<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)
1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務の後、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ2人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(講談社)『親を棄てる子どもたち 新しい「姥捨山」のかたちを求めて』(平凡社新書)『「陸軍分列行進曲」とふたつの「君が代」』(同)など。関連キーワード
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