アビスパ、わずかにおよばず連敗 福岡1‐2神戸
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サッカーJ1リーグのアビスパ福岡は19日、ホームのベスト電器スタジアムにヴィッセル神戸を迎えて第18節の試合を行った。
ヴィッセル神戸は、元FCバルセロナ・スペイン代表のMFアンドレス・イニエスタ、現日本代表のFW古橋亨梧、元日本代表のDF酒井高徳やMF山口蛍ら、リーグトップクラスの実力を持つ選手が揃うタレント軍団。イニエスタの華麗なパスワークと、MF前寛之が率いるアビスパ守備陣の堅固なディフェンスがぶつかる好ゲームが期待された。
ピッチからの照り返しがまぶしく感じるほどの日差しが降り注ぐ。神戸は元FCバルセロナのMFセルジ・サンペールが最終ラインまで下がって前線にボールを配球する。アビスパのプレスがうまくおよばないまま、試合は開始早々に大きく動いた。
2分、ボールを握ったMFサンペールがするすると持ち上がり、右サイドからオーバーラップしてきたDF酒井にグラウンダーのパス。酒井はそのままドリブルで上がり、ゴール前に鋭いクロスボールを上げる。福岡DFドウグラス・グローリが懸命にスライディングするがおよばず、うまい動き出しでフリーになったFW古橋が胸で合わせ、先制ゴールとなった。試合後の記者会見で「確実に決めるために(ヘディングや足ではなく)胸で合わせました」と振り返ったFW古橋であるが、今年に入って代表では初ゴール含め3得点、リーグでは3シーズン連続の2桁得点と、まさに日本トップクラスの点取り屋の面目躍如となる冷静な判断、見事なゴールだった。
先制を許し、追う立場となったアビスパ。試合序盤は前線からのプレスがなかなか決まらなかったが、飲水タイム(前半25分)あたりから修正に成功。最終ラインからボールをつなごうとする神戸の選手らに厳しいチェックをかけ、6分にはMFサンペールのボールを奪い、最後は福岡MFジョルディ・クルークスがシュート。惜しくも枠を捉えられなかったが、アビスパはペースを取り戻した。
そして19分。アビスパは最終ラインからのロングボールをFWブルーノ・メンデスが競り、右サイドに落としたボールをMFクルークスが体を張ってキープ。上がってきたDFエミル・サロモンソンとのパス交換を経て、クルークスが左足を振り抜き、ゴールに向かって鋭くカーブするクロスボールを上げると、走りこんできたFW山岸祐也がわずかに触れ、ゴール。6月9日に行われた天皇杯・鹿児島ユナイテッド戦でも得点を量産したクルークス・山岸ホットラインが、リーグ戦でも見事に炸裂した。
後半に入ると、神戸は作戦を修正。長谷部茂利監督が「8番の選手(イニエスタ)が、パスの受け手から出し手に変わった」というように、MFイニエスタが積極的にパス回しの中心になり、チャンスメイクを担っていく。一方アビスパは、62分にFWフアンマ・デルガド、FW渡大生、DF湯澤聖人を投入する3枚替えを敢行。長谷川監督は「もう1点取りに行く」という明確なメッセージをピッチ上の選手らに伝えた。
アビスパ攻撃陣は何度かチャンスをつくるものの、得点には至らない。そして77分、ペナルティエリア内でMFイニエスタがボールをキープし、走りこんできたDF酒井に柔らかい浮き球のパスを送る。酒井は中央にボールを送ろうとするが、福岡MF杉本太郎がスライディングしてこれを阻止。しかしこのとき、ボールが杉本の手にあたり、ハンドの判定。故意に手を使って阻止したわけではないが、PKの判定が下った。
このPKをMFイニエスタが落ち着いて決め、1‐2と神戸がリードして試合は最終盤に入った。81分、先ほどハンドを取られたMF杉本がエリア内で神戸MF山口蛍に倒されたかと見えたが、判定はノーファール。アビスパの選手らは主審に詰め寄ったが、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)チェックの結果でも判定は覆らず。元日本代表・山口蛍の冷静なプレーが光った結果となった。
その後もDFサロモンソンのコーナーキックなどチャンスを迎えたアビスパだが、ゴールが遠い。アディショナルタイム中の92分、DFサロモンソンのクロスボールにFW渡が果敢にスライディングシュートを試みるが、わずかにゴールマウスを捉えられない。そして94分、GK村上昌謙が直接ペナルティエリア内に送ったロングフィードに対し、神戸GK前川黛也が前に出てクリアを試みる。このクリアボールがやや甘くなったところをFWデルガドがヘディングシュート。シュートは枠を捉えていたが、GKのいないゴールは神戸DF小林友希が死守。そのまま試合終了となった。
見どころの多いエキサイティングな試合だったが、アビスパとしては、負けは負け。今シーズン初の連敗を喫してしまった。長谷部監督が「2失点していては勝てない」と振り返るように、序盤の失点がなければ十二分に勝機のある一戦だった。しかしその一方で、「イニエスタは映像で見たよりも、想像したよりも上手かった」と福岡MF重廣卓也が振り返ったように、世界的な名プレーヤー・イニエスタや日本代表クラスの選手らとアビスパの選手らが真剣勝負でぶつかり合う様子は、「やはりJ1に昇格してよかった」と素直に思える試合だった。
また試合後、以前アビスパに期限付き移籍で所属していた神戸DF初瀬亮、MF増山朝陽がアビスパ側のスタンドに挨拶に訪れ、暖かい拍手を浴びていたことも忘れがたい。
改めて思うことだが、ベスト電器スタジアムに集うアビスパサポーターの皆さんの素晴らしさはJリーグのなかでもトップクラスだと胸を張っていえる。声を出しての応援ができない時期であるが、スタンドからはアビスパの1つのクリア、1つのブロックに大きな拍手が湧き起こる。チャンスのとき、ゴールを挙げたときに拍手が起きるのは当然だが、ディフェンスのプレーにここまで大きな拍手が起きるのはベススタだけではないだろうか。このサポーターの後押しが、アビスパの選手らが1つひとつのプレーに身体を投げ出し、最後まで走りぬく助けになっていることは間違いないだろう。
次節はアウェーの浦和レッズ戦、6月27日。現在9試合9ゴール(リーグ・ルヴァンカップ)を挙げてJ1を席巻しているデンマーク代表FWキャスパー・ユンカーをはじめ、実力者ぞろいの浦和は相手にとって不足なし。また、浦和のホーム・埼玉スタジアム2002に集うレッズサポーターは、Jリーグ屈指の熱いサポーター集団だ。アビスパサポーターが現地で応援するのは困難だが、DAZNを通じて勝利の念を送ろう。
【深水 央】
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