2024年12月26日( 木 )

加速するUFOに関する調査や分析:問われる日本的対応(前)

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国際未来科学研究所代表 浜田 和幸

アメリカ政府機関による目撃が140件超に

UFO イメージ 6月24日は「空飛ぶ円盤記念日」(通称、「UFOの日」)といわれている。1947年のこの日、アメリカの実業家ケネス・アーノルド氏が自家用機で飛行中に円盤(ソーサー)のかたちをした謎の飛行物体を9機も発見したとのこと。当時、この物体は「フライング・ソーサー」と呼ばれた。これがUFOの最初の目撃情報になったわけである。

 そのため、この日は世界中のUFOマニアがこぞって、眼を皿にして「空飛ぶ“皿”」を探す日となっている。ちなみに「UFO(未確認飛行物体)」という名前を最初に付けたのはアメリカの空軍である。過去20年の間にアメリカの空軍や海軍のパイロットらが目撃したUFOは140件を超えている。もちろん、一般人による目撃情報や拉致されたが無事に帰還できたとの証言も枚挙に暇がない。

 オバマ元大統領も「UFOはいると確信している。ただ、どんな存在なのかが不明のままだ」と発言。また、6月頭にはNASA(米航空宇宙局)の幹部で元上院議員のビル・ネルソン氏が「UFOの実態を究明すべく科学的見地からの取り組みを進めている」と、これまで以上に突っ込んだ発言をしている。

 そうした関心の高まりを受けて、6月25日にはアメリカ議会に対して、国家情報長官室が最新のUFOに関する研究成果を報告。残念ながら、144件の目撃情報についての詳細な分析の結果と宣伝されたものの、1件の例外を除けば、「真偽のほどは確認できない。より多くの時間と予算をかけて調査、分析の必要がある」という中途半端なものだった。ある意味、議会への予算増額の陳情のような報告会で終わってしまった。

 「中国やロシアの新型兵器」「自然現象」「アメリカ軍の隠密行動」などが「可能性」として想定されるとの説明も添えられていたが、明確な結論は先送りされたかたちである。唯一の例外として明確な結論が示されたのは「大型の風船であることが確認された」という1件のみだった。

国際未確認飛行物体研究所が福島市にオープン

 そうしたアメリカ政府の動きを横目で睨みながら、日本では新たな動きが出てきた。何と、6月24日、福島県の福島市飯野町にある「UFOふれあい館」に「国際未確認飛行物体研究所」がオープンしたのである。「日本では唯一となるUFOの専門研究所を目指す」とのこと。インターネットを通じて、国内外から研究員や情報を集め、世界各地のUFO目撃情報を分析し、UFOとの遭遇に備えることを目標に掲げている。

 「UFOふれあい館」には3000点ものUFO関連資料が展示されている。その大半は故・荒井欣一氏が寄贈したもの。同氏は戦時中に陸軍航空隊でレーダー装備を担当し、飛行機に限らず、気象や天文学にも詳しく、戦後、大蔵省印刷局に勤務した後、1955年に「日本空飛ぶ円盤研究会」を立ち上げた。

 三島由紀夫、石原慎太郎、星新一、糸川英夫、黛敏郎ら1,000人を超える会員を擁し、我が国におけるUFO研究の草分け的存在にほかならない人物。2002年にこの世を去る直前に、それまで収集していたUFO関連資料を福島県の「UFOふれあい館」に寄贈したのである。当時の館長はUFOとの遭遇体験も豊富で、荒井氏とは親しかった。

 今回、誕生した「国際未確認飛行物体研究所」の初代の所長に就任したのは、オカルト雑誌「月刊ムー」の三上丈晴編集長。開所式の挨拶では「コロナ禍で巣ごもりしている人も空を見上げるきかっけになる。スマートフォンでUFOの写真を撮影し、研究所に情報を寄せてほしい」と呼びかけた。

 そのうえで、「UFOが宇宙人の乗り物かどうかの確認はまだできていない。しかし、UFOをある意味で鎖国時代の黒船ととらえ、飯野町が長崎の出島のような存在になれば、これからは世界的に注目されるはず。私たちは何事も地球上の視点で考えがちだが、他の星にも生命体がいると思考をめぐらせば、人生観が変わり、世界の人々の意識も変わる。その意味で、この場所が国際平和に向けた発信の拠点になることを目指したい」と期待を込めた。

 同じく開所式に出席した飯野町商工会の斎藤弘会長曰く「国際社会でUFOへの関心が高まっている。新型コロナウイルスの影響で社会に閉塞感が漂っている今だからこそ、未知なるものへのロマンや好奇心で世の中を明るくしていきたい」。余談だが、かつて一世を風靡したピンクレディーの「UFO」も再び脚光を浴びそうだ。

 このニュースは瞬時に世界を駆けめぐり、イギリスの「デイリー・メール」紙などが大きく取り上げた。そのおかげで、福島といえば、原発事故で有名になっていたが、「新たなUFO研究のメッカになるのでは」との期待感が高まっている。海外からは日本の防衛省が本格的なUFO対応策を検討し始めたというニュースが1年前に流れたこともあり、以前からUFOに関する日本の動向には関心が向けられていた。

 防衛大臣時代の河野太郎氏も「航空自衛隊機がUFOと遭遇した記録はないが、そうした可能性に備え、対応策は検討に値する。北海道から沖縄まで7つの基地からスクランブルで出動する自衛隊機が未確認飛行物体と遭遇する場合の情報収集と分析、対応策も必要になるだろう」とのコメントが話題となった。

 アメリカの軍用機はこれまで数多くUFOと遭遇し、その映像も記録されているわけで、日本との情報共有も欠かせないだろう。なぜなら、ロシアや中国による新型兵器の可能性も完全には否定されていないからだ。とはいえ、アメリカ国防総省の分析では、04年当時から目撃や映像が記録されている未確認飛行物体が「ロシアや中国のものである可能性は低い」とされている。

 なぜなら、当時のロシアや中国には映像に残されているような高度な飛行を可能にする技術が備わっていなかったことが確認されているからだ。国防総省で国家安全保障の責任者であったジョン・ラトクリフ長官曰く「UFOがロシアや中国製の飛行物体であることはあり得ない。当時の両国には画像で確認できるような超音速飛行は技術的に不可能だった」。こうなると、やはり未確認飛行物体は地球外生命体のものと思わざるを得ない。いずれにしても、世界各地でUFOに関する目撃情報は増え続けている。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

(後)

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