“米国衰退論”誤りのみならず罪づくり(前)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は2022年4月18日の「“米国衰退論”誤りのみならず罪づくり」を紹介。プーチンの勝利はなくなった
ウクライナ戦争勃発以降、連日報道される悲劇の連続に気が重くなる。が、だからと言って世界の将来を悲観すべきではないだろう。ウクライナ戦争でプーチンが勝利する可能性はない。短期決戦での決着に失敗し、長期化すればするほど不利になる。戦争コストが高じ、ロシア軍の残虐性に対する国際批判は高まり、経済制裁がもたらすロシア国民の生活の悪化と死傷者の増加により厭戦気運は高まらざるを得ない。他方、ウクライナ側は国際世論の支援と米国・NATO諸国の軍事・経済支援、高まる士気により抵抗力を増していくだろう。
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ウクライナ戦争とエネルギー安全保障(前)プーチンは最善でもメンツを保つ休戦に応ぜざるを得ないだろう。ロシアは経済弱体化と政治的プレゼンスの低下を余儀なくされる。密かにロシアを支援する中国も不動産バブルのピークアウト、コロナ再発による経済の減速、輸出先・欧米での対中批判の高まりなどにより、経済情勢は困難化していく。国連内では南アフリカやブラジルがロシア非難に及び腰であるが、そうした趨勢が力を増すとは考えにくい。
世界リセッション回避、米国株式は大底をつけた可能性
先走りとの批判は覚悟のうえでの推論だが、最終的には米国に有利な決着となる可能性が高いのではないか。そもそもロシアの経済規模は世界GDPの1.7%程度と小さく、この戦争そのものが世界経済を揺るがすものとはなりにくい。唯一ロシアからの原油、ガス、石炭の供給減による価格の高騰、小麦価格の高騰がもたらすインフレが懸念されるが、それも心配されたほどcatastrophic(壊滅的)ではないようである。石油ガスのロシアからの全面的禁輸が回避されていること、米国のシェールガス増産など、代替供給源へのシフトが1~2年内には大きく進むこと、エネルギーインフレに対して各国ともリフレ策で対応していくとみられること、などが想定される。
米国株式市場の最大の懸念要因は戦争というよりは、インフレの高進と金融引き締めの行き過ぎによるオーバーキルであるが、それは何とか回避される可能性が大きい。CPIは3月が前年比8.5%と40年ぶりの上昇率となったが、原因の多くは供給体制の制約による一過性のものなので、今年後半にははっきりピークアウトしていくだろう。供給に原因があるインフレに対して、金融や財政の引き締めで需要を抑える政策は誤りである。このことは米国政府、FRB、市場のコンセンサスとなっているので、オーバーキルは回避されるだろう。米国株価はウクライナ侵攻直後の急落で大底をつけた可能性が高い。湾岸戦争時の事例のように、戦争勃発直後が株価の大底という過去の経験が今回も当てはまりそうである。
(つづく)
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