2024年12月22日( 日 )

中国・全国統一大市場の建設、計画経済に逆戻りか(後)

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中国 ネット イメージ    「中共中央(中国共産党中央委員会)・国務院の全国統一大市場の建設加速に関する意見」が4月10日に公表された。

 「打破」について、同「意見」は「不当な市場競争と市場への関与といった行為に対する一層の規範化」を突出させている。そのなかで、反独占の強化に力を入れ、不当な競争行為を法律に基づいて摘発し、地方保護と地域間の障壁を打破し、外資系企業や他省の企業などを差別する各種の優遇政策などの措置を全面的に整理し、マーケットエンティティに対しても政府当局に対しても目に見える障壁を打ち破ることに注目すると同時に、より強調しているのは各種の隠れた障壁を打ち破ることだ。

 王氏は、「ビッグデータ、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)など新世代の情報技術(IT)の急速な発展と広い範囲での浸透にともなって、さまざまな市場の障壁や垣根が壊されつつある。そのためプラットフォーム経済などの新業態・新モデルの独占行為や不当な競争行為に対する規制を強化する一方で、地域の閉鎖や市場の分割を打破し、全国統一大市場の建設を推進するうえでプラットフォーム経済がはたす積極的な役割を十分に発揮させることが必要だ」との見方を示した。

計画経済の強化版になるのか

 市場の統合を急ぐ、という中国政府の決定に対して、懸念の声が高まっている。計画経済の時代に戻るとの政府からのシグナルではないかと見る学者もいる。

 アメリカ・ノースカロライナ大学マーケット学の謝田教授は、「計画経済の強化版だ」と見ている。

 謝教授は取材に対し、「Eコマースやデジタル決済といった既存の技術や設備、さらに物流や決済といった現在の仕組みを利用すれば、従来の計画経済を一段と整ったものすることができる」と述べた。

 中国政府がこうした策を打ち出したことについて謝教授は、一番の理由は財政赤字であると見なしている。

 謝教授は「いわゆる統合というのは専売、つまり独占である。商品の生産、小売、配送は現在、すべて民間企業が行っており、政府が市場を統合したならば、これらの利益を手に入れ、また価格を定めることもできる」と述べている。

 学者の張宏氏は、「経済学的にいえば、経済活動における障壁を全国的に排除できれば、生産力の向上につながるが、力のない企業が淘汰されるのではないか」と見ている。

 張氏は、「上海で、VW(フォルクスワーゲン)を守るために北京で生産された韓国の現代自動車を政府調達の対象外とするなど、各地域に保護主義が存在している。市場を統合すれば、地域間の縦割りを取り除くことができる。ただ地方の保護主義がなくなれば、一番よくて大きな企業が生き残り、小さな企業は死んでしまう」という。

 香港中文大学の政治学者の鄭永年氏は、「中国が市場を統合するなら、引き続き国際ルールに合わせたかたちで実施すべきだ。でなければ、仮に実現してもゆくゆくは市場が閉鎖的なものになってしまい、衰えていくことになる」と指摘している。

(了)


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