アビスパが次のステージに進むのに必要なものは
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5月14日に行われたJ1リーグ第13節川崎フロンターレ戦。昨シーズン、アビスパが王者川崎の不敗街道に土をつけたのは記憶に新しい。その再現を…と願ったアビスパファンは多かっただろうが、今回の対戦では0-2と完敗を喫した。
昨シーズンはJ1残留どころかクラブ史上初となるリーグ8位。「次はアジアチャンピオンズリーグか、優勝か」といった気の早い声が川森敬史社長に届くほどだったが、現実はそう甘くはない。今シーズンはここまで13試合を消化して3勝6引き分け4敗、順位は全18クラブ中12位だ。
はたしてアビスパは、さらに上を目指すことができるのだろうか。それとも、ズルズルと降格圏に落ちていってしまうのだろうか。
結論から言おう。今の体制で戦い続けることこそが、アビスパが上を目指すための最短ルートなのだと。
「チームを強くする魔法の杖」というものは、どんなチームスポーツにも存在しない。とくにサッカーにおいてはそうだ。プロ野球の場合、年間25試合先発でき、15勝できるピッチャーを獲得できれば順位は確実に上がる。だがこれは、野球というスポーツにおいてピッチャーが占める役割が非常に大きいからだ。サッカーではどんなに能力の高いFWを獲得しても、彼にパスを出すMFがいなければ点は取れないし、彼が点を取る以上に守備陣が失点すれば試合には勝てない。現代のサッカーは、1人のスーパースターが試合を決めるスポーツではなくなっている。
とくに今年のアビスパでいえば、リーグ戦で出場機会の少ない選手たちの活躍も目立っている。ルヴァンカップではベテランFWの城後寿や今年からチームに加わったDF熊本雄太、DF井上聖也、若手のMF北島祐二、MF森山公弥らが躍動し、6年ぶりにグループリーグ突破を決めている。目覚ましい活躍を見せたMF北島祐二がリーグ戦のメンバーにも食い込み、チーム内の健全な競争環境をつくり出している。
長谷部茂利監督がアビスパを率いて3シーズン目になる。長谷部監督の戦術は選手たちにしっかり浸透し、新たにチームに加わった選手たちもピッチに立てば違和感なくチームプレーを実践している。「点を取る攻撃のための、しっかりした守備」というアビスパが掲げるサッカーは、Jリーグの他のチームにも認められ、警戒されてさえいる。5得点を奪って快勝した5月3日のFC東京戦終了後、Jリーグ屈指の戦略家として知られるFC東京のアルベル監督が「アビスパが最も得意とするゲームプラン、つまり彼らが守るか攻めるかを決められる状況に持ち込まれたのが敗因」と嘆いたことからもわかるように、アビスパは今やJリーグのトップチームから警戒され、対策を立てられる立場になったのだ。
先ほど、アビスパの順位と勝敗数について触れた。もう一度、順位表をしっかり見てほしい。アビスパの失点数はわずか9。10得点はたしかに少ないが、試合で見せる攻撃のバリエーションは増えている。引き分けで積み上げた勝ち点がシーズン終盤に大きく響いてくるのは間違いない。
5月のリーグ戦は横浜F・マリノス、名古屋グランパス、浦和レッズと強豪との対戦が続く。6月は、鹿島アントラーズとのルヴァンカッププレーオフで幕を開ける。強豪チームの攻撃を、身体を張って防ぎ、一瞬の隙をついたカウンターで決勝点を奪う、エキサイティングなアビスパの試合を、ぜひベスト電器スタジアムで観戦しよう。
【深水 央】
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