2024年12月22日( 日 )

ウォン安進行で韓国経済危機の懸念が高まる(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

負のスパイラルに陥った韓国経済、ウォン安が物価上昇を引き起こす

ウォン イメージ    ウォン安は原材料高騰に追い打ちをかけ、さらなる物価上昇をもたらしている。韓国銀行によると、6月の輸入物価指数は前月対比で0.5%上昇し、2カ月連続の上昇を記録した。その結果、先月の消費者物価は1年前より6.0%も急騰し、アジア通貨危機の時期である1998年11月に経験した物価高以降、もっとも高い物価上昇率を記録した。

 また、ウォン安は韓国銀行が利上げをしないといけないトリガーにもなっている。韓国銀行の7月13日基準金利を0.5%引き上げ、2.25%にした。この利上げは1999年に基準金利を導入して以来、初めてのビッグステップ(0.5%の大幅利上げ)で、3回連続の利上げ決定である。

 韓国銀行がこのような決断を下さねばならなかった理由は、米国の物価が24年ぶりに最高を記録したことと、米国が今月末に利上げを実施すると、米国の金利と韓国銀行の金利の逆転現象が起こることになるからだ。ドルのような基軸通貨の金利が高くなると、新興国の資金は高い金利を求めて、米国に還流される。韓国銀行は韓国からの外国人資金の流出を防ぐためにも、利上げが必要だった。

 韓国銀行の今回の利上げで、韓国では低金利時代が終焉し、2%の金利時代に突入した。しかし、韓国は膨大な家計負債を抱えているだけに、利上げが利子負担の増加につながり、家計がこのような負担に耐えられるかどうか、当局は神経を尖らせている。家計負債の懸念があるにも関わらず、ウォン安を食い止めるため、韓国銀行は利上げに踏み切らざるを得なかったわけだ。ウォン安を食い止めるため、韓国銀行が利上げを実施すると、国内の消費を冷え込ませることになる。

 6月の消費者心理指数は96.4で、前月より6.2ポイント下落した。指数が100を下回った場合、消費心理が冷え込んでいることを表す。韓国銀行の利上げは、金利の負担だけでなく、企業の設備投資も鈍化させ、今後景気は停滞に陥りやすくなる。米国の景気低迷が懸念されているが、米国の景気低迷は韓国の輸出に悪影響を与え、それは結果的に韓国の貿易収支赤字につながり、それがまたウォン安の要因になるという悪循環に韓国経済は陥っている。ウォン安を抑制するため、韓国政府は為替介入をすることになり、外貨保有高も過去7カ月間で200億ドル以上減少している。

 このような悪循環を断ち切るためには、生産性の向上と、イノベーションしかない。しかし、韓国は極端な格差社会で、イノベーションを引き起こすような土壌も醸成されていないのが現状だ。1997年のアジア通貨危機の際に、韓国の中間層はなくなり、経済は発展しても、その恩恵は一部にしかめぐってこない。ウォン安が経済危機の兆しではないことを祈ってやまない。

(了)

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