数年後に実用化が期待される量子コンピューター(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏量子コンピューターの威力の具体例を挙げよう。
データベースで特定のデータを検索するよう命令すると、これまでのコンピューターは、データが100万個であれば、そのデータを順番に検索する。データ処理能力がアップして、特定のデータをあたかもピックアップしているかのごとく、素早く検索結果を返してくれるが、実際はデータを1つずつ検索していることに変わりはない。一方、量子コンピューターは、100万個のデータをいっぺんに検索できるのである。
たとえば、物質が化学反応を起こす際の相互作用を起こす力と分子と素粒子の関係をシミュレーションする場合、量子コンピューターは絶大な力を発揮できるという。したがって、量子コンピューターが実用化されれば、今まで解明できなかった自然現象が解明されることは十分考えられる。
量子コンピューターの処理能力を表す単位に量子ビット(Qbit)がある。量子ビットの数が大きくなればなるほど、量子コンピューターの演算速度は幾何級数的に増えるようになる。それで、世界各国は超高速の量子コンピューターを開発するため、莫大な資金を注ぎ込んでいる。
さらに、量子コンピューターは、従来型コンピューターに比べて圧倒的に低コストで運用できると言われている。エネルギー問題の観点からも、量子コンピューターは注目されているのである。
一方、量子コンピューターが実用化されれば、今まで使っていた暗号が解読され、別の暗号化システムが必要になるという指摘もある。現在使われている暗号化の仕組みは1970年代に開発されたもので、数学的な複雑さに依存していることで解読を防止している。暗号技術のおかげで、インターネット上の決済が安心して行われているのであるが、量子コンピューターの普及がそれを不可能にするという話だ。
現在、データのやり取りには暗号化されたデータが使われ、暗号化されたデータを復号するには、送り手と受け手のみがもつ「鍵」が使われる。鍵がない場合、暗号の解読には大規模な計算が必要になるが、その計算に時間がかかりすぎて解けないので暗号化が安全だとされているのである。ところが、量子コンピューターなら複雑な計算が得意であるから、暗号が解読できてしまうというわけだ。
量子コンピューターの課題
実用化できれば、量子コンピューターによって夢のようなことが可能になるということだが、今のところ実用化までまだ数年はかかりそうだ。Googleは2019年をメドに実用化させると目標を掲げてはいるが、どのような結果になるのかは誰にもわからない。それに、量子コンピューターのアルゴリズムは普通のコンピューターでは検証できないため、アルゴリズムが正常に動作しているかどうかがわからないことも課題となっている。
さらに、量子の扱いが難しく、干渉現象を起こしたりするので、制御も簡単ではないと言われる。量子コンピューターはデリケートで、若干の温度変化や振動でも量子ビットの状況に変化を与えるので、機械的エラーも発生しやすいのである。そういうわけで、外部の影響を受けることなく「重ね合わせ」の状態をうまく維持するには、多くの装置が必要になる。それらの必要装置が実現して初めて実用化に耐える量子コンピューターが誕生することになるので、実現まで相当な時間が必要になりそうだ。
他方、量子ビットを上げれば上げるほど、演算速度が急激に早くなると同時に、速度に比例して干渉現象とエラーも急増するといわれる。量子ビット数を増やすことは、したがって並大抵のことではない。しかし、量子コンピューターの開発に成功した暁には、そのメリットはかなり大きい。それゆえ、Googleを始め、中国の企業、日本の企業も量子コンピューターの開発に全力を注いでいるのである。
(了)
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