2024年12月22日( 日 )

エネルギー価格高騰で世界は再び原発再稼働へ(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

福島原発で崩れた安全神話

原発 イメージ    発電コストも安く、温室ガスもあまり出さず、燃料代の高騰に左右されず、安定的な電力供給を可能にする魅力的な原子力発電ではあるが、原子力は一度暴走すれば人の手には負えなくなり、その被害が甚大である。今でも経済的な理由で原発の再稼働が推進されているが、原発の安全性は何も変わったわけではないので、原発の再稼働に異論を唱える人も多い。

 とくに日本では地震によって引き起こされた津波の影響で、福島県にある福島第一原子力発電所がメルトダウンし、放射性物質が放出されたことは記憶に新しい。その結果、原発に対する恐怖心が醸成され、原発をなくした方がよいという世論が高まっている。

 原子力発電は、燃料となるウランを核分裂させることで熱エネルギーを得て水を沸かし、その蒸気の力で蒸気タービンを回転させて電気を起こす。発電の原理は火力発電と同じで、タービンを回し終えた蒸気は海水で冷やされて水になり、原子炉に戻される。ところが、原子力発電の燃料であるウランは、天然ウランを採掘・核分裂しやすいウランだけを取り出し濃縮する加工をしてつくられる。使った後は、使用済み核燃料になる。

 問題はウランが核分裂するときには、熱とともにさまざまな放射性物質がつくられることだ。普段はそれが漏れないように封じ込められているが、大きな事故が起きれば、その放射性物質が外へ漏れ出して事故となる。それで、原発のコストは一見安いようで、そのようなリスクまで考慮すると、安全でも安くもないというのが反原発派の主張である。

韓国も原発再稼働と原発輸出に動く

 韓国も天然ガス価格高騰で天然ガスの輸入価格が増大し、貿易赤字が膨らんで苦しんでいる。そのような苦しい事情から、韓国政府も脱原発政策を中止し、原発の再稼働と原子力技術を次世代産業として育成していくことに方法を転換した。このような政策転換は不況から脱出できる良いチャンスになるので、業界からは歓迎されているが、一方では早急な方向転換に対して警戒する向きも多い。

 韓国政府は以前アラブ首長国連邦(UAE)に原発を輸出し、その運営を任されており、韓国の原発に対する世界的な評価は高い。そのような中、世界各地で原発が新設される動きがあり、韓国の原発技術が再び注目され始めている。とくに、韓国の次世代原発と言われているAPR1400は、米国から技術的な面で高い評価を受けている。韓国の原発はヨーロッパでも事業者認定を取得できるほど、安全性が立証されているのである。

 韓国はとくに、原発の設計能力をもっていることに加え、価格競争力が高いことでも知られている。国際エネルギー機関(IEA)によると、kWあたりの原発の建設コストは、韓国が3717ドル、米国は1万1638ドル、フランスは7809ドルで、韓国のコスト優位性がわかる。

 韓国の他の産業の輸出が伸び悩んでいるなか、韓国政府は原発輸出に大きな期待を寄せている。原発1基を受注できれば、受注金額は50億ドルくらいとなり、中型車を25万台もしくは携帯電話を500万台輸出したのと同じ効果があるという。それに原発の場合には輸出だけに終わらず、その後の発電所の運営・稼働も請け負うことになるので、とてもおいしいビジネスとなるわけだ。

今後の課題とは

 以上見てきたように、原発がいくつかのメリットをもっているのは間違いない。しかし、何かのことでトラブルになったら、その被害は広範におよぶ。原発の技術も進化し、安全性が高まってはいるものの、さらなる技術のブレークスルーが求められる。原発を小型化し、大きな事故にならないようにする小型原子力発電も、各国で研究が進んでいる。

 もう1つの課題は、使用済み核燃料をどう処理するかという問題であろう。現在までこれといった核燃料の再処理に関する技術は確立されていないが、これを解決しない限り、原発の技術は完結しない。もっと安全で、画期的なエネルギー技術が開発されることを待ちたい。

(了)

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