2024年11月24日( 日 )

アジアのハブ空港へと成長した仁川国際空港(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

通常の状態に戻りつつある航空旅行

 世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大によって、深刻な打撃を受けた業界の1つとして航空業界が挙げられる。

 感染症拡大防止の観点から、旅行や出張が制限されたことで、航空業界は軒並み深刻な経営難に直面した。同期間中、空港経営者も苦渋の選択を迫られた。韓国の仁川(インチョン)国際空港の新社長は、空港の公共性を重要視し、人材をリストラせず、むしろ設備拡充などの投資を増やし、コロナ後に備えるようにした。なぜならば、航空部門の重要性が今後ますます増していくに違いないと考えたからだ。サイズは小さいものの、半導体などの高額製品の輸送が増加しているなか、航空運送を利用せざるを得ないケースが増えていくと判断したからだ。

 韓国の輸出入製品の99.7%は、船で運ばれている。しかし、付加価値の高い最先端製品は、航空貨物として輸送される場合が多い。航空貨物は重量では全体貨物の0.3%に過ぎないが、金額ベースでは全体貨物の40%ほどを占めている。

 そのような状況下、空港は空の玄関口としてだけではなく、物流拠点としても重要なスポットとなっている。今回は韓国を代表する空の窓口「仁川国際空港」について取り上げてみよう。

仁川国際空港 イメージ    第1、第2の2つのターミナルで構成された仁川国際空港におけるコロナ前の1日平均利用客数は20万人ほどであった。しかし、昨年は1日の利用客数が数千人程度にまで落ち込み、空港は閑散としていた。仁川国際空港はピーク時には年間約7,100万人が利用していた空港だったが、新型コロナウイルスの影響を受け、2020年の利用客は約1,200万人と大幅に減少した。ところが、そのような状況にも関わらず、仁川国際空港の新社長は、リストラという安易な選択をせず、いつか空港が正常に戻ることを信じて、人材の維持と施設拡大への道を選んだのである。

 公企業の社長はオーナー経営者と違って、長期的な成長よりも、直近の成績で評価されるので、どうしても目先の利益を追求しがちだ。にもかかわらずこのような選択をした結果、コロナ前は1兆2,700億ウォンであった公社債発行の残高は5兆1,858億ウォンに膨れ上がった。それに、売上高も19年は2兆8,265億ウォン、当期純利益は8,634億ウォンを計上していたのに、20年には売上高が1兆1,574億ウォンと急減し、昨年の売上高は5,594億ウォンと大幅に減少、仁川国際空港は2年連続の赤字に転じた。

 そのような苦しいなかにあっても、社長は空港に欠かすことのできないセキュリティ要員のリストラをしなかった。航空旅行が回復し、正常に戻りつつある現在、仁川国際空港は外国人訪問客が大幅に増えても、余裕をもって対応できる状況である。

 コロナの感染拡大で、空港では出国手続き以外に検疫などの手続きが追加されて複雑になったにも関わらず、仁川国際空港の出入国手続きに要する時間は、以前とほとんど変わっていない。現在、仁川空港の出国にかかる平均時間は27分で、入国の平均時間も27分である。現在はPCR検査証明書を提出する義務もなくなったので、空港の手続きにかかる時間などは、ほぼコロナ前と変わらない。

(つづく)

(後)

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