統一教会被害者救済にブレーキをかける公明党(前)
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11月4日午後の衆議院厚生労働委員会において、立憲民主党の早稲田夕季議員から「ぜひ、外遊前に、被害者との面会を、ぜひ来週にも」と求められた岸田文雄首相は、「来週までに、できるだけ早い時期に調整したい」「どの方にどういったかたちでお会いするのか今調整している」と明言した。
11日から岸田首相は、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議でカンボジア、主要20カ国・地域(G20)首脳会議でインドネシアを訪問する。その前に岸田首相と被害者との面会が実現すれば、旧統一教会による献金問題や宗教2世の救済に向けた動きが進むことは間違いないだろう。
旧統一教会(世界平和統一家庭連合)と政治の関係が大きくクローズアップされ、霊感商法や献金の問題だけでなく、それまで取り上げられてこなかったいわゆる宗教2世の問題に関心が高まっている。
10月7日、日本外国特派員協会で、合同結婚式の末に生まれた2世の小川さゆりさん(仮名)が語った自身の生い立ちや体験は、多くの人の涙を誘った。その会見途中に旧統一教会側から送信されたファクスは、小川さんの両親の署名が入っており、会見の中止を求める内容だった。会見は生中継されており、旧統一教会の親子関係をも利用したやり方に非難の声が挙がった。
現在、旧統一教会の被害者救済に向けた自民、公明、立憲民主党、日本維新の会の4党による与野党協議が行われているが、被害者救済の法整備の必要性については、共有されたものの、高額献金の規制や家族による取り消し権、マインドコントロールの定義などで与野党間に隔たりがある。10月27日の与野党協議で、立憲と日本維新の会が共同提出した法案には、マインドコントロールなど悪質な手段による寄付を誘導することに対して、中止を求めることを可能と明記されていた。
今月1日に開かれた与野党協議会において、与党側が示した「論点」修正案には、マインドコントロールの文言はなかった。与党側は、消費者契約法の改正を優先し、新たな被害者救済法の今国会の成立は困難として先送りを立憲民主党と維新の会に提案した。当然の話ながら、野党は猛反発、立憲の安住淳国対委員長は2日、「支援団体を気にするのではなく、国民や被害を受けている人たちのために政治が前に進んだことを示さなければならない」と言い、維新の藤田文武幹事長も「公明が相当後ろ向きだと聞いている。支持母体を気にしているのではないか」と指摘した。
これは地方においても同様で、旧統一教会と政治家をめぐる問題や、被害者救済などを求める意見書案が全国の地方議会で提案されているが、福岡、熊本両市議会などにおいて、自民、公明などの会派の反対により、否決されている。福岡市議会では、10月11日に「旧統一教会と政治家との関係について調査し、宗教法人法に基づく断固とした対応を求める意見書案」が提案されたが、反対多数で否決された。
意見書案の内容は、「旧統一教会は、「霊感商法」や多額の献金の強要、集団結婚などで多数の被害者を出してきました。」
としたうえで、「政治家が、このような団体と癒着することは、国民の政治に対する不信感を増すことや、さらなる被害者を生み出すことにつながりかねません。」と指摘。「福岡市議会は、国会および政府が、旧統一教会と政治家との関係について調査したうえで、世界平和統一家庭連合に対し、宗教法人法に基づき断固とした対応を取られるよう強く要請します。」とする内容である。
この意見書案も、ある会派の関係者によると、事前の文案調整の段階で、自民党からは「意見書名に、旧統一教会を明記してほしくない」、公明党からは「霊感商法を明記してほしくない、本文には入れてもよい」といった声が出たため、最終的に折り合いがつかず、自公両会派の賛同がなかったという。旧統一教会問題に限らず「(思想的に異なる)共産党の提案は乗れない」(自民党市議)と、ほとんどの場合、共産党提案の意見書案を否決している。だが、自民党が統一教会との絶縁を宣言し、超党派で被害者救済法案が検討されており、反対するほうが、道理が通らない。
(つづく)
【近藤 将勝】
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