2024年07月16日( 火 )

旧統一教会被害救済新法、今国会提出へ

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国会 イメージ    岸田文雄首相は、旧統一教会をめぐる悪質な寄付要求行為の規制などを盛り込んだ新たな法案を今国会に提出する方針を固めた。8日夕方、岸田首相と公明党の山口那津男代表は首相官邸で会談し、新法について意見交換を行う。

 8日午前の記者会見において、松野官房長官は、「与野党協議での議論も参考としながら、将来に向けて被害の発生を防止し、救済を容易にするために必要な法制度の整備を進めていく考えで、速やかに検討を行い、準備ができたものから、早期に提出してまいりたい」と述べていた。

 与野党間の溝が埋まらないのは、自民党と連立を組む公明党の支持基盤である創価学会への配慮があるとみられる。宗教団体の主要な収入源である寄付行為自体を否定され、活動に支障をきたすことを危惧しているという。

 公明党の山口代表は、立憲民主党から求められていた与野党の党首会談について、「与野党4党の実務者による協議で真摯な議論が続いており、合意できたところから法案を順次出すという姿勢は確立されている。あえて党首会談をやらなければならないという状況ではない」と消極的な認識を示していた。

 現在、旧統一教会の被害者救済に向けた自民、公明、立憲民主党、日本維新の会の4党による与野党協議が行われているが、被害者救済の法整備の必要性については共有されたものの、高額献金の規制や家族による取り消し権、マインドコントロールの定義などで与野党間に依然として隔たりがある。今月1日の与野党協議において、与党側は、消費者契約法の改正を優先し、新たな被害者救済法の今国会での成立は困難として先送りを立憲民主党と維新の会に提案していた。

 一転、今国会における被害者救済法案提出を打ち出した背景には、国民世論の高まりがある。内閣支持率の続落は、旧統一教会に対する煮え切らない姿勢が大きな原因であり、政府として、国民を守る姿勢を示す必要があると判断したとみられる。

 旧統一教会をめぐっては、8日、文化庁の専門家会議において宗教法人法に基づく「質問権」を行使するための基準案も取りまとめられた。

 宗教法人法は「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした」場合に裁判所が解散を命令できると規定。質問権はその疑いがあれば行使可能で、オウム真理教による地下鉄サリン事件などが発生した経緯を踏まえ、1995年の法改正で盛り込まれた。

 専門家会議においては、宗教法人に所属する者が法令違反を繰り返した場合と被害が重大である場合とを行使対象とした基準案を文化庁が提示し、了承された。

 基準案は、風評や一方当事者の主張のみでは判断せず、(1)公的機関が法令違反や法的責任を認めた、(2)公的機関に具体的な資料や根拠に基づく情報が寄せられている、(3)これらに準じる客観的な資料、根拠があることを要件とする。

 今後、同庁は、具体的な質問項目などの検討に入り、専門家会議と同メンバーによる宗教法人審議会への諮問を経て、年内にも旧統一教会の調査を実施する。

【近藤 将勝】

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