『脊振の自然に魅せられて』紅葉の脊振を歩く
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11月のある日、「脊振の自然を愛する会」のM に電話を入れた。
「どうしています? 脊振に紅葉を見に行きませんか?」
Mは某歯科大の元教授で、私とは脊振の講演会が縁で付き合いが始まった。温厚な人柄で、会うと心が和む。これまでも道標のメンテナンスに何度も付き合ってくれた。熱心な仕事ぶりに、つい時間が過ぎてしまう。「Mさんと山へ行くと帰りが遅いね。」筆者の家内の言葉である。
電話でのMの返事は、80歳を超え脚も衰えコロナ禍もあり、家でゴロゴロしているとのことであった。そんなMに山行きを誘ったのである。
コロナ禍が始まる前、彼と歩いた脊振山〜蛤岳周辺の紅葉が忘れられない。静かな山を歩き、ともにカメラ好きの2人は夢中になってファインダーの先を紅葉に向けていた。
また歩きたい。そんな思いからMを誘った。
脊振山頂駐車場へ着くと、階段を下り蛤岳方面の九州自然歩道へ足を進めた。美しい紅葉の時期は3日程過ぎているかもしれない。けれどまだ紅葉は見られるはず。すばらしい紅葉との出会いに胸を弾ませて山道を進む。
航空自衛隊脊振駐屯地裏の山道は脊振で最も紅葉が美しい。天気が良ければブナやイタヤカエデの紅葉が青空のなかに映える。この日は天気も良く早朝であり、朝日が紅葉の木々の間から差して眩しかった。朝露が登山道のミヤコザサを濡らし、紅葉を一層映えさせている。赤や黄色の色彩に囲まれて紅葉に彩られた登山道は、我々を自然界に閉じ込めていた。時折、野鳥の囀りがより一層静けさを演出してくる。
古くなって朽ちた木道は真新しい木道になっていた。脊振の九州自然歩道は昨年から佐賀県が新しく作り直している。道標も新しく生まれ変わっていた。我々が12年前に立てた手づくりの道標とは比べものにならない立派なもので、有に50年は風雨に耐えられるプロの仕業である。
紅葉に感動し撮影も一段落したので、真新しい木道に腰を下ろしてコーヒーブレイクとした。彼のために私が持参した保温ポットのコーヒーを紙コップに注ぐと湯気が出た。筆者はマイコップ持参である。サーモス製の保温ポットは歴史があり山男たちはテルモスと呼んで冬山ではよく利用している。保温時間が長いのだ。筆者も20年は利用している。
それぞれコーヒーを飲みながら、アンパンやクロワッサンを頬張り談笑した。しばらくすると、平日なのに夫婦連れや1人歩きの山好きが蛤岳方面へ通り過ぎて行った。比較的歩く人が少なかったこのルートも、筆者たちの山雑誌の掲載記事や登山地図アプリの普及で歩く人も増えてきたようだ。
紅葉に囲まれた木道でしばらく休んだのち、駐車場へと引き返した。帰りの紅葉の景色は目線が違い、また格段と美しく見える。
「来年も、またおいでね」と、紅葉の木々が語りかけてきた。
後日、お互いの写真を交換した。
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行関連キーワード
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