2024年07月16日( 火 )

厚労省・文科省、旧統一教会に再質問へ

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国会 イメージ    旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の被害者救済法案は8日、衆院本会議で可決され、今国会で成立する見通しだが、旧統一教会に対する国の調査に新たな動きがあった。

 11月24日「厚生労働・文部科学両省が旧統一教会に書面を送付」で報じた、旧統一教会による養子縁組のあっせんについて、厚生労働省は再度質問書を送付する。

 これは、加藤勝信厚生労働大臣が9日の閣議後の記者会見で明らかにしたもの。厚労省は、先月22日に東京都と連名で養子縁組に関する質問書を教団本部に送付していた。質問書は、教団内で行われた養子縁組の件数や、教団の組織的関与、金銭授受などを質す内容で、12月5日までに回答を行うよう求めていた。

 その後、教団関係の出版社が発行した信徒向けの冊子に教団の組織的関与をうかがわせる記述があることが判明した。

 冊子の名称は「神の子を迎える喜び 妊娠・出産・育児(光言社)」。

 光言社は、1983年の設立以来、統一教会関連の書籍を多数出版しているが、安倍元総理銃撃事件以降の社会的な統一教会批判の高まりに対し、YouTubeチャンネル「旧統一教会報道に対する我々の視点」を開設。教団幹部や教団の友好団体、国際勝共連合の幹部を登場させ、旧統一教会の問題に取り組んできた全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連、)や日本共産党、一部メディアなどを批判する動画を制作・配信している。

 冊子には「必ず日本の家庭連合本部の家庭教育局に報告が必要です」「『養子を授かりたい』と希望している家庭、および養子を捧げたいと決意している家庭がありましたら、所属教会の家庭部長にぜひ相談してください」などの記述があり、厚労省は、こうした点を重視しているとみられる。

 2018年に施行された養子縁組あっせん法は、あっせんを反復して継続的に行う場合は、都道府県知事の許可を受けることを義務づけている。違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科す。

 厚生労働省は、9日中に教団に対し養子縁組あっせん法の順守を求める文書を送付する。再質問書への回答も踏まえ、過去の養子縁組に同法違反の可能性があるか精査を行い、刑事告発も含めて対応を検討する。

 また文化庁は、旧統一教会に対し、宗教法人法上の「質問権」を再度行使し、追加で調査する方針を固めた。14日にも宗教法人審議会を開き、質問項目などについて諮問する方針。

 これに関連して、永岡圭子文部科学大臣は、閣議後の記者会見で「これまで『全国霊感商法対策弁護士連絡会』に加え、宗教2世の方など被害者からも意見をうかがっている」と、統一教会の信仰を持つ親によって信仰を強要され、多額の献金で生活困窮した宗教2世の人たちからのヒアリングを行っていることを明らかにした。

 明日にも可決・成立する被害救済法案について、旧統一教会元2世で統一教会解散署名呼びかけ人でもある井田雫さんは、Net IB Newsの取材に対し、次のようにコメントした。
「寄付を勧誘する際の配慮義務に関しては、本人が目覚めないと効力がないので、家族がそこに介入できるようにしてほしいです。民法上の債権者代位権に関しては『扶養』の壁を外してほしいです。被害に遭った家族がまったく救われない状況になるような法案では、やはり統一教会にお墨付きを与えてしまいます」

 政府や政治家は、この声をどのように受け止めるのか。法案成立で幕引きしようというのならば、国民への裏切りに他ならない。

 大詰めを迎えた統一教会被害者救済法案はもちろん、厚労省・文科省による一連の調査の行方は、全国で多くの被害者を出してきた旧統一教会の反社会的な活動の是正と被害救済に向けた大きな一歩になることが期待されている。

【近藤 将勝】

:全国弁連
全国霊感商法対策弁護士連絡会は、旧・統一協会(現・家庭連合)による「霊感商法被害」の根絶と「被害者の救済」を目的として結成された弁護士団体。 ^

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