中国半導体の自立けん制 米、日、台連携強化と韓国の葛藤(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏デジタル化は時代の潮流
デジタル化は世界の大きな潮流だ。社会のあらゆる製品・サービスがデジタル化されるにつれ、以前と比べ、私たちは驚くほど便利な生活が送れるようになった。
デジタル化の潮流を支えている重要な部品が半導体だ。家電製品、インターネットサービスはもとより、交通、医療、金融などの分野において、デジタル化が進めば進むほど、半導体は欠かせなくなる。そして、それは私たちの生命と財産を支える基礎になる。半導体は「産業のコメ」と言われ、情報の操作や処理を担う部品として、何十年にもわたって、ハイテク産業の進歩を加速させてきた。
最近、半導体の重要性が再認識されようとしている。なぜかというと、IoTや5G、自動運転などの第4次産業革命が加速度的に進めば進むほど、半導体の需要増加が予想されるし、半導体が産業競争力を左右する決め手になるからだ。
半導体不足で分かったこと
半導体の重要性が再認識されるようになったのは、昨年発生した半導体不足がきっかけである。深刻な半導体不足は、スマートフォンやPCの心臓部である高性能チップのみならず、自動車から家電、ゲーム機まで、さまざまな商品の供給停滞を招いている。
従来の自動車には100を超えるチップが搭載されていたが、電気自動車となると、チップの数は10倍の1,000を超える。このため、半導体不足が発生すると、メーカーは生産停止に追い込まれてしまう。半導体不足で影響を受けるのは自動車業界にとどまらない。産業用ロボットや医療機器など、あらゆるものが電子化されているため、チップ不足の影響は広範囲におよぶ。
半導体は第4次産業革命の要
それに加えて、経済・軍事競争において競争力の源泉となっているAIや5G通信、ロボット工学などの進歩において、最先端のチップは欠かせない。半導体の安定的な供給網を確保することは、その国の安全保障にも関わると再認識されており、半導体をめぐる覇権競争は激しさを増している。
とくに米国は自国内では製造せず、ソフトウェア、金融などを中心に産業を育成してきたが、台頭する中国に半導体分野で負けた場合、覇権そのものが危うくなるかもしれないという危機感を抱いている。
半導体をめぐる米中の対立構造
半導体の製造には莫大な投資が必要なだけでなく、最先端の技術が必要なため、ファウンドリという製造の受託を専門にする企業・サービスが存在する。その代表的な企業といえば、世界シェアの半分以上を占めている台湾のTSMCである。
そのほか設計、製造装置および素材に分けることができる。米国は今まで設計と製造装置に強く、設計の世界シェアは6割ほど、アップル、クアルコム、エヌビディア、AMDなどは米国の企業である。もちろんインテルも半導体の製造はしているものの、TSMCとサムスンに後れをとっているのが現状だ。しかし、今回のコロナのパンデミックをきっかけに発生した半導体不足と中国の半導体への集中投資、また台湾有事などを想定した場合、自国内に半導体のサプライチェーンを確保することがどれだけ重要であるかということに気づき、米国は半導体産業を躍進させるため、国を挙げて注力している。もし、台湾有事があれば、世界のサプライチェーンはストップし、産業に甚大な打撃を与えることが分かったからだ。そのため最先端チップ生産の支配権をめぐり、2つの超大国による激しい対立構造が生じている。
(つづく)
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