中国半導体の自立けん制 米、日、台連携強化と韓国の葛藤(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏半導体をめぐる各国の動き
半導体産業に力を入れているのは米国だけではない。多くの国が、自国の生産能力を強化すべく、巨額の資金を投入しようとしている。
米国は製造技術をもっている台湾のTSMCに米国に工場を建設するよう要請している。TSMCも米国の要請に応じて、当初予定の3倍にあたる400億ドルを米国に投資すると発表。台湾にとっては、仮に台湾有事となっても、半導体がアメリカで生産されることで、リスクを分散させることができる。さらにTSMCは米国だけでなく、製造装置や素材に強い日本とも協力関係を築こうとしている。
そのような状況下、日本の動きも活発になっている。1980年代、日本は世界の半導体市場において約4割のシェアを占めており、世界的な競争力を有していた。だが、この30年で日本のシェアは凋落、2019年度には1割程度までシェアが低下した。時代はメインフレームからパソコンの時代に流れが変わったのに、時代の変化を読み取れなかったため、日本の半導体は凋落してしまったのである。
半導体復活を狙っている日本は、半導体大手のTSMCを熊本に誘致し、ソニー、デンソーとの合弁で子会社「ジャパン・アドバンスト・セミコンダクター・マニュファクチャリング(JASM)」を設立、24年に新工場の操業を予定している。アップルとの連携はもちろん、米国のIBMと27年まで2ナノのプロセスを共同開発することにも合意している。米国は中国に頼らずに半導体を確保するサプライチェーン(供給網)をつくるよう日本に協力を求めているわけだ。
一方、中国政府は半導体生産の自給自足を目指し、今後10年間で1,500億ドル(約17兆円)を投じることを表明している。ここからは中国に設備投資する半導体企業を支援し、米国の半導体規制を乗り越えようとする意図が見える。
韓国のジレンマ
中国政府はサムスンやSKハイニックスなどの韓国企業に対し、中国での現地生産を呼びかけている。サムスンやSKハイニックスにしてみれば、中国は最大の輸出先であり、すでに中国現地に相当額の投資をして工場を運営しているため、ジレンマに陥っている。
韓国企業が米国の要請に従って中国をけん制することに同調した場合、中国の反発を招き、中国ビジネスは甚大な打撃を受けることを覚悟しないといけないし、そのような決定は韓国経済にも大きな痛手となるだろう。逆に中国に投資を増やした場合、米国との関係が悪化し、最先端の装置と技術へのアクセスができなくなり、半導体技術の発展に支障を来たす恐れがある。米国も韓国のこのような状況を考慮し、まず日本や台湾との関係強化に取り組んでいるようだ。
(了)
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