『脊振の自然に魅せられて』道標メンテナンス(後)
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登山道の中間地点の右俣と本沢の合流点で休憩した。比較的広い場所になっている。いつもの休憩ポイントである。今年5月に右俣の沢を後輩たちと葉ワサビを取りに入り、さらに藪漕ぎをして気象レーダーまで山の斜面を登った場所である。この合流ポイントにも小型道標を設置している。
この日は筆者のみでメンテナンス作業にきた。後輩を誘うほどの作業ではないと思ったからだ。平らな岩に腰を下ろし、愛用コップにコンデンスミルクをチューブから絞り出した。保温ポットからカップに湯を注ぐ。冬場はカロリーも比較的高いコンデンスミルクを愛用している。お湯がなくてもチューブを口に入れカロリーを補給することもできる。暖かいコンデンスミルクといつもの小粒のアンパンを頬張る。沢の音も静かだ、登山者は1人も来ていない。こんな時間に筆者は生命を感じる。もうしばらくすると藪椿が咲き始める。沢の上に真っ赤な藪椿が咲き時おり風に揺れるようになる。筆者は、この真っ赤な椿の光景を目に焼き付けている。
小型道標の結束バンドが外れ掛かったポイントに着いた。ここは沢の渡渉をする地点で、登山者に分かりやすいように小型道標を取り付けている。外れかけた結束バンドを外し、道標を沢につけタワシで洗った。時とともに道標も苔で汚れてくる。洗うと道標が生き返った。新しい結束バンドを二重にして固定した。90本も取り付けてきたので、手慣れた作業で短時間のうちに終了した。目立つ様に、ここにも灌木に蛍光テープを巻いた。この蛍光テープは必要最低限しか巻かない。山が汚れ自然に優しくないからである。最近、やたら赤テープを巻いたり下げたり、また道標や行政の山火事防止の看板に落書きも目立つようになった。心無い仕業である。必要に応じて仲間と落書きを消している。役に立つと思えるテープは残している。登山者が増え、排尿、排便のちり紙も増え山が汚れてきている。せめて地面に埋めて欲しい。
作業を終え上方に目を向けると、倒木に白いものが付いていた。雪である。昨日降ったのであろうか。脊振の初冠雪である。スマホで倒木に積もった雪を何枚か撮影した。
下りを急いだ。登山道を避け大きな沢を渡り、林道を歩いてみた。膝に痛みがあり、下りの山道で膝に負担を掛けないためである。すると靴の踵に違和感がし、泥が詰まったように感じた。靴底を持ち上げてみると、ビブラムの靴底が剥がれかけていた。購入してから時間も経つので、接着剤が劣化していたのだ。道標を固定した結束バンドで靴底を固定して、車を止めた場所まで30分歩いた。仲間が山で靴底を外したことはあるが、筆者は初めてである。
軽いシューズは底がすり減り、下り道で滑ることが多くなったため処分することにした。これで、今年は山靴を2足は履き潰した。残りあと1足、硬い合成繊維製の山靴が自宅にある。しばらくは節約のためにこの登山靴を履くことにした。7年前に北アルプス縦走した靴である。あまり履いてないのできれいである。
帰宅すると女性の山友から、ラインで雪景色のなかの水玉模様の写真が送られてきていた。
もう山は冬である。
(了)
2022年12月21日
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行関連キーワード
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