『脊振の自然に魅せられて』「大雪の脊振を楽しむ」
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昨年12月初め、重い冬タイヤを自宅マンションの倉庫から下ろして車に積み、カーショップでタイヤ交換した。重くてインチ数の大きいホイールセットの冬タイヤを車に乗せるのは、一苦労だ。冬タイヤ交換は腰の持病と体力的に負担が大きいこと、それと7年目となった冬タイヤの劣化もあり、雪道を車で走るのは今シーズンが最後と決めた。
2022年12月24日 寒波に見舞われた日本列島。クリスマス寒波として報道された。
脊振も寒波を受け、大雪になっていた。登山アプリで脊振山系の登山情報を確認すると、積雪登山をした記事が2件記載されていた。記事を確認すると、いつも歩く脊振山直下の車谷ルートは膝下まで雪が積もった山道になっていた。
12月25日(日)。椎原バス停から板谷峠経由の県道135号線へ愛車で向かった。通りかかた椎原バス停に登山者らしき人たちを見かけたが、そのなかに、なじみの登山ショップのU会長がいた。
「どこまでですか?」と車の窓越しに声をかけた。「某カルチャー教室の登山教室で矢筈峠まで」とのこと。「私も板谷峠経由で脊振へ上がります」と伝えた。
板谷集落へ続く県道135号の山道を走ると、道路も雪混じりになってきた。この日は気温が高く、標高の低い場所は雪が溶けてシャーベット状になっていた。
タイヤの滑り具合を確認しながら、山道のカーブを何度も曲がる。標高が高くなるにつれ積雪が増えてきた。板谷集落の中間地点までくると、いきなり雪で覆われた山道となっていた。
冬タイヤも古いので、グリップ力が衰えている。「これは無理だ」とUターンすることにした。生活道路の県道は、車1台分しか除雪していないのでUターンはできない。安全にUターンできる場所まで、登ってきた坂道をバックで下った。
直線道路まで下り、Uターンを開始する。道幅が足りず、車は横向きになって道を塞いだ状態になってしまう。車の後部は雪に50㎝ほど埋まっている。積もった雪に車をバックさせ、後部を雪に突っ込む。グーグーと車の後部が雪を押す音が聞こえてくる。1mほど車の後部を雪に突っ込んだ。これくらいだと車の後部も損傷がないと判断する。
登ってきた方向へ無事Uターンを終え、坂道をゆっくり下った。すると、1台のバイクが雪道を下ってきて、途中の林道の分岐で停まった。「今から林道へ入りますか」と声をかけた。
「無理です」と、雪道走行を楽しむバイクだった。筆者も椎原登山口へ続く雪道を走ってみようかと一瞬思ったが、30㎝ほどの積雪を見て、これは無理だと筆者もあきらめ椎原バス停へ向かった。
先ほど会ったU会長のグループは登山へ出掛けており、バス停は無人だった。駐車スペースに5、6台の車が停まっていたところからすると、登山参加者はかなりの人数であったようだ。
三瀬峠有料トンネルを利用し、佐賀県の三瀬村から脊振山へ向かうことにした。有料トンネルを抜けると、三瀬村は一面雪景色の里山となっていた。対向車に気をつけながら脊振山へ続く広域林道へ進む。
脊振神社を通りかかると、鳥居に正月用のしめ縄をつけている所であった。ここから脊振山へは車で15分ほどである。
登り坂を走るにつれ、道はすっかり純白の山道となってきた。愛車での雪道走行は何年ぶりだろう。佐賀県にある天山スキー場へ通った頃を思い出す。大雪の広域林道を、何度も快適に駆け抜けたものだ。天山スキー場は昨年営業を中止している。
車を停め、動画撮影用の小型カメラをダッシュボードに設置する。フロントガラス越しに走行光景を撮影開始する。目の前には広域林道も樹木も白銀の世界が広がっていた。動画のモニターを見ると雪景色がどんどん流れて行く。筆者の体は爽快感で溢れていた。
福岡市の自宅のから1時間で雪の別世界が展開する。脊振はなんと贅沢な所であろう。
脊振山直下にある航空自衛隊脊振基地のゲートが近付いてきた。右へハンドルを切ると脊振山頂駐車場である。この日、早朝は雨、昼近くから天気が回復するという予報だった。
11時前と予定よりも遅くなったにもかかわらず、この日は筆者が一番乗りだった。駐車場は除雪され、端は除雪された雪がうずたかく積み上げられていた。車の温度計を見ると、外気温は1℃であった。風もなく穏やかで、標高1,000mにしては気温が高い。
長靴に履き替え、10m下にあるキャンプ場のグラウンドに降りる準備をした。外へ出ると、大きなザックを担いだ若い男性登山者を見かけた。声を掛けると、キャンプ場にテントを張って泊まったとのことであった。登山ルートは椎原バス停から車谷~矢筈峠、筆者がよく歩くコースだ。普段は3時間で歩くコースを、大雪のため8時間近くかかったとか。深い雪にルートを見失い、我々が立てた道標が役に立ったと感謝していた。「佐賀県方面へ下る」と、青年は重そうなザックを背にして雪道を去って行った。
九州自然歩道の山道に足を踏み入れた。前日に登山者が歩いた跡に新雪が降り、深い雪道となっていた。足を入れるとザクザクと雪を踏みしめる音がした。どの樹木も雪を被り、幻想的な雪景色をつくっていた。木々の枝は積もった雪に丸みを帯びて美しい。目に焼き付くほど、この雪景色を眺めた。手袋を外し、指先の冷たさも忘れ、カメラのシャッターを切る。シャッター音が静けさのなかを響いていく。動画カメラ用の一脚を雪中に立て、同時進行で動画を撮影した。遊歩道を100mほど歩き、雪景色を堪能した。そして30分ほどで駐車場に引き返した。
駐車場に戻ると、車が数台登ってきていた。キャンプ場で雪合戦をする親子3人やソリ遊びをする親子などがいた。雪の脊振山は、子どもたちにとっても楽しい場所となったことだろう。
風もないので防寒着も脱ぎ、車のトランクから携帯の折りたたみイスを取り出し、除雪された雪の上に椅子を立てた。コップにコンデンスミルクを入れ、保温ポットの湯を注ぎホットミルクで一息。贅沢な時間を味わった。
2023年1月7日
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行関連キーワード
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