11年ぶりの黒字転換に沸く韓国の造船3社(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏環境規制と韓国企業の技術力
環境規制が強化されたことで、登場したのがLNG船であった。その次に造船分野で環境対策として注目が集まっているのは、メタノールを燃料に使う船舶である。メタノールは既存の燃料に比べ硫黄酸化物(SOx)、 窒素酸化物(NOx)、 その他温室ガスなど、環境汚染を大幅に減らすことができるからだ。メタノール船の場合、韓国企業と中国企業で競合しているのが現状だ。クラクソンリサーチによると、2023年2月までに合計99隻のメタノール船が発注された。そのなかで半分の54隻をHD韓国造船海洋が受注している。その他にもアンモニア、水素などを燃料にする船舶が将来発注される見通しである。韓国の造船業界は中国と価格で競争をしていては勝ち目がないので、環境規制に対応した付加価値の高い船舶の建造に力を入れ、技術開発と差別化に傾注している。韓国の造船業界は厳しい経営環境のなかでも、あきらめず弛まぬ努力を重ね、それが実を結び、今回11年ぶりの黒字転換となっている。
しかし、課題も山積
貿易協会の統計によると、造船業界に従事している人数は、14年20万名であったが、多くの人が業界を離れたことによって、昨年は約9万名で、半分以下となっている。現在不足している人材は年間1万4,000人であるが、27年には人材不足がもっと深刻化し、年間4万3千人に上ることが予想されている。よって人材不足こそ造船業界の一番の悩みの種だ。
受注をしたのは良いものの、人材不足で納期を守ることができなくなった場合、巨額のペナルティを支払う羽目になるかもしれない。とくに、熟練工の高齢化が進んでいるなか、熟練工になりそうな若い人が足りないのが現実である。それを解決する方法として、外国人労働者で問題を解決しようとしているが、言葉の問題や熟練度の問題で、現実的な解決策になっていない。
韓国の造船業界は生産性を上げるため、船舶をブロック化してブロックをつなぐだけで、船舶の建造ができるようにしたり、溶接などもロボットを使って自動化するなり、省人化のための努力をしている。しかし、それでも人材不足の解決の糸口は見つかっていない。
また非正規社員や下請業者が増えたことも造船業界にとっては昔と比べると大きな変化である。不況のなかで生き残るための方法として、大手造船各社は固定費の支出を減らす方法を選択した。1990年代には下請の比率が21%であったが、30年が経過した現在は下請の比率が69%に上昇している。10名中7名は下請という話だ。下請になると、賃金も低く、若い人たちが造船業界に就職しようとしない理由ともなっている。造船業界の仕事はきつい労働に加え、寮生活をしながら集団で何かをする時間が多く、プライベートな時間があまりとれないことも若者に敬遠される理由であるようだ。
ある専門家によると、「造船産業は韓国が世界的に力を発揮できる分野の1つであり、今後老朽化した船舶の交替時期も控えているので、造船産業は車載電池産業に負けないほど、将来のポテンシャルは大きい」と指摘する。今後中国の猛追をかわすことができるのか、それとも日本の造船産業が没落したような二の轍を踏むことになるのか、興味津々である。
(了)
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