急速充電インフラ事業をめぐる激しい覇権争い(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏乱立する充電規格
EVシフトが進むことで、世界的に導入が急がれているのが急速充電器だ。充電器を利用した充電時間は、充電器のスペックばかりではなく、EVのスペックなどによっても左右される。
充電器は大きく普通充電器と急速充電器に分けられる。普通充電器というのは、家庭を中心にショッピングセンターやホテルなどに設置されたもので、出力は3kW~10kW程度で、充電にかなり時間がかかるものだ。一方急速充電器とのいうのは、最近欧州で350kW以上の充電出力を発揮できるものもあるくらいで、文字通り急速に充電できるものだ。しかし、充電器がいくら高出力であっても、EVのスペックが仮に100kWくらいの充電しか許容できなければ、充電器はその性能をフルに発揮することができず、出力に制限が出てくる。また、充電する際に、充電残量が多くなればなるほど、充電スピードが徐々に低下していくため、実際の充電時間は単純計算で割り出された時間よりも余計にかかる場合が多い。
さらに、急速充電器の規格は世界的にいくつもあって、まだ統一されていないのが現状だ。北米市場と韓国では、CCSタイプが広く使われている。日本では「チャデモ(CHAdeMO)」という別の充電規格が使われていて、中国は中国内で販売されるすべてのEVにGB/T規格を使うように強制している。加えて、世界一のEVメーカーであるテスラも、別の規格であるNACSという規格を使っている。
今後大きな成長が見込まれる急速充電市場の規格をめぐって、覇権争いが勃発している。規格によって差込口の形状ももちろん違う。CCS規格やチャデモ規格の短所は充電ケーブルが太くて重いことだ。一方、テスラ規格の充電ケーブルは軽量で、250kW以上の急速充電に対応できている。中国のGB/T規格は設置費用が安いことがメリットであるものの、充電スピードが遅く、普通充電と急速充電の充電口が別であることも短所だ。EVが普及すればするほど、充電インフラの拡大は求められる。ドイツのコンサルティングファームであるローランドベルガーによると、充電インフラ市場の規模は23年が550億ドルで、2030年には3,250億ドルに成長するという。
テスラは充電事業を制覇するのか
テスラは自社EVのために独自に開発した充電規格「TPC(Tesla Proprietary Charging)」というものがある。テスラはこの規格を2012年発売したモデルSに採用を開始し、同時にこの規格を採用した独自の急速充電ネットワークである「スーパーチャージャー」の設置を開始していた。本拠地の北米を皮切りに、「スーパーチャージャー」はグローバル展開に乗り出している。今はテスラの充電規格はむしろ「スーパーチャージャー」と言った方がわかりやすくなっている。
(つづく)
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