2024年12月23日( 月 )

サムスン電子に何か起こっているのか(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

 エヌビディア社のGPUに搭載される「HBM(広帯域メモリ)」と呼ばれる次世代DRAMの需要が急増した。サムスン電子はHBMにおいて、その開発・生産などで後手に回り、「気が付いたときにはSKに特許でがんじがらめにされていた」という。応用製品の競争力のベースになる汎用DRAMにおいても、同一現象が起こっている。

 最新規格のDRAMであるDDR5に対しても、市場では "SKハイニックスのDDR5の性能がサムスン製より優れている“という評価だ。少し前までは想像すらできない話である。サムスン電子はリーダの立場からSKハイニックスを追いかける格好となった。

スマホシェア世界首位もアップルに譲る

iPhone イメージ    サムスンは長年にわたり、スマートフォンの販売台数で世界首位の座にあった。しかし、23年10~12月期は米アップルに首位の座を譲った。米調査会社IDCのまとめでは、2023年の世界のスマートフォン市場で、米アップルが出荷数ベースで史上最高のシェアを獲得し、通年のシェアで初めて首位に立った。韓国サムスン電子が2010年からシェア首位を保ち続けていたが、アップルに譲ったのだ。IDCによれば、23年のスマートフォンの世界市場はアップルが20.1%のシェアで首位に立った。サムスンは19.4%だった。

 サムスン電子の収益の両輪は半導体とスマホであるが、スマホの世界首位の座からの転落もショックであるが、半導体も2年ぶりにインテルに1位の座を渡している。米Gartner(ガートナー)の2024年1月22日の発表によると、今回、米インテルが首位に返り咲いたのは3年振りだ。首位だったサムスン電子は、メモリ不況の影響をまともに受けた。Gartnerによれば、2023年の半導体世界市場は11.1%縮小して、約5,330億米ドル(約78兆8,000億円)だった。

 サムスン電子が首位から引きずり下ろされたメモリ市場は、半導体市場全体より大きく縮小した。前年比で世界のメモリ売上高は前年比37%も減少した。メモリ市場が大きく減少した影響を受け、サムスン電子は半導体売上高世界ランキングにおいて2位に順位を落とした。

凋落の背景には

 背景にはいくつかの要因がある。一番影響を受けたのが主力のメモリ事業の需要低迷。加えて、スマートフォンなど、これまでのサムスン電子の成長を支えてきたITデバイスの需要も減少したのが原因だろう。それに、需要の減少だけでなく、サムスン電子は中国企業の追い上げにも直面している。中国製スマホの機能はがサムスン製とほぼ同じで、低価格製品で市場を揺さぶっている。

 有機ELパネル、家電製品においても、中国企業は急速に成長を遂げ、サムスン電子の顧客を奪い合う状況となり、サムスン電子が圧倒的に優位を占める分野がどんどん減ってきている。景気が低迷すればするほど、顧客は価格に敏感になり、少しでも価格の安い中国製品を選ぶことになり、価格競争が激化することになるだろう。

 このような危機的な状況のなか、サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)会長は5日、係争中だった「経営権違法承継」事件の一審で無罪を言い渡されることによって、経営に専念できるようになった。サムスン電子の李会長のリーダシップの下、サムスンは再生するのか、それとも凋落の道を歩むことになるのか、注目されている。

(了)

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