2024年07月16日( 火 )

半導体関連企業進出に沸く大牟田・荒尾 再生は古賀氏が進めた道路整備にあり(前)

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 「炭鉱城下町」として全国に知られた福岡県大牟田市と、熊本県荒尾市。両市は、炭鉱閉山後、人口減少など深刻な状況に陥った。台湾積体電路製造(TSMC)の熊本進出により、にわかに工業用地として両市への注目が集まっているが、その背景に大物政治家が進めたインフラ整備があるという。

岸田派から古賀氏への裏金疑惑

 政権交代を望む国民の声は日に日に高まりつつある。時事通信社の5月世論調査によると、岸田文雄首相に「いつまで続けてほしいのか」という質問に対して、自民党総裁任期が終わる9月以降も続けてほしいとの回答は、6.0%であったという。

 逆にそれ以外の回答はどうだったのか。「すぐ交代」が27.4%、今国会の閉会予定の「6月」は15.7%、党総裁任期が満了する「9月」が38.2%で、8割以上が総裁選前に岸田政権の退陣を求めている。

 ところが国民の声とは裏腹に、自民党内では一向に岸田おろしは行われず、国会会期末の衆議院解散や内閣改造の噂ばかりが出てくる。「崖っぷち」の岸田首相に「延命の知恵」を授けたといわれているのが、前宏池会会長の古賀誠元自民党幹事長である。

 古賀氏は自民党内においてハト派とされ、福岡県内を中心に平和憲法を守る講演会を開催するなど、右寄り路線の強い安倍晋三元首相や麻生太郎副総裁とは国家観において真っ向から対峙する。一方で現職のころからカネにまつわる問題が取りざたされてきた。

 最近の話でいえば、岸田派が派閥パーティー収入の「3,059万円」を政治資金収支報告書に記載していなかった容疑で、東京地検特捜部は、同派の元会計責任者を1月19日に略式起訴した。岸田派が報告書を訂正した6日後、古賀氏が代表を務める政治団体「古賀誠筑後誠山会」が政治資金収支報告書を訂正した。

 岸田派の収入の不記載の差額と、筑後誠山会の訂正した額が558万円と一致し、キックバックではないかという指摘があった。岸田派の事務方は、その多くが前会長・古賀氏の影響下にあるといわれる。「裏金」疑惑は、一部週刊誌が報じ、国会で共産党が取り上げたものの、いつのまにかうやむやになった。

 古賀氏の後継は、秘書を務めた藤丸敏衆議院議員だが、引退後も毎年のように藤丸氏とともに福岡市内のホテルにおいて、政治資金パーティーを開催してきた。古賀氏が、全国道路利用者会議会長を務める関係で、建設業界への影響力は衰えておらず、毎回盛況だという。

TSMC進出で活気づく大牟田・荒尾

三井三池炭鉱 イメージ    古賀氏のかつての選挙区である福岡県南地域は、人口減少や商店街の衰退など課題が多い。とくに福岡県大牟田市と隣接する熊本県荒尾市は、日本の近代化を支えた三井三池炭鉱があり、最盛期の1950年代は両市で30万人近い人口を有し、近隣からも人口が流入し、街は繁栄していた。その後、石油へのエネルギー転換が進み、鉱山は閉山となり、現在、両市の人口は往時の半分の約15万人にまで減少した。しかし、両市において、起死回生の動きが出始めた。半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本に進出し、大牟田・荒尾両市は、工業用地の有望な地域として再び台頭してきたのである。

 2023年7月、「荒尾市都市計画審議会」は、炭鉱住宅跡地などの荒尾市内の土地3カ所の用途地域見直しを承認し、8月、工場進出可能な工業用地に変更。半導体関連の第一電材(株)と日本精密電子(株)が土地を購入した。

 荒尾市は、TSMCが進出した熊本県菊陽町からそう遠くなく、九州自動車道やJR鹿児島線など交通アクセスの利便性は、企業側にとって魅力だ。大企業が少ない荒尾市にとっては、有望な雇用先となる。

 そもそも、地方に住む人は、通勤に長い時間をかけるより、自家用車で通勤しやすい自宅に近い場所を選ぶ傾向がある。企業側・行政側両者の思惑が一致したかたちだ。

(つづく)

【近藤将勝】

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