2024年07月24日( 水 )

TSMC、時価総額でアジア1位に(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

ファウンドリビジネスとTSMCの強み

 ファウンドリというビジネスはTSMC創業者のモリス・チャン(張忠謀)が発展させたビジネスモデルだ。半導体が複雑になればなるほど、間違いなく水平分業になると予測していたが、それが見事に的中したのだ。

 半導体の製造と開発・設計を分離することで、1社が背負う投資リスクを減らすという考え方だが、時代は見事にモリス・チャンの目論見通りになり、同社の1人勝ちが続いている。とくに最先端の難度の高いチップになると、TSMC以外に頼むところがない。その結果、受託製造だが、営業利益率などもかなり高い数字となっている。

半導体 イメージ    それでは、TSMCの強みを見てみよう。同社は1987年に設立された企業で、設立から40年近い歴史がある。一方、ファウンドリシェア2位の韓国サムスン電子は、ファウンドリビジネスに参入して10年くらいしか経っていない。

 ファウンドリビジネスは顧客との関係が最も大事だが、TSMCは顧客との良い関係が維持されていて、サムスンは、なかなか食い込む余地がないというのが現実だ。それに、技術的にもまだサムスンよりTSMCが優位にあるようだ。

 具体的に5ナノで両社が競っているときに、両社の製品を比較したところ、TSMCのトランジスタは密度を1.8倍向上させ、面積は45%減少させた反面、サムスン電子は密度は1.33倍向上させ、面積は25%減少させるにすぎなかったという。このような結果が出ると、顧客はわざわざ取引先を変える必要はない。

 さらに、7ナノ以下の微細工程では、ASML(オランダ)の製造装置であるEUV露光装置が必須になるが、TSMCは全世界のEUV露光装置の7割も保有している反面、サムスン電子はTSMC保有の3割くらいしか保有しておらず、装置においても、TSMCは一歩リードをしている。

 このような状況下、市場シェアにおいても同社の躍進は明らかだ。昨年の第4四半期の世界ファウンドリ市場のシェアは1位がTSMCで、前年同期(57.9%)より3.3%ポイント上昇の61.2%を記録した。2位サムスン電子のシェアは、第3四半期の12.4%から11.3%となり、1.1%ポイントシェアを落としている。

 シェアだけでなく、営業利益をみても、サムスン電子は2018年の営業利益が44.5兆ウォンで、TSMCの14兆ウォンの3倍くらいであったが、22年TSMCは47.6兆ウォンである反面、サムスン電子は24兆ウォンに過ぎなかった。

 TSMCはファウンドリ事業だけをやっているが、サムスンはファウンドリ事業以外にメモリ事業もやっている。サムスン電子はシェアの差を縮めるため、努力しているが、差は縮まるどころか、広がっている。

 米国はTSMCの1人勝ちは地政学的にリスクがあるとして、米国国内にも半導体工場を建設しようとしている。今後、半導体業界がどう推移するのか目が離せない。

(了)

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