福岡城の天守復元に向けた今後の焦点(前) 懇談会の提言
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20日、福岡商工会議所が事務局を務める「福岡城天守の復元的整備を考える懇談会(ふくふく懇)」(山中伸一座長)の記者会見が行われた。会見では、同懇談会の今までの活動報告として「福岡城天守の復元的整備について―報告と提言―」が示された。報告と提言は来年、福岡市の高島市長あてに提出される。
今回の報告と提言のとりまとめをもって、懇談会は役割を終えることとなるが、会の顧問で福岡商工会議所の谷川浩道会頭は、「福岡商工会議所は昨年10月、『福岡・博多の歴史文化を生かしたまちづくりに関する15の提言』を発表した。そのなかで、福岡城の天守復元は重要な提言の1つである。商工会議所はこの提言に基づく『まちづくり』を重点事業として進めていく。ふくふく懇の委員を務めた方々には、今後もさまざまな面で協力をお願いしたい」として、今後も、懇談会メンバーと協力して福岡城の天守復元に向けた取り組みを進めるとの考えを示した。
では、懇談会メンバーの協力を必要とする、福岡城の天守復元に向けて今後焦点となるものは何なのか。
報告と提言
まず、今回の提言と報告の要旨を見てみる。
提言要旨(データ・マックス要約)
福岡城は歴史的な重要性から国の史跡に指定されているものの、市民アンケートの結果などから見ると、決して、福岡城への市民の関心や訪問頻度は高いとはいえず、その大きな理由として城の象徴ともいうべき「天守」が現存していないことが理由として挙げられる。
福岡城天守に関する最新の研究成果や史資料を専門家・有識者による検討吟味を行った結果、(1)福岡城天守は江戸時代初期にいったん建築されたが、後に破却されたとみて間違いはない。(2)天守の規模・構造は姫路城と同等の5重6階地下1階高さは約26mと推計される、(3)外観は黒を基調としていた、との結論に至った。
市民アンケートにおいても、天守復元に肯定的な意見が多かったことから、地域の歴史・文化を次世代に伝えるシンボルとして、福岡城天守の「復元的整備」を迅速に進めることが適切である。上記提言の上で、福岡市に対する具体的な提言項目として以下の事項を挙げている。
提言項目
(1)官民一体のさらなる調査
1.福岡城天守の全容解明に向けた史資料収集および分析
2.福岡城天守台およびその付近における発掘調査など
(2)福岡城に対する市民意識の向上
(3)市民が歴史を考える機会の創出
(4)文化庁の復元基準の柔軟な運用
(5)「国史跡福岡城跡整備基本計画」の官民一体となった推進上記提言項目のうち、(1)~(3)、(5)は福岡市の施策として取り組みが可能なものだ。(4)は文化庁の問題であり、市に対してそれへの働きかけの必要を提言しているものだ。
建設費は現時点で中心課題ではない
会見では、天守復元に向けた建設費用がいくらになるのかという質問が記者からなされた。これに対して山中座長は、「参考となる事例について情報収集しているものの、福岡城の天守を復元する場合に具体的にどれくらいの額になるのかについてはまだ算出していない」と述べるにとどめた。
報告の詳細のなかでは、資金調達についてさまざまな方法が列挙されているものの、具体的な提案ではなく、上記、提言項目のなかにも言及はない。よって懇談会としては、現時点で、建設費用を中心課題とはみなしていないことがうかがわれる。名古屋城の天守が木造復元で500億円という事業費が報道されており、膨大な費用への懸念や関心が集まるのも当然だが、これは復元方法がどのようになるかに大きく左右される問題であり、福岡城の天守はまったくの白紙だ。その復元方法がどうなるかは、国史跡の現状変更について許可権限をもつ文化庁との間で、福岡城の天守復元がどのような位置づけと見なされるかにかかっているのである。
(つづく)
【寺村朋輝】
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