昆明・浦東・青島、3空港で中国経済崩壊の本質をつかむ
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閑散とした上海浦東国際空港に驚き
正月期間中、中国・雲南省昆明へ放浪の旅に出た。15年ぶりである。この5日間の散策・放浪で中国経済崩壊の本質を理解できた。
まずは上海浦東国際空港からスタートしよう。昨年12月30日、同空港は閑散としていた。1996年に初めて降りたってから40回目になるだろうか。最初は1つのターミナルからスタートしたのだが、現在は「どれだけターミナルがあるのか」と思うほど、大規模なものとなった(昨年、第3ターミナルの建設が着工)。
12月30日の正午ごろ、中核となるターミナルを歩いてみた。100あまりの搭乗口を隅々、歩いてみたところ、1時間以内に飛び立ちそうな搭乗口は3カ所しかなかった。待合室では待機する乗客がいない光景を数多く見かけた。結論は「市場の見通しを考えず、規模膨張の投資をしている」ということである。
同空港からの交通の便は良くなった。リニアモーターカーは失敗に終わり、近々、廃線が決定しているようである。その代わりに都心に近い上海虹橋国際空港への上海エアポートリンクラインが昨年12月に開通した。地下鉄もあり都心部へ楽に移動できる。さらに高速道路が乗り入れており車での移動も便利となっている。市場が無限であれば準備万端だと称賛できるだろう。
昆明長水国際空港も同様
中国南西部、東南アジアへの玄関都市・昆明とはいえ、空港の大きさが異常ではないかと危惧した。東京国際空港(羽田空港)と比較しても間違いなく大きい(第1、第2、国際線ターミナルを含めて)のではないだろうか。確かにケタ違いの空港の設備の大きさには圧倒される。しかし、「いかに稼いだら、これだけの設備の償却ができるのか!」。計算をしているのか疑わしい。また、この空港にも上海虹橋国際空港と同様に高速鉄道(新幹線)が乗り入れており地下鉄もある。高速道路からも乗り入れされており、何事も準備万端であることには敬意を表する。
鉄道拠点である昆明駅のターミナルに立った。新幹線の発着点を歩きつつ、時刻表を眺めたところ、行先が100駅近くあり驚いた。比較的近いところで広州、西安、武漢、重慶、さらには上海、南京、青島、北京、大連と至るところに辿り着けるようになっている。また、ラオスへと向かう国際線もある。昆明駅の隣の新幹線駅のホームで驚いた。新幹線用のレールが7本敷かれている。これだけの路線が全国に敷かれているのであれば、中国人はさぞかし便利に国内を移動できるだろう。
こうした交通インフラを充実させながら全国の至るところにニュータウンを建設する。マンションラッシュとなり不動産バブルが起きてしまう。昆明周辺は一昔前、田舎であったと思われる地域で、「これだけ高層マンションを林立させて大丈夫かな」と懸念する。都市・昆明を巡る過程で寂れてしまったと思われる地域も目にした。
同様に青島膠東国際空港もケタ違いの設備投資がされている。ターミナル内にあることを売りにしているホテルまで、建物内を1.3km歩いた(福岡空港でいえばターミナルから二又瀬ほどの距離)。報告はここまでにしておこう。
ピーク時には1,000カ所現場があった
3空港の視察について報告した。賢明な読者の方々は筆者の意図を十分に理解されておられることであろう。空港建設、新幹線の路線拡大、全国都市部の地下鉄建設、高速道路の拡張を一挙に達成させた。その動きに連動して全国にニュータウンが誕生した。
2000年から10年までの10年間で、歴史に残るほど大規模なインフラ整備のための投資がなされたのである。ピーク時には中国全体で1,000カ所の建設現場があったと思われる。この公的なインフラ整備のための投資に莫大な鉄、セメント、建材が消費され、それが経済発展の牽引者となった。
田中角栄元首相は「日本列島改造論」を掲げ、その結果、インフレを招いた(原因はオイル高騰によるものであったが)。中国に置き換えると、いわば「大中国復興改造」が10年間にハイピッチで敢行された。このインフラ投資により、中国のGDP成長率10%が持続したのである。この10年間こそが「最高の黄金時代」となった。周知の通り08年のリーマン・ショックによる世界恐慌を救ったのは中国の資金力であった。08年北京オリンピック、10年上海万博の時期が絶頂期といえるであろう。
市場には限度がある
広大な中国といえども絶頂の10年を迎えるころには新規のインフラ投資をする場所が少なくなってきた。だからこそインフラ投資=経済成長率を高めるために海外に活路を求めるようになった。そう!「一路一帯」である。
この「一路一帯」について、さまざまな中国政府の戦略をもったいぶって解説する評論家がいた。複雑なものではない。要するに海外で「インフラ投資=土木工事」を推進させることに注力しようという単純な動機であった。だが残念ながら現場は海外(外国)である。中国の都合で事が運ぶわけもない。現在、頓挫したといえるであろう。
市場の罠
「市場の罠」という言葉が頻繁に使われる。「市場の限度を踏まえて策を施さないといけない」という意味である。日本社会は年間で人口が86万人減る時代に突入した。4年以内には100万人減という最悪のシナリオが予想される。日本の戸建メーカーは活路を海外、とくにアメリカに見出そうとしている。中国においても「市場の罠」=「市場の限界」に翻弄されるようになった。若者たちが所帯をもたないから新生児が生まれてこない。10年すれば中国の人口は急減し始めるであろう。市場が急速に縮むことは間違いない。
ここで論を展開したいのは上記のインフラ投資による借財の返済問題である。取りあえずは中国政府による資金手当てで、短期間で全国に高速鉄道を網羅した。この投資の借入の返済を事業(乗客が支払う運賃)で賄わなければならない。聞くところによると全国の高速鉄道のかなりの部署が不採算で、大幅な赤字だそうだ。事業収入ではとても返済できないといわれる。鉄道事業には、かなりのメンテナンスが必要となる。手を抜けば必ず脱線=死亡者多数という事態の発生を招く。メンテ代というが半端な金額ではない。各路線から適正な売上が確保されないと安全は守れないということだ。
公共事業への投資こそが中国の「華の10年」を構築させた。だが、今や投資資金の返済時期に追い込まれている。いかなる返済の手立てがあるのか!わかりやすく説明すれば海外からインバウンドを急増させて鉄道を利用させないといけない。ところが今の中国政府の高飛車な姿勢であれば世界の人々は誰一人近づくことを敬遠する。さぁ、中国経済再建の方策はあるのか!成り行きは険しいと結んでおこう。
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