国交省、歩行空間の3D地図整備へ
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国土交通省は2024年12月26日、省内で今年度2回目の「歩行空間の3次元地図ワーキンググループ」(座長=佐田達典日大教授)を開催した。同ワーキンググループでは、自動配送ロボットの走行に必要なデータ取得などの技術的な検証や自治体職員による3次元地図の整備方法などについて、神奈川県川崎市と静岡県沼津市で行われた実証実験の結果を踏まえて議論。これまでの実証実験や議論で技術的な方向性が見えてきていることから、25年度からは全国展開を見据えた普及やデータ活用を主軸に検討を行うとしている。
技術的な要件を整理
国土交通省は、人とロボットが円滑に移動するための3次元地図の在り方や、整備・更新・運用方法に関するテーマについての議論および検討を続けている。整備を進めている歩行空間ナビゲーションデータプラットフォーム「ほこナビDP」は、「歩行空間ネットワークデータ」「施設データ」「3次元地図整備システム」で構成。今回のワーキンググループでは、3次元地図整備システムについて議論を行った。
まず、川崎市で行った実証実験について報告。自動配送ロボットの走行に必要なデータ整備・更新への活用や、歩行空間ネットワークデータ(バリア情報と形状の抽出とそれらの統合)の自動生成への活用についての検討結果を議論した。データとして利用する3D点群データは、車載センサーによるものや台車、バックパック、ハンディスキャナ、スマートフォンなどさまざまな機器によるデータ取得方法があり、データそのものの品質にもバラツキがある。
そこで、23年7月にJR川崎駅周辺で、車載や台車搭載のセンサー、人が歩いてデータを集めるハンディ型LiDER(ライダー)、バックパック型スキャナなどを使い、車道や歩道、階段・スロープ、アーケードの3D点群データを収集。これらデータの特性を踏まえて、統合処理と走行車両や歩行者などのデータの削除(フィルタリング)を自動処理や手作業で実施した。こうして整備したデータを使って、川崎駅周辺で電動車椅子による走行実験を実施した。この結果とロボット事業者へのヒアリング結果を踏まえ、経路設定に必要な要件と自己位置推定処理に必要な要件、段差や勾配などのバリア条件を検出するための要件を整理した。なお、これらは技術的な要件を整理して土木学会などで論文発表を行った。
自治体職員が自ら整備
24年11月に実施した沼津市での実証実験では、実際の3次元地図の整備を自治体職員が行うことを想定したもの。最初に知識習得のための講習を行い、沼津駅周辺で職員が歩いてハンディLiDARやスマートフォンを使ってデータを収集し、自治体が保有する3次元点群データとの統合処理やフィルタリングなどを、プロトタイプとして構築した3次元地図整備システムを使って実施した。
実証に参加した職員との意見交換と課題の整理では、「事前の想像よりも簡単に計測できた」など、データ取得自体は職員でも実施できそうとの意見が多かった。一方で、データ取得する場所の指示や目的に合わせた計測を行うには、高度なトレーニングを受けた人材が必要との課題も挙がった。また、職員によるデータ加工については、トレーニングを積めば、自治体職員でもデータ加工を実施できるとしながらも、「公開可能なデータの基準があると良い」など、判断やセキュリティ確保といったシステム運用などの体制の構築のほか、予算確保も課題になるとした。
今後、3次元地図整備システムの試行運用として、マニュアル、ツール(フィルタリング、統合等)、Webシステムを試行的に公開。システムの機能性など利用者からの意見を踏まえ、必要に応じてシステムなどの改善を実施しながら、本格運用に向けた検討を実施する予定だ。
合意形成などへ活用も
委員からは「ロボットやバリアフリーのためだけでデータを取るというのは、(周囲の理解が)難しいのではないか」との指摘があり、実証実験に参加職員からも同様の意見があった。また、自動配送ロボットだけでなく「せっかく集まったデータを(施設建設や道路補修のような)ハードで活用するなど、ハードとソフトの両面での活用することが大事だ」との意見もあった。技術的に対応が困難な部分への対応についての質問には、国として専門的な人材の派遣について検討するとした。
今回のワーキンググループに参加した静岡県デジタル戦略局は、歩いて暮らせるウォーカブルなまちづくりにおいて、一般車両の運行に代えて自動運転車両を導入することなどを検討している。「将来的には、ウォーカブルなまちづくりの計画を3Dで事前に住民に示すことで合意形成を促すことを視野に入れている」(静岡県デジタル戦略局)と話した。
国土交通省は、都市部においてデジタル上で再現するデジタルツイン化を目指す「プロジェクトPLATEAU(プラトー)」も進めている。3次元データの整備は、建設現場の人手不足への対応として建機の自動運転への活用などのほか、行政による相続税や固定資産税の算定、まちづくりや再開発における合意形成の促進など広く応用が期待されている。
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