2024年11月25日( 月 )

主権者が求める、本当の意味の「三つの的」

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 NETIBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、選挙の年である今年2016年は、経済政策における明確な対案を示すことが重要とした、1月16日付の記事を紹介する。

 2016年が明けて半月が経過したが、経済環境は厳しさを増している。第二次安倍政権が3年も持ちこたえてきた最大の拠りどころが株価上昇だった。たまたま円安が進行し、これに連動して株価が上昇したために、第二次安倍政権が3年も持続したのである。しかし、その最大の拠りどころに暗雲が垂れ込めている。

 2016年が明けて半月の時間が流れたが、この間に日経平均株価が上昇したのは、わずか1日だけである。日本経済の先行きに対する不安が急速に広がり始めている。株価下落は日本だけの現象ではなく、グローバルな広がりを持つ現象ではある。NYダウも1月15日には16,000ドルを割り込んだ。
 すでに記述してきたように、世界的な株価下落の最大の背景は中国株価の下落である。昨年6月までの1年間に上海総合指数は2.6倍の水準に暴騰した。この株価が昨年6月以降に急落し、9月には2,850ポイントにまで下落した。その後、12月にかけて3,600ポイントを回復したが、年明け後に3,000ポイントを再び割り込んだのである。
 この中国が震源地になって世界の株式市場が動揺している。また、サウジアラビアとイランの対立激化など、地政学リスクの高まりも株価下落のひとつの要因になっている。

 しかし、それだけではない。日本の経済政策が緊縮政策の度合いを一気に強め始めているのである。詳細は、『金利・為替・株価特報』2016年1月18日号に記述した。

 1990年以降、26年間の日本経済の浮き沈みを形成してきた、最大の要因は経済政策である。経済政策の積極・緊縮の繰り返し、経済政策の右往左往が、日本経済の長期低迷の主因である。

 第2次安倍政権は2013年には積極政策を実行した。しかし、2014年には消費税増税を軸に超緊縮政策を強行した。このために、浮上しかけた日本経済は撃墜されてしまった。2015年は消費税再増税を先送りしたが、そこに原油価格下落が重なったから、日本経済は何とか持ちこたえたのである。

 ところが、2016年度の財政政策運営が超緊縮に転換する。このため、日本経済が再び転落する恐れが生まれ始めている。年初来の株価急落の背景に、この問題が存在することを忘れてはならない。さらに言えば、2017年4月には、消費税率を10%に引き上げる方針が示されている。このまま政策変更せずに突き進めば、日本経済は大崩落を起こしかねない。

 株価が上昇した過去3年の間も、一般庶民に景気回復の実感はなかったし、また、実際に一般庶民は景気回復の恩恵に浴していない。株価は上昇したが、経済全体が浮上したわけではなかったのである。経済全体が浮上しなかったのに株価が上昇したのは、経済活動の果実の分配において、資本の取り分を増やして、労働の取り分を減らしたからだ。一般庶民が株価上昇に見られるような景気浮上の実感が広がらなかったのは、当たり前のことなのだ。

 2016年は選挙の年になる。安倍政権はこの選挙にも勝って、憲法改定に突き進む構えを示しているが、そうは問屋が卸さないかもしれない。頼みの綱の株価まで下落すれば、アベノミクスの化けの皮がはがれてしまうからだ。

 日本政治の流れを変えるために、いま、新しい経済政策の提案が求められている。経済が浮上していないことも問題だが、それ以上に重要な問題は、生産の結果生み出される果実の分配に、著しい不公正、歪みがあることだ。格差拡大が、経済政策によって推進されていることが重大な問題なのである。
 すべての労働者の正規化実現を目指すべきである。最低賃金の引き上げを実現するべきである。すべての国民に、一定水準の所得を保障するべきである。これこそ、主権者が求める、本当の意味の「三つの的」、「三本の矢政策」だろう。

 そして、経済全体を浮上させるには、財政政策の超緊縮を中止する必要がある。具体的には、まず、消費税率10%への引上げを完全中止するべきである。

 選挙の年である2016年。経済政策における、明確な対案を示すことが重要性を増している。

※続きは1月16日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1342号「アベノミクスの正体と共生の経済政策」で。

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