海峡都市・下関、2つの市街地再編へ(前)

「世界で最も素晴らしい場所」
リゾナーレ下関・開業

リゾナーレ下関
リゾナーレ下関

 山口県下関市のウォーターフロントエリア「あるかぽーと地区」で2025年12月、(株)星野リゾートのリゾートホテル「リゾナーレ下関」が開業した。

 リゾナーレ下関は、国内外で星野リゾートが展開するリゾートホテルブランド「リゾナーレ」の8施設目で、「海峡のデザイナーズホテル」をコンセプトとしている。関門海峡を目の前に臨む絶好のロケーションに位置しており、客室は9タイプ・全187室で、全室から関門海峡の景色を楽しむことが可能。建物はエリアに調和した設計となっており、敷地内にはガーデンエリアを設けることで、自然と海が一体となる開放的な空間を演出している。ホテル内のデザインにも、関門海峡の景色や「ふぐ」など、この土地ならではの要素をスタイリッシュに取り入れており、施設内には、屋外・屋内で2種のプールを備えるほか、テラスやビーチも整備。ロケーションを生かした多彩なアクティビティの提供を通じて、“海峡を楽しみ尽くす滞在”を提案する。

 開業から3カ月後の26年3月12日には、同ホテルが米国発祥の世界最大の英文週刊ニュース誌「TIME」が発表した「2026年 世界で最も素晴らしい場所(The World’ s Greatest Places of 2026 )」のうち、「最も素晴らしい宿泊施設(Places to Stay)」の1つに選出された。星野リゾートの施設が単体で「Places to Stay」部門に選ばれるのは、今回が初となる。今回の選定では、海外では食べることが珍しい「ふぐ」をモチーフにした空間デザインや、海峡を楽しみ尽くす多彩なアクティビティ、子どもだけではなく大人も楽しめるような工夫が評価された。この選出を受けて前田晋太郎・下関市長は、「今回のニュースは、下関市として大きな『自信』をいただくことができた。これからこの街を支えていく若い世代の方々にとって、自分たちの生まれ育った場所が世界に誇れる場所であるという、大きな『誇り』につながることを願っています」とコメントしている。

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 星野リゾートのホテル「リゾナーレ下関」の開業によって、海峡都市として再び脚光を浴びている下関市。同市については、過去に本誌vol.28(20年9月末発刊)で取り上げたことがあるが、今回は現在進んでいる中心市街地の再編などの動きと合わせて、改めて取り上げてみたい。

歴史の節目に何度も登場
海上・陸上交通の要衝

 下関市は、本州の最西端に位置し、関門海峡を挟んで九州と向かい合うほか、朝鮮半島や中国大陸とも近いことで、古くから海上・陸上の交通の要衝として栄えてきた。本州における東アジアからの玄関口であり、九州と隣接する港湾都市として発展してきた経緯から、日本史における重要な節目に幾度となく登場し、その舞台となってきた。下関の歴史・成り立ちについては過去にも触れているが、要点だけ簡単におさらいしておこう。

 中世における最も有名な出来事は、源氏と平家の最後の戦いとなった1185年の「壇ノ浦の合戦」だろう。下関市内の赤間神宮は、このときに幼くして亡くなった安徳天皇を祀っている神社だ。幕末期には、関門海峡を航行中のアメリカ商船を砲撃した1863年の「下関事件」をきっかけとして、翌64年に長州藩と連合国(イギリス・フランス・オランダ・アメリカ)との間で「下関戦争(馬関戦争)」が勃発した。また、長州藩士の高杉晋作が伊藤博文らとともにこの地で奇兵隊を結成し、倒幕への流れに大きく貢献したことで、江戸幕府崩壊後、長州藩は薩摩藩とともに明治政府の中核になっていった。

 明治期に入ると、1889年4月に日本で最初に市制を施行した全国31市の1つ「赤間関市」(あかまがせきし)として市制施行。94年7月に開戦した日清戦争が翌95年に日本の勝利で幕を閉じると、阿弥陀寺町の料亭「春帆楼」で日清講和会議が開催。日本と清国の間で「下関条約」が結ばれ、日本は列強の仲間入りをはたした。

 1901年5月には山陽鉄道が延伸し、その終着駅として「馬関駅」(ばかんえき)が開業。翌02年6月に赤間関市が現在の「下関市」に改称したのにともない、馬関駅も下関駅へと改称した。05年9月には山陽鉄道傘下の山陽汽船が下関~釜山間で「関釜連絡船」を就航。下関は朝鮮半島や中国大陸への玄関口として活況を呈し、発展を遂げていった。42年7月には世界初の海底鉄道トンネルである「関門鉄道トンネル」が開通し、終戦後の58年3月には世界初の海底国道トンネルである「関門国道トンネル」が開通した。関門国道トンネルは2層構造になっており、国道2号が通る車道だけでなく、徒歩で通行できる人道トンネルも併設している。

 73年11月には関門海峡の最狭部を結ぶ高速道路専用の海上橋「関門橋」が開通した。75年3月には山陽新幹線の岡山~博多間の開業に合わせて、「新関門トンネル」が開通し、併せて「長門一ノ宮駅」を改称するかたちで、市内における新幹線停車駅として「新下関駅」が開業した。こうして関門海峡を渡る陸路は、2本の鉄道トンネルと1本の国道トンネル、そして1本の橋梁が整備され、現在に至るまで4路線で本州と九州をつないでいる。

(左)壇之浦古戦場跡  (右)関門橋
(左)壇之浦古戦場跡  (右)関門橋

 77年10月には下関駅前に複合商業施設「シーモール下関」が開業した。同施設は国鉄下関駅の貨物ヤードのうち駅舎に近いエリアの一区画における再開発事業によって誕生したもので、下関大丸とダイエーの2つの核店舗と200店超の専門店とで構成され、当時としては西日本最大規模とされた。開業後は数度の改装を経て、現在は大丸下関店(旧・下関大丸)を核店舗に、シネマコンプレックスや結婚式場、専門店街からなる複合型ショッピングセンターとなっている。

 96年8月には、会議・展示施設「山口県国際総合センター」(通称:海峡メッセ下関)が開業。同施設は、旧国鉄貨物ヤード(関門連絡船貨車航送場)跡地を対象とした再開発事業「海峡あいらんど21」計画の一環として開発されたもので、オフィスビル「国際貿易ビル」やイベントホール・展示見本市会場「アリーナ」、展望塔「海峡ゆめタワー(オーヴィジョン海峡ゆめタワー)」などで構成される。なかでも3層からなる球状の展望室を備えた高さ153m(展望室143m)の海峡ゆめタワーは、関門海峡の下関側のランドマークとして存在感を放っている。

山口県国際総合センター(海峡メッセ下関)
山口県国際総合センター(海峡メッセ下関)

    2001年4月にはウォーターフロントの再開発事業の一環として、「下関市立しものせき水族館」(愛称:海響館)や「唐戸市場」が移転・開業したほか、翌02年4月には海響館と唐戸市場に挟まれた場所にフィッシャーマンズワーフ「カモンワーフ」がオープン。唐戸地区を中心としたウォーターフロントエリアが新たな観光名所となった。

 そして05年2月、いわゆる“平成の大合併”によって旧下関市に4町(菊川町、豊田町、豊浦町、豊北町)が合併。現在の下関市が誕生し、今日に至っている。

人や企業が集積する
臨海部・旧下関市

 古くから交通の要衝として、そして関門海峡を臨む港湾都市として発展を遂げてきた下関市は、山口県内で唯一の中核市および中枢中核都市に指定されており、山口県だけでなく中国地方を代表する都市の1つとなっている。人口規模では、県庁所在地である山口市(18万6,542人/26年6月1日現在)を上回る23万7,949人(26年5月末現在)と県内1位。県全体の人口が125万3,257(26年5月1日現在)であるため、下関市が県人口の約2割(約18.7%)を占めている計算だ。

 また、経済面でも県西部の中心的都市となっており、下関市に本社を構えている有力企業や、支店や支社などの主力営業拠点を置く大企業も多い。本社を構えている代表的な企業としては、中国・四国地方最大の金融機関グループの(株)山口フィナンシャルグループとその傘下の(株)山口銀行を始め、住宅関連機器メーカー大手の(株)長府製作所、不動産大手の(株)エス トラストや(株)東武住販、食料品・飼料の製造販売大手の林兼産業(株)、日本国内および周辺国との貨客航路を展開するSHKライングループの母体である関光汽船(株)、県西部で路線バスを運行するサンデン交通(株)、県内の瀬戸内海側で都市ガス供給を行う山口合同ガス(株)などが挙げられる。

 下関市の中心市街地にあたる「下関市街地」は、JR下関駅周辺から唐戸エリアまでの国道9号沿いの約2kmの区間を中心に形成されている。この下関市街地には、下関市役所をはじめとした公的機関・公共施設に加え、オフィスや金融機関、商業施設、さらには観光施設まで集積していることで、下関市を代表する特徴的な地区となっている。ほかの特徴的な地区としては、新幹線駅の開業とともに副都心として新興住宅地や商業施設などの開発が進められてきた新下関駅周辺や、古い城下町や臨海部の工業地帯を擁する長府エリア、造船業や重化学工業、水産加工業などが集積している彦島などが挙げられる。05年の合併で市域は北側に広がったものの、依然として下関の中心部は関門海峡に面した臨海部の旧下関市のエリアだといえよう。そしてそれは、市内における分譲マンションの開発・供給の状況にも表れている。

 JR下関駅から徒歩6分の竹崎町4丁目では、エス トラストによる「オーヴィジョン下関ザ・プライム」が開発された。RC造・地上19階建で、総戸数は115戸。設計・監理は(株)マリモが、施工は(株)長野工務店がそれぞれ担当し、25年1月に竣工済み。

(左)オーヴィジョン下関ザ・プライム  (右)クレイルタワー下関海峡あいらんど
(左)オーヴィジョン下関ザ・プライム
(右)クレイルタワー下関海峡あいらんど

 JR下関駅から徒歩10分の細江町3丁目では、(株)コムズコーポレーションによる「クレイルタワー下関海峡あいらんど」の開発が進んでいる。RC造・地上19階建で、総戸数は134戸。設計・監理は(株)ワイエム・クリエイト 一級建築士事務所が、施工は(株)野口工務店がそれぞれ担当し、27年3月の竣工を予定している。

 JR新下関駅から徒歩13分の秋根北町では、エス トラストによる「オーヴィジョン新下関プレステージ」の開発が進んでいる。RC造・地上10階建で、総戸数は54戸。施工は長野工務店が担当し、27年1月の竣工を予定している。

 下関市役所にも近い南部町では、(株)九州三共による「リヴィエールタワー下関海峡ヴィラ」の開発が進んでいる。RC造・地上19階建で、総戸数は68戸。設計・監理を前畑亘紀建築設計事務所が、施工を福屋建設(株)がそれぞれ担当し、28年8月の竣工を予定している。

リヴィエールタワー下関海峡ヴィラ
リヴィエールタワー下関海峡ヴィラ

    サンデン交通バス「松原」バス停から徒歩4分の長府侍町2丁目では、(株)コーセーアールイーによる「グランフォーレ長府侍町」が開発された。RC造・地上6階建で、総戸数は40戸。設計・監理は(株)JIN建築設計が、施工は住吉工業(株)がそれぞれ担当し、24年1月に竣工済み。

 サンデン交通「福浦口」バス停から徒歩3分の彦島福浦町2丁目では、(株)アカマツ興産による「アーデント彦島福浦」が開発された。RC造・地上11階建で、総戸数は40戸。設計・監理は(株)M&K建築設計が、施工は(株)野口工務店がそれぞれ担当し、24年3月に竣工済み。

 こうして見る限り、居住ニーズが高く、多くの分譲マンションが開発・供給されているのは、旧下関市エリアに集中しているようだ。

(つづく)

【坂田憲治】

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