環境や景観と調和した
持続可能な都市づくり
人口規模でも経済規模でも山口県内第一の都市といえる下関市だが、新幹線開業を契機とした交通体系の整備によって通過都市化が進んだことで、85年以降は人口減少および急速な少子高齢化が進行。都市機能の空洞化やそれにともなう活力低下、大型商業施設の郊外進出による中心部の商店街の衰退などの課題を抱えていた。
下関市ではそうした課題の解決に向けて、これまでにも「海峡まるごとテーマパーク」をコンセプトに、“海峡のまち”の特性を生かしたウォーターフロント整備などに取り組んできたほか、09年12月に「下関市中心市街地活性化基本計画」を策定して中心市街地の賑わい再創出にも注力。10年1月には「下関市都市計画マスタープラン」を策定(22年3月改訂)し、現在は2030年を中間目標年次、40年を目標年次としたまちづくりを進めている。
同マスタープランでは、都市づくりの基本理念を「安全・安心で持続可能な都市づくりを目指し、地域ごとにコンパクトで快適に暮らせる土地利用を図る」と掲げており、①「山口県西部の発展をけん引する、活力ある都市」、②「快適な暮らしと自然景観を維持する、コンパクトな都市」、③「安全・安心な生活を支える、強くしなやかな都市」の3つの将来都市像を提示。また、都市機能を拠点に集約し、拠点同士や拠点と地域を道路や公共交通のネットワークでつなぐことで、地域の生活利便性を高めるとともに、都市と自然との共生を図る「拠点連携型の都市構造」の構築を図っていくとしている。
将来都市構造としては、下関市内を市南部の「下関都市計画区域(線引き)」、市中部の「下関北都市計画区域(非線引き)」、市北部の「都市計画区域外」の3つに分けて、それぞれの地域特性に応じた土地利用ゾーニングを設定。「下関市街地」と「新下関駅周辺」の2地区を都市拠点として位置づけるほか、下関都市計画区域(線引き)内の「彦島」「長府」「小月」「川中」「安岡」「山の田」の6地区を地域拠点に、下関北都市計画区域(非線引き)内の「豊浦」「菊川」の2地区を地域拠点(田園住宅型)に、都市計画区域外の「豊北」「豊田」の2地区を集落拠点と位置づけている。
2つの都市拠点のうち「下関市街地」では、中心市街地が有する多様な高次都市機能の集積を生かし、まちなか再生により、下関市の顔として経済、文化、観光、暮らしを支える中枢的な都市機能と居住機能が共存する都市拠点の形成を図っていく方針。もう1つの「新下関駅周辺」では、沿道サービスや高次教育等の都市機能集積、広域交通の利便性を生かし、商業流通業務地としての土地利用を促進するとともに、新たな都市的土地利用による都市拠点の形成を図っていくとしている。
また、「彦島」「長府」「小月」「川中」「安岡」「山の田」の地域拠点6地区は、市街地内で身近な地域における日常生活サービスの提供、都市活動の維持を図るための拠点として、コンパクトな市街地の維持・活用を図っていく。そして、地域拠点(田園住宅型)2地区の「豊浦」「菊川」の総合支所周辺は、身近な地域における日常生活サービスや都市活動の維持のための拠点として、コンパクトな市街地の維持・活用を図るほか、集落拠点2地区の「豊北」「豊田」の総合支所周辺は、身近な地域における日常生活サービス維持のための拠点として位置付け、集落ごとに小さな拠点の形成を図るとしている。
さらに、多様な都市活動とともに、大規模災害などでの緊急輸送が円滑に行われるように、市域内外を機能的に結ぶ交通ネットワークを形成。都市の魅力を高めるため、長く伸びる美しい自然海岸、特有の海峡景観など下関市特有の水際線一帯を沿岸軸として、良好な自然環境や水辺景観と調和した都市づくりを目指していくとしている。
こうして都市計画マスタープランに沿った都市づくりを進めていく一方で、20年1月には、コンパクトシティの形成に向けて都市再生特別措置法に基づく「立地適正化計画」を策定(25年6月改訂)した。これは前述のマスタープランの一部という位置づけで、都市拠点や各地域における生活拠点などにそれぞれの特性に合った都市機能を誘導することで、持続可能な都市空間を目指すというもの。居住機能や都市機能を誘導していくことで、今後の人口減少や少子高齢化がさらに進行しても、誘導区域における人口密度の維持により、日常生活サービスや地域コミュニティを持続的に確保するとともに、災害危険区域などでの新規開発を抑制することで、安全・安心の都市づくりを進めていくことが狙いだ。この立地適正化計画における目標年次も2040年となっている。
今年度から本格始動
下関駅前リニューアル
都市計画マスタープランのなかで都市拠点に位置付けられている「下関市街地」は、竹崎町や細江町をはじめとするJR下関駅周辺と、南部町や中之町をはじめとする唐戸エリアとを結ぶ国道9号沿いの約2kmの区間を中心に形成されている。この区間は連続した市街地ではあるものの、「JR下関駅周辺」と「唐戸エリア」という大きく2つの“核”をもっているのが特徴だ。
まず、JR下関駅周辺は、前出のシーモール下関を始めとした商業施設が集積するほか、企業や金融機関の本支店が集中して立地し、下関地方合同庁舎や下関市民会館、海峡メッセ下関、下関港国際ターミナルなどの各種施設がそろっている。一方の唐戸エリアは、下関市の前身の赤間関市の時代から港町・宿場町として発展してきた場所で、現在も市役所や下関商工会議所などが立地するほか、ウォーターフロントエリアには海響館や唐戸市場などの施設があることで、観光名所にもなっている。大まかに定義するならば、経済の中心地となっているのがJR下関駅周辺で、行政・観光の中心地となっているのが唐戸エリアといえそうだ。そして現在、この2つの“核”それぞれに、再編・再開発の機運が訪れている。
まずJR下関駅の東口エリアでは現在、「駅前リニューアル」の検討が進められている。
現在のJR下関駅の東口は、1階・地上部分に駅前ロータリーや下関駅前バスターミナルが設けられているほか、2階部分には人工地盤(ペデストリアンデッキ)が整備され、下関駅ビル「ripie(リピエ)」やシーモール下関、下関港国際ターミナルなどの駅周辺施設に直接接続する構造となっている。この人工地盤によって1階部分と2階部分とが重なる駅前二重構造は、整備された当初は先進的で注目を集めたものの、近年では動線のわかりにくさや車の進入ルートの把握しづらさなど、利便性や回遊性の観点から、駅前都心部の構造として最適なのかの再検討の余地が大きくなっている。加えて、駅前には山口銀行本店(1965年竣工)やシーモール下関(77年竣工)など、老朽化が進んで建替えの時期を迎えている建物も多く、駅前活性化のためにもエリアとしてビル再開発を含めた更新が必要な状況となっている。
こうした状況下で下関市では、中心市街地のにぎわい創出は喫緊の課題という認識に基づき、18年1月に「下関市の中心市街地の活性化に係る官民連携会議」(通称:下関にぎわい会議)を設置。同会議での議論を重ね、19年5月にはソフト事業の実施を中心とした市単独の計画である「下関市中心市街地にぎわいプラン」を策定した。同プランでは、①駅前商業施設等の活性化、②駅周辺の住環境の整備、③移動環境の整備、④創業の促進・事務系企業の誘致―の4つの視点に基づいて、にぎわい創出事業に取り組んでいくとしている。
そして今年4月10日には、「下関駅前リニューアル推進検討業務」のプロポーザルを実施。その結果、5月29日にはセントラルコンサルタント(株)を代表とする「セントラルコンサルタント・日本総合研究所設計共同体」が候補者として選定された。今後は駅前の再整備の方向性や導線や広場などの空間設計、商業・居住・観光などの各機能の配置、官民連携の事業手法、そして段階的な整備スケジュールなどについて、具体的な検討が進められていく予定だ。
下関市の下関駅前リニューアル推進室は、「下関駅前リニューアルについては、今年度から本格的に始動いたしました。現段階では具体的なリニューアル方針などは決まっていませんが、既存施策の検証に加え、民間再開発を後押しする新たな施策の必要性についても検討を進めていきます。また、山口銀行さまでは更新時期を迎えた本店ビルの建替えをご検討とうかがっています。こうした民間企業の動きとも歩調を合わせ、官民が連携してエリア全体の刷新につなげていきたいと思っています。まずは今年度中に、今後の方向性や整備スケジュールなどを取りまとめたロードマップをつくっていきたいと考えています」とコメントする。
前田晋太郎・下関市長も「令和8年度市長施政方針」のなかで、「下関駅前エリアをリニューアルし、新たな賑わいの創出を目指します。時代の流れを的確につかみ、将来ニーズを見据え、商業や観光をはじめ、ビジネスや居住など多様な機能が集積する魅力ある下関駅前となるよう、官民連携により取り組んでまいります。また、老朽化したビルなどの建築物や空き家の解体費用の一部を支援し、建築物の更新や土地の有効活用を促進することで、まちの美観の確保や防災性、安全性の向上はもとより、将来に向けて市民生活や経済活動を支える都市機能を強化します」と表明。市としても、これから具体的に動き出す駅前リニューアルに、本腰を入れていく構えだ。
(つづく)
【坂田憲治】

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