元総合商社駐在員・中川十郎氏の履歴書(10)医療関連ビジネス(前)
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日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏
ニューデリーでの医薬品原料ビジネスが発端となり、ブラジル、パナマ、カナダ、アメリカ、日本、マケドニア、インド、スリランカなどでの医療品ビジネスに発展した経緯を記しておきたい。筆者のビジネス開拓・拡大策は、個々のビジネスを関連づけて、世界各国に拡大していくというものだ。
医薬品原料の輸入商談では、明治製菓(株)の抗生物資と、第一工業製薬(株)のビタミン原料、とくにビタミンA原料のインド向け売込みに、大阪化学品部とともに協力した。インド国営化学品貿易公団の関係者が訪日し、明治製菓の工場や研究所、大阪第一工業製薬を案内した経験が、その後の医療品ビジネスに大いに役立った。
(1)小野薬品のブラジル工場建設
ブラジルのリオデジャネイロ駐在時に現地担当として、ニチメン(株)・大阪化学品部とともに、本庶先生のガン免疫剤「オプジーボ」で有名な小野薬品工業(株)の陣痛促進剤「プロスタグランジンン」の現地製造プロジェクトに関与した。
(2)パナマがんセンター向け医療機器輸出
ニチメン・東京本社中南米首席、米州課長としてパナマに出張していたときに、パナマのガンセンター向けに医療機器を無償で援助する、JICA(国際協力機構)プロジェクトの情報を入手した。3年間、努力を重ねた結果、国産医療機器のパナマ向け初輸出に成功した。
(3)米国で開発された骨髄を使った新しいがん治療技術を日本に紹介
ニチメン米国・ニューヨーク開発担当副社長のときに、米国でがん治療用に骨髄を長期冷凍保管し、ガンになったときにこの骨髄を治療に適用する新技術が発明された。早速、この新医療技術を日本医療関係先に紹介したが、あまりに時代を先取りしすぎた技術でビジネスに結びつかなかった。
(4)カナダで開発された3次元医療用画像システムの日本への売り込み
カナダ・トロントで医者が開発した「3D Medical Imaging System」(3次元画像イメージシステム)が医療診断に非常に効果的だという情報が、『ニューヨークタイムズ』に紹介された。米国ニチメン開発部の顧問の大川博士とともにトロントに向かい、発明者の医師に面談し、実物を見せてもらった。
すでに米国、カナダでは病院で実用化されている技術として日本に紹介したが、日本の厚生省から販売承認を得るためには日本の大学病院で最低1年間の治験が必要だといわれた。大阪大学医学部放射線科に協力してもらうことが決まり、放射線部長以下、ニチメン化学品部担当者がカナダを訪問し、実物を1台、1,000万円で輸入した。
だが、阪大での治験が終了する直前に、それまで協力を要請していた日本のT社が自社製品を完成させた。おそらく治験中にカナダの技術が日本のメーカーに漏れたのだろう。T社の製品は、カナダ製品の半額で販売されることが決まったため、本プロジェクトは残念ながら中止になった。
(つづく)
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)関連キーワード
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