2024年11月24日( 日 )

いまの立憲民主党では選挙に勝てない 

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を紹介する。今回は「現在の立憲民主党に闘う意志が欠落しており、立憲民主党の有志が中心になって新党を創設し、共産党、れいわ、旧社民との確固たる共闘を構築すべき」と訴えた11月18日付の記事を紹介する。


通常国会の召集日が1月8日になるとの観測報道があり、1月解散総選挙の可能性が取り沙汰されているが、1月総選挙の可能性は限定的である。

コロナ陽性者数が急増している。
菅内閣はコロナが極めて深刻な感染症であるとする国民の認識を変えようとしていない。
この状況下での総選挙強行は強い批判を招く。

昨年1月にコロナ感染症を第2類相当指定感染症にしたために、コロナ重大論が拡散されてきた。
第2類相当指定感染症への区分指定は極めて重大な感染症に対するもの。

感染症法は感染症に迅速かつ適確に対応するため、感染症を「一類感染症」から「五類感染症」「新型インフルエンザなど感染症」「新感染症」、そして「指定感染症」という8区分に区分すること、ならびにその区分に応じた措置が取ることを定めている。

「指定感染症」は、新しい感染症への対策を迅速に法に基づき行うために、期限付きで運用できるようにするためにつくられたカテゴリ―。

今回の新型コロナ感染症(COVID19)は本年1月28日に2021年2月6日までの期限付きで第2類相当指定感染症に区分された。
感染症法上、2類感染症には、ポリオ、結核、ジフテリア、SARS、MARS、鳥インフルエンザがある。

安倍内閣は本年1月28日に今回のコロナウイルス感染症を期限付きで第2類相当の指定感染症に区分することを閣議決定した。

新型コロナが第2類相当指定感染に区分されたために、新型コロナ感染者への行動制限措置(入院させる、仕事を休ませる、濃厚接触者に外出自粛要請をするなど)を行うことが可能になっている。
また、医師に対する報告義務が課せられている。

このような法律上の措置が強制されるため、病床の確保などの医療逼迫の問題が深刻な問題として浮上した。
市民の側も、新型コロナで陽性になれば、入院措置などが強制されることなどから、新型コロナを重大視する状況が生まれてきた。

新型コロナを指定感染症から外し、たとえば「五類感染症」にすると、
1.都道府県としての新型コロナウイルス感染症対策は調査をのぞいてはなくなり、国や都道府県(保健所設置区市)の費用負担もなくなる。
2.新型コロナウイルス感染症の感染が拡大しても放置することが許される。
3.行政検査はなくなり、検査をしたい人は自らの費用で検査することになり、濃厚接触者の追跡・クラスター追跡の作業もなくなる。
4.感染者の隔離も不要になり、宿泊療養施設も不要、感染者の自宅待機も不要になる。
5.入院勧告も不要になり、入院したい人は自らの費用で入院すればよいことになる。

新型コロナを第2類相当指定感染症からインフルエンザ並みの第5類感染症に区分替えをすれば、直ちに上記の変化が生じることになる。
この指定区分が実行されれば、市民は新型コロナに対する認識を180度転換することになる。

本年1月から8月ごろまでの期間においては、日本における新型コロナ感染症の被害状況の全貌が見えていなかったから、リスク管理の鉄則として
「最悪に備える」
ことは必要不可欠だった。

しかし、本年夏以降、日本における被害状況の全貌が明らかになってきた。
これを踏まえれば、第2類相当指定感染症の区分を第5類感染症の区分に変更することが合理的だ。
この点が論議されないことが事態を混乱させている。

菅内閣は新型コロナ感染症を「第2類相当指定感染症」の区分に置いたままGoToトラブル事業を全面推進している。
そのなかでGoToトラブル事業が感染再拡大の主因になっている。
コロナ感染症を第2類相当指定感染症の区分に置いたまま感染が急拡大すれば混乱拡大は必至だ。
医療逼迫の危険さえ生じる。

菅首相は新型コロナ感染症の被害状況が軽微であるとの認識を有していると見られる。
この判断に基づいてGoToトラブル事業を全面推進し、2021年五輪開催も強行しようとしているのだと見られる。
そうであるなら、そのことを国民に説明する責務がある。

同時に、第2類相当指定感染症の区分を直ちに第5類感染症の区分に変更する必要がある。
しかし、そうなると別の問題が浮上する。
最大の問題はワクチン買い上げ7,000億円の正当性が完全に消失すること。
また、厚労省の感染症ムラは巨大予算を獲得し続ける根拠を失う。

感染症ムラの人々はコロナウイルス感染症を深刻、重大なものにし続けることによる巨大利益獲得を狙っている。
これらに関する菅義偉首相の判断を推察すると、1月解散の可能性は低いと考えられる。

菅首相は五輪開催を強行し、2021年秋に衆院選を実施する体内スケジュールを保持している可能性が高い。
菅自公が1月8日通常国会召集日程を提示した理由は、立憲民主党に対するブラフ=脅しにある。
自公が即時選挙のオプションをもっているとの認識を立憲民主党に与えることが目的なのだ。
野党が常在戦場で、いつ総選挙になっても受けて立つ姿勢であるなら、逆に自公はこのブラフを示さない。
早期解散総選挙カードをちらりと見せるだけで、野党はヘビに睨まれたカエルになってしまう。

臨時国会での野党の追及姿勢が急激に後退しているのはこのためだ。
この臨時国会で先決すべき最大争点は学術会議問題。
菅首相は完全な法令違反を犯している。
憲法違反の疑いも濃厚だ。
任命拒否を撤回させ、学術会議会員に6名を任命させる必要がある。

この任命プロセスに関与した杉田和博官房副長官の行動も完全な越権だ。
杉田官房副長官の国会招致、予算委員会での集中審議が必要不可欠だ。

野党はこの要求を示していたはずだ。
ところが、この話題が消滅している。
出てきたのは11月下旬に集中審議を行うという話だけ。
臨時国会の会期は12月5日まで。

11月下旬に集中審議をしたところで、優勝チームが決まった後の消化試合にしかならない。
杉田官房副長官の招致も拒否されたまま。
立憲民主党で対応しているのは安住淳国対委員長。
自民党は森山裕氏だ。
安住淳氏は森山裕国対委員長に絶対服従である。

この人事を決めたのは枝野幸男氏。
枝野氏自身に対決姿勢がない。
臨時国会では予防接種法改定、種苗法改定という超重大法改悪案が提出されている。

これらの法案を人質にとって学術問題での徹底追及を行うのが野党の責務。
その責務を完全放棄して自民党の言いなりになっている。
こんなことでは日本政治刷新など夢のまた夢だ。

立憲民主党が腰砕けだから、菅内閣は安倍内閣同様にやりたい放題になる。
菅内閣がGoToトラブル事業を全面推進しながら、コロナ感染症を第2類相当指定感染症の区分に置いたままにしているのは、巨大なワクチン利権予算を押し通すためだ。

ワクチンメーカーは賠償責任なしに超巨大あぶく銭を国家予算からせしめることになる。
その巨大あぶく銭が与党政治屋に還流することになるのは間違いないだろう。

菅義偉氏はコロナ感染症の実態が第5類感染症であることを強く認識してGoToトラブル事業を全面推進して、2021年五輪実施を強行する構えだ。
そのうえで、2021年秋に衆院総選挙に臨むと見られる。

立憲民主党は早期解散をちらつかせただけで無抵抗に変節する。
これでは戦いにならない。

ただし、コロナ感染症は日本では軽微だが、欧米では状況が異なる。
欧米からの人の流入を拡大させれば、日本でも深刻な事態が発生しないと言い切れない。
策士の菅義偉氏が策に溺れて大失策を演じる可能性はある。

野党は次期衆院総選挙に向けて、候補者一本化の協議を直ちに始める必要がある。
共産党を含む強固な共闘体制を構築して候補者一本化を実現すれば活路が見出される。

だが、現在の立憲民主党に「闘う意志」が欠落している。
現在の立憲民主党幹部は「永遠の野党」を目指しているように見える。
立憲民主党の有志が中心になって新党を創設すべき局面である。

「だら幹」が仕切る立憲民主党では未来が開けぬと多くの市民が感じている。
闘志ある新党を創設し、共産党、れいわ、旧社民との確固たる共闘を構築することが必要と考えられる。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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