【菅首相の盟友】吉川貴盛・元農水大臣ら自民党農水族への現金提供疑惑を野党が徹底追及
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「アキタフーズ」疑惑は典型的な収賄疑惑
「絵にかいたような収賄疑惑で非常にわかりやすい。農業政策を金で捻じ曲げていたのではないか」
こう話すのは、森友・加計・桜を見る会など数々の政権「腐敗」疑惑追及を続けてきた、森ゆうこ参院議員(立憲民主党)。12月7日に初会合が開かれた「養鶏業者裏献金疑惑 合同ヒアリング」(座長は奥野総一郎・衆院議員=立憲民主党)でも、農水官僚の説明に反論するなど厳しい質問を連発。ヒアリング後には、疑惑の核心部分である「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の国際基準について補足説明した。
「農水省は明らかに虚偽の説明をしています。ヒアリングでは、巣箱や止まり木の設置を義務化する国際基準が修正されたことについて、『世界の流れに逆行しているわけではなく、いろいろな立場があって、この程度の修正は妥当』という説明で印象操作をしていました。しかし実際は、『ケージで折り重なるように密集して飼う養鶏場は、アニマルウェルフェア(動物福祉)の観点から良くない』と専門家は問題視、農林水産委員会でも『日本は遅れている』と指摘されていました。鶏卵業者から『これ(義務化を伴う国際基準)ではやっていけない』という声を聞くことはありましたが、厳しい基準を満たさないと海外で購入対象外になってしまう。それで、ヒアリングで『輸出』の話をしたのです」(森氏)
世界水準に対する日本の養鶏業界の遅れが浮き彫りになったかたちだ。国際基準を独自修正して「密飼」を続けていては国際競争力が向上せず、海外並の「アニマルウェルフェア(動物福祉)」を満たす飼育方法に転換することこそ、輸出増につながるともいえる。かつて、日本の自動車産業が厳しい排ガス規制を受け入れて国際競争力をつけたのと同じ構図なのだ。
しかし実際には、国際基準は修正された。これに関連して、元農水大臣の吉川貴盛衆院議員(北海道2区)が、大臣室で鶏卵業界大手「アキタフーズ」元代表から計500万円を受け取っていた疑惑を複数社が報じている。政治家への現金提供の見返りに国際基準を甘く修正してもらったという今回の収賄疑惑(事件)は、「世界的潮流に逆行する遅れた飼育方法(蜜飼い)を続けるために、賄賂によって農業政策を歪めた」というギブ・アンド・テイクの構図がピタリと当てはまる。
しかし菅政権は、ここまで典型的な収賄事件にもかかわらず真相解明に後ろ向きだ。ヒアリングで農水官僚は、「捜査中」を理由に大臣と元代表の面談記録を開示しなかった。国際基準の修正についても「吉川大臣と相談しながらやっていたのか」と野党議員が問い質したが、「コメントは控える」と回答を拒否。国際基準の政策決定に吉川元大臣が関与したかどうか、政策決定過程を示す文書なども求めたが、農水官僚はことごとく拒み続けた。
また、国際基準の修正についても「政府の意見は、学術経験者らでつくる協議会の場で意見を聴いてまとめている」「妥当だった」と農水官僚は説明したが、アキタ前代表で長男の前社長も協議会に参加していたことを野党議員は問題視。業界団体の意向が反映されるような“御用協議会”である可能性も明らかになっている。
吉川元大臣は菅首相の盟友~菅チルドレン・北海道知事の誕生にも尽力
菅政権は安倍政権時代の森友・加計・桜を見る会の対応と同様、質問にまともに答えずに関係文書などを隠蔽、疑惑を闇に葬り去ろうとしていると見られても仕方がない。吉川元大臣は疑惑が発覚した直後、すぐに入院して姿をくらました。大臣室で現金を受け取った甘利明大臣と同じパターンで、説明責任を果たさないのは自民党の“伝統芸”になっているようだ。
吉川元大臣は菅首相と同期で、盟友のような存在でもある。9月の党総裁選では菅首相本人に出馬を要請、推薦人名簿にも名を連ねた。また2019年4月の北海道知事選では菅首相の意向を受けて、菅チルドレンとも呼ばれる鈴木直道知事の誕生に尽力した。道連会長として吉川氏は、菅首相と同じ法政大学出身の鈴木・前夕張市長を党推薦候補にしようとして動き、結局、地元議員や首長の大半が擁立を望んだ国交官僚は出馬断念に追い込まれた。こうした経緯からみても、菅首相が吉川元大臣をかばおうとすることはむしろ自然な流れだ。
しかし、収賄疑惑は広がりを見せ始めている。内閣官房参与の西川公也・元農水大臣や本川一善元農水次官がアキタ社所有の豪華クルーザーで接待されている事実も報道された。西川氏はすぐに内閣官房参与を辞めたが、他の自民党農水族の名前も取り沙汰されるようになった。
ヒアリングには法務官僚も出席した。職務に関して現金を受け取っていた場合は「単純収賄罪」に該当するが、依頼を受けた場合には「受託収賄罪」とさらに重い罪になることを確認するやりとりもあった。菅首相の盟友を直撃した収賄疑惑に対して野党は、15日にも第2回の合同ヒアリングを開催、来年1月召集の通常国会で徹底追及する構えだ。新型コロナ禍・第3波到来に対して「地蔵」状態で何も対策を打ち出せず、さらにGoToキャンペーン強行で支持率が急落した菅政権。菅首相の危機感不足に対して自民党内からも不満の声があがるようになっているいま、ガースーが“絵にかいたような”収賄疑惑を持ちこたえられるのか、1月国会に注目だ。
【ジャーナリスト/横田 一】
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