2024年11月22日( 金 )

安倍前首相の地元「山口4区」でれいわ新選組がガチンコ勝負 野党候補の一本化なるか

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明らかな公選法違反~逃げるアベ前首相

 「桜を見る会」前夜祭の補てん問題では安倍晋三・前首相(山口4区)の公設第一秘書が略式起訴されたものの、安倍前首相自身は不起訴処分となった。そんな状況下の2020年12月24日、安倍前首相が記者会見を開いた。しかし、会見に出席できたのは自民党を取材する記者クラブ「平河クラブ」所属の記者24人に限定され、フリーの参加は不可。そこで会見場となった衆院第一議員会館の第三会議室の前で待ち構えて、質疑応答を終えて出てきた安倍前首相に声をかけた。

 ――有権者への買収ではないですか。公選法違反は明らかではないですか。議員を辞めないのですか。

 安倍前首相 (無言のまま、守衛らに取り囲まれて前を通り過ぎる)

 ――(後を追いかけながら)秘書への(責任)押し付けではないですか。敵前逃亡をするのですか。フリーは排除ですか。

 安倍前首相 (振り返ることなく、立ち去る)

 「有権者への買収」と声掛け質問をしたのは、19年12月23日の本サイト記事「【政界インサイダー】総理大臣の犯罪は見ないふりの東京地検特捜部~巨悪を逃がして忖度捜査でアリバイづくり」で指摘した通り、「桜を見る会」と前夜祭が安倍前首相の地元支援者への利益供与(事前買収や事後買収)にしか見えなかったためだ。

地元支援者のための「桜を見る会」

 17年の下関市長選前後で、「桜を見る会」の参加者と支出が増加していたのは、以下の数字をみれば明らかだ。

 支出額(万円)   参加者数
〇2014年 3005.3   約13700
〇2015年 3841.7   約14700
〇2016年 4639.1   約16000
◎2017年 4725.0   約16500
●2018年 5229.0   約17500
●2019年 5518.7   約18200
(「【政界インサイダー】総理大臣の犯罪は見ないふりの東京地検特捜部~巨悪を逃がして忖度捜査でアリバイづくり」から再掲)

 第2次安倍政権(12年12月~20年8月)の間に「桜を見る会」への支出額と参加者数は増加。地元・下関の支援者は功労や功績がなくても「桜を見る会」に招待されて上京、会費を安く設定された前夜祭(補てん額総額は約700万円)に参加することもできた。これは選挙で汗をかく有権者への利益供与に該当し、公職選挙法違反であることは明らかなのだ。翌25日の議院運営委員会で宮本徹衆院議員(共産党)が小野寺五典・元防衛大臣が選挙区で線香を配って議員辞職した事例などをあげながら、「どうみても利益供与だ」「利益供与は政治家として許されない行為」と問い質したのはこのためだ。

 しかし安倍前首相は、「検察が厳しい捜査をした結果、問題ないと判断した」と不起訴処分になったことを盾にして公選法違反の疑いを否定。次のような屁理屈も口にした。

「我が党では自分の選挙のことはまったく考えないという状況にならなければ、総裁にはなれない。私も今まで9回選挙を戦ってきたが、毎回地元の皆さまが大変頑張っていただいた結果、常に圧倒的な勝利を与えていただいている。利益を供与して票を集めることはつゆも考えていない」

 支離滅裂とはこのことだ。毎年春に利益供与してきた結果、地元支援者がさらにフル稼働をして圧勝の一因になった可能性は十分にある。しかも支援者が頑張るのは総選挙だけではない。山口4区で約9割の有権者を占める下関市の市長選でも汗をかいていた。安倍前首相の地元支援者はライバル関係にある林芳正・元農水大臣の支援者と熾烈な選挙戦を繰り返してきたのだ。

江島潔市長(1995~2009年)= 安倍派
中尾昭友市長(09~17年)= 林派
前田市長(17年~現在)= 安倍派

 そして14年から19年にかけて「桜を見る会」の参加者と予算が増加していった最中の17年3月、8年ぶりに林派から市長ポストを奪還、元秘書で安倍派市議だった前田晋太郎市長が初当選した。山口4区をさらに盤石にするための天下分け目の決戦に勝利するために「桜を見る会」で地元支援者に利益供与、14年から16年(先の年度別推移の「〇」印)は事前買収で、17年から19年は事後買収(「◎」印と「●」印)に当たるようにも見える。前出の記事で「市長選で汗をかいた支援者へのご褒美が公的行事招待とみるのははたして勘繰りすぎ、だろうか」と疑問呈示をしたのはこのためだ。

 下関市長選を取材した記者なら「安倍前首相の公選法違反(有権者への買収)は明らか」と誰もが思うだろうが、安倍前首相は「圧勝」という選挙結果で「利益供与(買収)」の違法行為を消し去ることができると信じ込んでいるようなのだ。こんな明白な公選法違反容疑の安倍前首相を「厳しくない捜査」で不起訴処分にした検察は職務怠慢としか言いようがないが、そんな機能不全状態の検察の判断を拠り所に安倍前首相は議員辞職を否定し、費用補てんの責任を秘書に押し付けながら「次期総選挙に出馬して信を問いたい」とも宣言したのだ。

アベ政治に挑む、れいわの竹村氏

 これに対してネットはすぐに反応。20年12月27日のデイリースポーツは、「安倍氏 秘書がやった『説明はたし、信を問う』選挙審判! ネット『世界が注目山口4区』」と銘打って、次期総選挙で「ますます注目山口4区」「日本中の熱い視線が山口4区に注がれています」などの投稿が相次いでいることを紹介した。

 山口4区の野党統一候補になる可能性が高いのが、れいわ新選組予定候補の竹村克也氏だ。「下関市長選(3月14日投開票)」に出馬表明をした田辺よし子・前市議が選対本部長を務める予定で、田辺市によると山口県内の4小選挙区すべてで与野党激突の構図になりつつある。

「1区と3区が立憲民主党の大内一也氏と坂本史子氏、2区は共産党の松田一茂氏が野党統一候補となることがすでに決まり、残る山口4区も竹村氏を野党共闘で応援しようことでコンセンサスが得られています」(田辺氏)

 次期衆院選の山口4区と下関市長選が連動するのは確実で、3月の下関市長選で安倍派市長を落選させて田辺市長を誕生させた勢いを買って、安倍前首相を山口4区で追い落とすための総選挙に突入するという展開も想定される。そこで、全国屈指の注目選挙区になりそうな山口4区に出馬表明した竹村氏に話を聞いた。

 ――「桜を見る会」前夜祭補てん問題の再燃で、地元の雰囲気は変わったのでしょうか。

 竹村氏 下関市民への聞き取りもした『報道特集』(TBS系/20年12月12日放送)でも、安倍前首相への怒りの声が出ていました。私が地元で一軒一軒回っても、そういう声が出始めています。出馬表明をしたころはチラシを受け取ってくれない反応が多かったのですが、最近では「親の代から自民党を支持してきたが、もう当てにならない」と言って受け取ってくれる人が出てきました。風向きは確実に変わりつつあります。12月14日と15日にポスター貼りをしましたが、「貼ってもいいよ」と言ってくれる家が増えてきて、700枚以上も貼れました。

 ――地元の野党関係者の間では「山口4区でも候補者を一本化して、一対一の対決構図をつくろう」ということで合意していると聞きました。

 竹村氏 地元の野党関係者が集まる月1回の会合に参加させていただいており、そういう話にはなっていますが、まだ党本部が了解した正式決定ではありません。れいわ新選組としても『消費税5%減税』を野党共闘(選挙協力)の条件にしていますので、そこをクリアする必要はあります。

 ――山口4区から出馬しようと思ったきっかけは何だったのですか。

 竹村氏 プロレスラー時代に怪我をして妻の故郷である下関に移り住み、介護事業所の経営を始めたのですが、当時は政治にほとんど興味がなかった。ところが19年の秋、山本太郎代表の街宣動画を見て感銘を受けたのです。以前は自分さえ良ければいいと考えることもありましたが、「もっと皆さんのためにできることがあるのではないか」と思うようになり、政治の道を目指すことを決めたのです。

〈解説:竹村氏が動画を見て感銘を受けた山本代表の大分街宣については、19年10月30日の本サイト記事「裕福でない者同士で石を投げ合ってどうする!~大分の街宣で涙の訴え(前後)」で紹介していた。「あなたは偽善者だ」などと批判しながらマイクを叩きつけて立ち去った高齢男性に対して、山本代表が俳優から政治家に転身した人生遍歴を涙ながらに語ったときのことだ。プロレスラー時代に大けがをした後、下関へ移住して介護事業所を経営しているときに政治に目覚めた竹村氏は、政治に無関心だった俳優時代を経て政治家となった山本代表と重なり合う〉

 竹村氏 れいわ新選組が衆院選候補者の公募をしているのを知って応募、面接を受けることになりました。私は京都生まれですが、下関に10年くらい住んでいますので、「山口を良くしたいと思っています。ここから出たい」と言いました。そうしたら「相手は安倍さんですが、大丈夫ですか」と聞かれましたが、「お願いします」と答えました。

 取り組みたいことは少子高齢化、人口減少対策です。下関市の人口は減り続けていますが、それを何とか食い止めたい。市の中心街にある唐戸商店街も、市役所がすぐ目の前なのに空き店舗が増えています。跡を継ぐ人がいない。半年間の家賃補助をする助成制度がありますが、切れた途端に店を閉めるケースが珍しくありません。

 ――それなのに安倍派の前田市長は市役所前に新たに喫茶店を開設、田辺よし子市議(当時)が最後の12月市議会でも追及しました。

 竹村氏 意中の店が選ばれましたが、やりたい放題です。田辺さんは「ミニアベ私物化政治を変える」と言っていましたが、私も同じ思いです。シャッター通りになりつつある唐戸商店街にも喫茶店があるのに、そこのお客さんを奪うことになる。衰退に拍車をかける前田市長の感覚は明らかにずれています。

 でも唐戸商店街の関係者はほぼ自民党員で、安倍派市長に対して反対の声を挙げない。他所から移り住んだ私はしがらみがないので、「なぜ新たに喫茶店をつくる必要があるのか。商店街が寂れるのに拍車をかけてしまう」といった市政批判をすることができるのです。消費税減税も訴えています。働きやすい雇用の場をつくるために、最低賃金をあげることにも取り組みたい。需要があっても働き手が少ない福祉・介護分野の時給をあげたいとも思っています。

 安倍首相辞任と「桜を見る会」前夜祭問題の再燃で、支持が徐々に広がっている手応えを感じています。知人の家にポスターを貼らせてもらったのですが、その後、剥がされていました。話を聞くと、「自民党関係者から『剥がしてほしい』と頼まれて剥がしたけれども応援するからね」と言ってくれました。別の商店の奥さんからは「主人から『貼るのは止めてくれ』と言われた。応援したいけれども、村八分になるので剥がした」と教えてくれました。一強独裁のような街ですが、“隠れ支持者”は確実に増えています。

 「アベ私物化政治」からの脱却とともに地域振興などの人口減少対策にも取り組む竹村氏が、地元でも評判ガタ落ちの安倍前首相とどう戦っていくのか。「山口4区」に注目だ。

下関市長選に出馬表明した田辺よし子前市議(左)と、れいわ新選組予定候補の竹村克也氏

【ジャーナリスト/横田 一】

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