小売こぼれ話(13)接客サービスの変質(後)
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売場から従業員が消える
家具のニトリも同じだ。従業員は客とすれ違っても「いらっしゃいませ」を言わない。売り場を訪ねても「over there」で終わる。週末のその売り場は若い家族連れが主客だ。
一時期、モンスタークレーマーという文字がマスコミにたびたび登場した。クレームを受ける側から見たら、しつこく、過度な抗議ということになるが、問題はその原因だ。当然、店の接客や商品に関するものが主因だ。
クレームはお客の期待値と実際の商品、サービスに差がある場合に発生する。この場合、店側から見たそれがいかに正当でも、お客にとってそうではないなら当然、クレームになる。
個人企業を株式会社にし、発展させた多くの創業者たちは個人商店時代にお客と密に接するなかでお客の大切さを実感していた。だから新卒採用した若い社員の接客教育に力を注いだ。
いわゆる「お客様第一主義」だ。接客態度や商品知識も専門家を招いて研修した。そんな痒い所に手が届くレベルの教育とサービスを実現できた背景には、若くて安い労働力がある。
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地域中間流通(卸)と今後の戦略(前)社会環境の変化でそれが消えた今、高度成長期に消費の主人公を体験した高齢者消費者の不満は大きい。彼らは多くのサービスが自己供給になったことに気が付かない。今や家電の取扱説明書がなくても製品名を入れればネットでそれを見ることができる。調べに調べて、比較して店かネットで購入する。人と接する煩わしさを感じる世代が利用するのはネットだ。その中身はベテランの販売員並みに充実している。そんな消費者には売り場の接客サービスは不要だ。
一昔前、レジはお客が最後に通過する大切なサービス部門といわれた。笑顔の応対、丁寧な言葉遣い、計算や釣り銭の間違いなどをなくすため教育研修の機会が幾度となく繰り返し設けられたものだ。しかし、その場所には今や自動でそれをこなす機械が増え、レジ係が代金の授受をすることもなくなっている。お客もそれを当たり前のように利用している。
さらにいま、AIを駆使した買い物カートや売り場が生まれている。入店から買い物をして店を出るまで、一切の人的接触がない。そんな店が実際にアマゾンによってつくられている。やがてスーパーマーケットなどのリアル店舗は売り場から従業員が消えるのだろう。
小さな流れが大きなものになるとき、周囲の流れは一変する。そこには先駆け競争が生まれ、その中身やレベルが急激に進化する。
設備やシステムに大きな投資が必要なこのサービス転換を契機に、店舗の統廃合や業態を跨いだM&Aがいまにもまして頻発するはずだ。
人間臭さを消したサービスの質の転換が、企業の存続を決める時代を感傷的に見るのは高齢者の証なのかもしれない。次代の変化が本価格化するのにともなって多くの企業が持つ過去の栄光も消える。
(了)
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