2024年11月28日( 木 )

ストラテジーブレティン(295号)米中デカップリングは可能なのか(後)

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は2021年12月3日付の記事を紹介。

対中証券投資が急増

 ウォール街も対中投資を大きく増加させている。中国家計が保有する巨額の貯蓄の獲得競争が起きている。JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、ブラックロックといった金融機関の中国子会社100%比率の認可など、中国政府による外資開放が進展している。

 9月末時点で、海外投資家が保有する人民元建て株式と債券の総額は1兆ドルを突破したと報道されている。また中国の対外資産負債残高統計によると、過去1年間(2020年3Q~21年2Q)に中国への株式・投信による資金流入は1.2兆ドルと急伸した。米国の公的年金や大学財団の運用資金は、ベンチャーキャピタル経由で中国の未公開株にも振り向けている模様である。

 さらに、中国人学生の学費支払いに依存している大学、中国研究者に依存しているハイテク企業などからは、中国人の研究者・留学生ビザに関する規制緩和の要求が出され、すでに5万件のビザが発給されたと言われている。

議会の対中強硬姿勢と顕著なコントラスト

 これとは裏腹に、超党派による米中経済・安全保障調査委員会(USCC)が11月中旬に議会に提出した年次報告書では、経済安全保障に関する厳しい分析がなされ、32分野での強硬策が提案されている。とくに金融分野の規制強化が強調されている。「中国当局は、中国の資本市場を中国共産党の技術開発目標やその他の政策目標に資金を供給する手段として機能させようと、外国の資本やファンドマネジャーに働きかけている」と強調する。

 32の新たな提言は、中国企業にリンクした変動持分事業体(VIE)への投資を制限すること、新疆での強制労働を利用している企業や、米国商務省の企業リストや財務省の軍産複合企業に登録されている企業からの調達、投資の有無を開示するよう証券取引委員会に企業に要求する権限を与えること、米国の公開企業が事業活動のどこかに中国共産党委員会が存在するかどうかを報告することを義務付けることなどである。また、中国企業が所有するクラウドコンピューティングやデータサービス事業の利用を制限することも提案されている。これが実現すれば、米中間の資本の流れが遮断されるほどのインパクトをもつかもしれない。

 議会・政権と実業や金融との間で、見解の相違が大きくなっているようにみえる。

図表3:米国ハイテク製品の国別輸出輸入額(米商務省)
図表3:米国ハイテク製品の国別輸出輸入額(米商務省)
図表4:中国対外資産負債残高表
図表4:中国対外資産負債残高表

(了)

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