安倍元首相の地元下関で罷り通る“アベ友優遇政治”
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10月15日に県民葬が行われた山口県下関市で取材を続けていると、「安倍晋三元首相が亡くなってもアベ友優遇政治はすぐに消え去さらないだろう」との思いを強くする。
山際大志郎・経済再生担当大臣が辞任した25日、韓鶴子総裁参加の2018年7月の旧統一教会イベントで山際氏の隣にいた江島潔・元経産副大臣(参議院議員)が、旧統一教会関連団体との政策協定に署名していたことが判明した。同日のテレビ朝日「報道ステーション」が、「政策をめぐる合意文書(政策協定)に署名していた議員が新たに明らかになった」と切り出して、「江島氏が合意文書に署名したことを認めました」と紹介したのだ。
安倍派に属する江島氏の4期14年(1995~2009年)の市長時代、市の大型公共事業を安倍元首相がかつて勤務していた神戸製鋼所が連続して受注、官製談合疑惑が浮上して裁判にもなった。この“アベ友企業優遇”疑惑などが支持者離れを招き、5選出馬を断念した後、第2次安倍政権誕生の翌13年の参院山口選挙区補選に出馬、安倍氏の支援も受けて初当選、政界への返り咲きをはたすことに成功した。
不評で公職を離れた江島氏が再び政治の表舞台に立つことができたのはなぜか。地元ではこんな憶測が流れたという。「市長時代の神戸製鋼所の連続受注などを安倍氏が評価、その恩返しではないか。」
下関では、安倍氏と林芳正・外務大臣(山口3区選出の衆院議員)が父親の代からライバル関係にあり、下関市長選は長年にわたって両者の代理戦争のような様相を呈し、市長ポスト争奪戦を繰り返してきた。
歴代下関市長
江島潔(1995~2009年)安倍派
中尾友昭(09~17年)林派
前田晋太郎(17年~)安倍派安倍派が市長ポストを林派の中尾市長から8年ぶりに奪還したのが17年の下関市長選。安倍氏の秘書を経て市議となっていた前田市長が安倍夫妻の全面的支援を受けて初当選したが、江島氏と同様、旧統一教会との関係が発覚した。旧統一教会の会合に2回(19年12月と21年1月)出席したことを前田市長は、8月15日の定例会見で明らかにしたのだ。
こんな傾向が見て取れる。それは、「旧統一教会とズブズブの関係の安倍元首相から選挙で支援を受けた議員や首長には、同教会との関係を有する人が少なくない」というものだ。「教団票を差配してもらったので関連集会への参加を断れなかったのではないか」と疑いたくもなるのだ。
前田市長の推薦で19年6月に下関市立大学に採用、教授から学長(副理事長)となった韓昌完氏にも、旧統一教会との関係があるのではないかとの疑惑が浮上していた。
市内では報道関係者らに匿名の内部告発文が送られ、10月17日には下関市議会出資法人特別委員会で江原満寿男市議(共産)が質問をして、韓氏が事実無根と強く否定するという質疑応答が交わされたのだ。
──(江原市議)統一教会との関係があるのかないのか。会に入っていたのか。集会に参加していたのか。そういうことがあったのかどうか。
韓学長(副理事長) 韓国では統一教会は異端とされています。私は韓国でキリスト教徒として教会に通っていました。統一教会を、私は根から嫌っています。虚偽告訴罪にあたりますので、これはいま私も証拠を収集していまして刑事告訴をするつもりです。統一教会と私を結びつける斬新なアイデアをどこからもってきたのか私には分かりませんが、私のすべての経歴と生き方を全部調べていただければ分かると思うが、統一教会とは一番遠いところに存在する人間です。
「近日中に韓学長の刑事告発会見が開かれるかもしれない」と思わせるほどの全否定発言だったが、今後、内部告発者との法廷闘争へと発展する可能性は十分にあるだろう。
なお経済単科大学として評価が高かった下関市立大学がこのような形で注目されたのは今回が初めてではない。20年2月1日には「下関版モリカケ問題を考える! “桜を見る会疑惑”&“下関市立大学私物化”シンポジウム」と題する集会が市内で開かれ、元検事の郷原信郎弁護士らがパネラーを務めた。そして郷原氏は、20年1月20日の日経グローカルの記事でこう指摘していたのだ。
「政治的な意図から、違法な教授人事と、公立大学を安倍首相直系の政治勢力の支配下に収めようとする策謀が進められようとしていることは紛れもない事実である。」
たしかに、かなり強引な教授採用決定プロセスになっていた。経済学部だけの単科大学の市大に突然、分野違いの特別支援教育特別専攻科の新設と韓教授(当時)ら3名の採用が提案され、教授会の9割以上が反対したのに撤回されなかったからだ。
文部科学省大学振興課もこれを問題視して助言をしたが、大学側は定款の変更で対応した。そして与党が過半数を占める市議会で、定款変更の議案が賛成多数で可決された。「ルール違反」と言われたのでルール自体を変えてしまったかたちなのだ。
これに対して山口県労働委員会は今年1月、大学側の行為(規程)を「不当労働行為」と認定した。
こうした混乱が続くなかで下関市立大学は、過去3年間で教員の約三分の一が中途退職・転出した。4月15日の地元紙『長周新聞』が「ここ数年は『日本で一番崩壊している大学』と評されるようになっている」と指摘したのはこのためだ。
「こうした大学側の行為が多数の中途退職者が出ている原因と考えていないのか」という質問を韓学長と前田市長にしたが、いずれの回答も、「退職者の個別の理由については把握していない」だった。
安倍元首相が選挙で支援して旧統一教会との関係も明らかになったアベチルドレン(前田市長)による“お友達優遇政治”についても、検証していくことが不可欠なのだ。
【ジャーナリスト 横田 一】
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